高齢者でも受けられる?インプラント治療と年齢の関係とは
自分自身の歯で食事を楽しむことができる喜びは、誰にとっても尊いものであることでしょう。
しかし、虫歯や歯周病などによって歯が失われてしまった場合には、その喜びは抜けてしまった歯と共に減少してしまいます。
失われてしまった歯を補うための治療方法には入れ歯やブリッジなどがありますが、自然歯とも遜色ないほどの噛み心地などが評判を呼び、近年では義歯にインプラントが選ばれることも増えてまいりました。
インプラントの普及や評判の広がりにともない「インプラントに興味はあるけど、高齢者だからムリなのでは?」などという声も耳にする機会が増えてきましたが、実際のところインプラント治療において年齢による制限などはあるのでしょうか?
そこで今回は、インプラント治療と年齢との関係について、高齢者でも治療はできるのかという点に着目してMedical DOC編集部がお届けいたします。
この記事の監修ドクター:
中山 隆司 歯科医師 医療法人恵翔会 なかやま歯科 院長
目次 -INDEX-
インプラントの基礎知識
インプラント治療は高齢者でも受けられるのかなど、インプラントを受けることができる年齢などについて解説する前に、まずはインプラントについての基礎知識を確認しておきましょう。
インプラントとは?
失ってしまった歯を補う治療には入れ歯・ブリッジなどがありますが、インプラント体とよばれる長さ7〜13mm・直径3,5〜5mm程度の人工歯根を直接施術箇所の骨に埋入しその上にセラミックなどを被せることで歯の欠損箇所を補う治療を「歯科インプラント治療」と言います。
天然歯と比較しても遜色のない安定性や噛み心地を回復できるうえに、見た目にも元の歯と変わらないほどの審美性を持つことから近年話題を集める治療方法であり、日本においても徐々に普及が広がってきている治療方法なのです。
インプラントの最大の特徴となる高い生体親和性
歯歯を補う箇所に直接人工歯根となる「インプラント体」を埋め込むインプラント治療ですが、他の治療方法とは比較にならないほど他の残存している歯へ負担をかけず、自分の歯と同様に咀嚼をおこなうことができるという優れた特徴があります。
この特徴は、インプラント体の素材となる「チタン」という物質の特性が元となってもたらされています。
通常、人間の身体では免疫の働きによって外部から侵入した異物が排除されますが、このチタンにおいては免疫が異物と認識しないため生体と親和性があります。
さらに驚いたことに骨に埋め込まれたチタンには、骨の再生能力によってまるで骨折した骨と骨が強固に再癒着するかのごとく、埋入されたチタンに骨組織がしっかりと絡み合うように結合するという特徴があるのです。
このチタンの高い生体親和性は歯科インプラント治療において最大限に活用されており、施術箇所の骨に埋め込まれたネジ状のインプラント体の隅々にまで骨組織が結合することによって、自然歯に見劣りしないほどの優れた安定性をもたらすのです。
このチタンの高い生体親和性がもたらす優れた安定性こそが、インプラント治療の大きな特徴と言えるでしょう。
ただし、生体親和性が良いとは言え、生体にとっては異物ですので、きちんとした歯ブラシにより清潔に保つこと、過大な力がかからないよう咬み合わせを定期的にチェックすることが必要です。
インプラント治療に必要な外科処置について
このように優れた特徴を持つインプラントですが、人工歯根を骨に直接埋め込む治療方法であるため埋入のための外科手術が必要となります。
従来の手術のおおまかな流れとしては
①埋入箇所の歯肉の切開
②埋入箇所のあごの骨にインプラント体を埋め込むのに必要な深さの穴を掘る
③あごの骨に掘った穴をインプラント体のサイズに合わせて幅を広げる
④インプラント体を埋め込み歯肉を縫合し封じる
⑤インプラント体と骨との結合を待つ(2~4カ月程度)
⑥埋入箇所の歯肉を開き、インプラント体と義歯との接続部品を設置し、歯茎の形成をおこなう
⑦義歯をかぶせて施術完了
というような流れになります。
しかしこの方法では実際に患者さんが咬めるようになるまで、2回のオペ、日数も長くかかります。このような従来より行われてきた方法よりも、より患者さんへの負担を少なく行う術式が開発され臨床現場では導入されてきています。
それが、抜歯即時埋入、即時荷重、早期荷重インプラントです。
その流れとしては、
①埋入箇所は切開を極力しない
②(上記と同じ)術前のCT検査からその骨質にあわせて穴の幅を決定しドリリングする
③(上記と同じ)
④埋入されたインプラントの初期固定度、埋入時の締め付けトルクの評価
⑤基準値を満たしている場合は前もって作製しておいた、プロビジョナル冠(精度の高い仮歯)を即日に装着
⑥切開をしないので縫合もいらない(切開をしないので腫れや痛みが少ない)
⑦オペ後2ヶ月で型どり(機器を用いて、骨結合の上昇を確認して)
⑧オペ後(抜歯後)2ヶ月半でセラミック冠を装着して終了
インプラントの優れた特徴に興味はあるけれども年齢を理由に躊躇しているという方には、この外科的処置の身体的な負担やご自身のあごの骨とインプラント体の結合について懸念されている場合が多くみられるようです。
インプラント治療は高齢者でも”おおむね”受けることができます!
