インプラント治療後の違和感、なぜ出てくる? 理由と対処法を歯科医師が解説
インプラント治療をした当初は調子がよかったものの、だんだんとインプラントに違和感が出てくる。またはインプラント手術をした直後からなんとなく違和感があるという経験は、インプラント使用者であれば多くの方が経験しているようです。
それでは、なぜインプラントにある日突然違和感が出てくるのか、インプラントに違和感が出てきた場合はどのように対処すれば良いのかなど。インプラントの違和感にまつわる疑問について、Medical DOC編集部がお届けします。
船木 弘 (日比谷歯科 院長)
目次 -INDEX-
インプラント治療後に違和感が見られる理由
インプラントの治療を行い、せっかく入れ歯あるいは自分の歯に対する違和感から解消されると思ったものの、手術後も違和感があるのはなぜなのでしょうか。インプラント術後の違和感についてご紹介します。
インプラント治療直後は違和感を覚える人が多い
インプラント治療をするにあたり歯や歯茎やその周囲の骨を削ったり、いじったりします。そのため、他の部位の外科的な手術をするときと同じように違和感が出てしまうのは仕方のないことであり、違和感が全くないということはほとんどありません。
また、手術後も麻酔が切れれば多少ですが痛みが出ますし、削ったりいじったりしたことによって腫れたり出血をするということも稀にあります。そのため、インプラントの手術後に違和感があると感じる人は多いのですが、多くの方は一次的な違和感で、1~2週間で改善することが多いです。
しかし、違和感が止まらない、むしろ悪化しているという場合には一時的なものではなくインプラント事態にトラブルが起こっている可能性が高くなります。
インプラントに違和感を覚える理由1 インプラント周囲炎
インプラント治療後に違和感を覚える理由として、最も多いのがインプラント周囲炎によるものです。
インプラント周囲炎とは通常の歯周病に似ていて、歯茎や顎の骨といった歯周組織が破壊されていく病気です。インプラントの周辺に汚れやプラークが溜ることで歯茎が炎症を起こしていき、最終的には歯周ポケットができてインプラントが抜け落ちてしまいます。
初期では自覚症状がほとんどないものの、進行すると腫れたり出血したりと、インプラントがぐらつくなどの違和感を覚えて気づくことが多いです。
インプラントに違和感を覚える理由2 結合部のねじのゆるみ
インプラントは人工的な根と骨を結合して固定するため、インプラント体そのものがぐらつくという現象はあまり起きません。そのため、インプラント歯周炎でないにもかかわらずインプラントに違和感を覚える理由として考えられるのは、インプラントとかぶせ物の結合部分のねじが緩んでしまっているということです。
この部分が緩んでいるだけで全体的にグラグラとしている気がしたり、物を食べた時にインプラントの違和感を覚えたりします。
インプラントに違和感を覚える理由3 インプラントの摩耗
前述した理由もなくインプラントに違和感を覚えるという場合に考えられるのは、インプラントそのものが経年の使用により摩耗しているということです。
厚生労働省はインプラント治療後の10~15 年の累積生存率は上顎で約90%程度、下顎で94%程度としています。また、抜歯即時埋入や骨移植を伴った埋入では若干生存率が下がるものの、87~92%程度としています。つまり、高い確率で、インプラントは治療後の10~15年は問題なく使用できるということです。
しかし、前述した理由以外で例えば、歯ぎしりが激しい、歯を食いしばる癖がある、硬いものをよく噛むなどの癖がある人の場合はインプラントに負担がかかってしまい、インプラントに違和感を覚える原因にもなってしまうのです。
インプラントの違和感に対する対処法
それでは、インプラントに違和感を覚えたときにはどのように対処すれば良いのでしょうか。
様子を見てから定期受診
インプラントに違和感が生じるとすぐに病院に行ってみてもらわなければと思うかもしれません。しかし、明らかな出血や腫れ等が無く、日常生活に支障が無ければ経過を観察し、定期受診に合わせて受診するというのも対処法の1つです。
ただし最も確実なのは担当医を受診し確認を行ってもらい、必要があれば早めの対応をしてもらうことです。
接続部のねじのゆるみが原因なのであれば、ねじを締めればすぐに元通りになります。経過観察をしながら、いつからどのように違和感が出てきて、進行しているのかどうかなどを記録しておくと良いでしょう。
症状があればすぐに歯科を受診する
出血を起こしている、歯茎が腫れているといったインプラント周囲炎の明らかな症状が見られている場合はすぐに歯科を受診することをおすすめします。早期に治療をすることで、インプラントの違和感を改善するだけでなく、インプラントを長持ちさせることにもつながります。
基本的にインプラント治療をした病院でないとこれらの合併症に対処してもらえない場合が多いため、早めに連絡を取っておくと良いかもしれません。
インプラントに違和感がなく生活するための行動
できることならインプラントに違和感を覚えることなく、なるべく長くインプラントの歯を残しておきたいものです。ここではインプラントの違和感を覚えないために普段できることをご紹介します。
歯科にて定期的にメンテナンス
最も手軽に行えるのが定期的なメンテナンスです。専門医にインプラントの経過を診てもらい、必要であればケアをしてもらうことで違和感を覚えることなく長期的にインプラントを使用し続けることができます。
日常生活で忙しい場合もあるかもしれませんが、定期のメンテナンスは必ず受けてケアをしてもらうようにしましょう。
基本的には年に3〜4回程度の受診をし、年に1回レントゲン撮影をすることをおすすめします。
自分の癖を見直して改善する
歯科医で治療してもらったり定期的にメンテナンスをしたりしていても、歯ぎしりや食いしばりなどの自覚がある場合は注意が必要です。その癖を治さなければ、インプラントの違和感は継続してしまうかもしれません。
また、歯科医でのメンテナンスのみに頼らず、自分で日ごろからブラッシングなどのケアをしっかりと行わなければまた違和感が出てしまいます。
自分に歯ぎしりや食いしばりの癖があるのかどうか、歯磨きの方法に癖が無いのかを見直して改善していくことがインプラントの違和感を覚えないためにできることとなります。全て歯科医で指導をしてもらえるので、1度気軽に相談してみるのも良いかもしれません。
違和感を覚えず使い続けられることが当たり前
厚生労働省の提示しているデータにもあるように、本来であればインプラントは違和感を覚えることなく長期間使用できるものです。
治療直後の違和感はともかく、治療からしばらくたった後の違和感はインプラントにトラブルが起こっている証拠かもしれません。症状が無く理由が何となくわかっていれば良いのですが、明らかに違和感以外の症状が出現している場合には歯科医に相談してみると良いでしょう。
また、インプラント治療をしたらそれで終わりというわけではなく、違和感を覚えることなく長期的に使用するためにはメンテナンスが重要です。しっかりとメンテナンスを行い、違和感を覚えないように長期間インプラントと付き合っていきましょう。
万が一、引越しなどの理由で施術した歯科医院に通院するのが困難になった場合は引き継いでメンテナンスや治療を引き受けてくれる歯科医院を早目に探しておく方がいいでしょう。場合によっては他院のインプラントは診れない歯科医院も多くあります。
日本で流通しているインプラントだけでも何十社とあり、それぞれ使用している部品も違ってきます。
そのため他の歯科医院によって行われたインプラントのケアをする歯科医院やトラブルのリカバリーをしてくれる歯科医院を探すのは困難になる場合もあります。
自分に使用されているインプラントシステムを把握しておくことをお勧めします。
監修ドクター:船木 弘 歯科医師 日比谷歯科 院長
インプラント治療でおすすめの歯医者さん 関東編
日比谷歯科医院
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