先に結論から述べると、「状況によっては受けられない場合もあるが、単に高齢者であることが理由となってインプラント治療が受けられないということは無い」という事になります。
過去の病歴や現在患っている病気、または服用している薬剤やアレルギーの問題などがある場合にはインプラント治療を受けることができないケースはありますが、これは高齢者にかかわらず全ての年齢の方に共通している条件であると言えるでしょう。
また、インプラント治療を受けるために必要な体力が無い場合には治療を見合わせるケースもあります。
インプラント治療を受けた高齢者の中にはなんと84歳の方もいることからも、単に高齢者であることがインプラント治療の妨げになるということは無いと断言できるでしょう。
インプラント治療が困難となるケース
先に述べたとおり、高齢者であること自体が理由となってインプラント治療を受けられないということはまずありませんが、加齢が要因となる疾病やその治療のための薬剤、加齢にともなう体力の衰えなどの加齢が間接的な要因となってインプラント治療が困難になる場合もあります。
インプラント治療が困難となる理由は、「埋入箇所のあごの骨の状態」「病気・アレルギー」「服用薬」「体力的問題」の4つに大きく分類することができます。
あごの骨の状態
インプラント体が埋め込まれる箇所のあごの骨の量や質が不足している場合にはインプラント治療を受けることができません。
しかし近年の技術進歩にともない、骨の量と質を補うことによってインプラントを可能とすることができるケースも増えてきています。
病気・アレルギー
・狭心症などの心疾患
・高血圧
・動脈硬化
・糖尿病
・免疫系疾患
・骨粗しょう症
などの病気や病歴を持つ方はインプラント治療が困難となる場合があります。
軽症の場合などにはインプラント治療が受けられることもあります。
服用している薬剤
服用している薬剤によってはインプラント治療が受けられないケースがあります。
事前に医師に申告せずに自己判断でインプラント治療を受けたり、薬の服用を自己中断してしまうと身体が危険な状態になってしまいます。
体力的問題
インプラント施術時には長時間口を開いている必要があるため、これを維持できない場合にはインプラント治療が受けられません。
高齢者におすすめのインプラントとは?
インプラントを埋め込んだら万事OK!ということはなく、埋入後の日々のセルフケアを怠ることによってインプラント周囲炎などを発症してしまう場合があります。
このように適切な管理が必要となるインプラントですが、高齢者の方の中にはインプラントに限らずご自身の歯のセルフケアが困難な方もいます。
取り外して清掃することができる入れ歯とは異なり、固定型の義歯であるインプラントは比較的清掃が困難であると考えられますが、この弱点を克服するインプラントオーバーデンチャー(I・O・D)という上部構造(義歯)を取り外して清掃することが可能なインプラントもあります。
このシステムを導入していない歯科医院もありますので、事前のカウンセリングで医師と相談してみると良いでしょう。
成長期の場合にはインプラントは受けられません
高齢者であること自体はインプラント治療の妨げとはなりませんが、逆にあごの骨などの形状が変化する成長期には一部のケースを除いてインプラント治療を受けることができません。
したがって、「高齢者のインプラント治療はおおむね可能だが成長期の若者はインプラント治療を受けることができないため、インプラント治療における年齢制限自体はある」と考えられるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は、高齢者のインプラント治療に主眼を置きつつ、インプラント治療における年齢による制限について解説いたしました。
高齢者であること自体がインプラント治療の妨げとなることはないが、病気や体力的問題によっては治療を受けられない場合があることがおわかりいただけたかと思います。
丈夫な歯は食事の喜びをより一層深めるだけではなく、全身の健康にとっても良い影響をもたらすことが、多くの医学的研究により明らかになってきています。
高齢であることを理由にインプラント治療をあきらめる必要はありません。インプラント治療を検討している方はまずは一度歯科医師と相談してみることをおすすめします。
超高齢社会の今、硬いものでも何でもしっかり咬めて、運動するときも奥歯で踏んばれる健康なお口を生涯維持することが、いかに大切か。咬めてない方は、できれば65才までにいち早く気づき、将来向かえる高齢期に備えてください。
しっかり咬むことで健康長寿へつなげて下さい。
監修ドクター:中山 隆司 歯科医師 医療法人恵翔会 なかやま歯科 院長
インプラントでおすすめの歯医者さん 関西編
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