歯科用顕微鏡を使った治療――料金が心配ではないですか?
「口」は、私たちの生活に直結し、身近に感じられる大切な器官のひとつ。身近なだけに、鏡をのぞき込みさえすればその内部の様子はある程度把握できる――そう思いがちです。
しかし、「口のプロ」である歯科医であっても、口腔内の状況を裸眼で詳細に把握することは不可能だということをご存知でしょうか。経験や勘による手探りの作業を助けるのが、マイクロスコープと呼ばれる歯科用顕微鏡です。
ここでは、歯科用顕微鏡のメリットや活用できる歯科分野、費用、治療時間などについて、Medical DOC編集部がお届けします。
この記事の監修ドクター:
河合 啓太 歯科医師(河合歯科医院 院長)
目次 -INDEX-
歯科用顕微鏡が可能にすること
歯科用顕微鏡の働きとは?
虫歯が神経にまで進行している場合、神経を取り除いて中を除菌し、蓋をしなければなりません。このようなケースで歯科医は、とても暗い中で細やかな作業を行わねばならなくなります。通常の虫歯治療では、歯科医が己の経験と勘によってこの難しい局面を乗り越えてきました。裏を返せば、経験と勘でしか治療ができない状況だったということです。
しかし、どれほど経験が豊富な歯科医が治療にあたったとしても、裸眼の数十倍の視野を確保できるとすれば、その結果も自ずと変わってくるはずです。
歯科用顕微鏡は、裸眼と比較すると、20倍程度の視野を確保できる医療器機です。歯科用顕微鏡を用いることで、通常では確認しづらい歯の内側、根管などまではっきり確認し、経験や勘に頼らない歯科治療を実現することができるようになりました。
顕微鏡が歯科領域で用いられるようになったのは、90年代に入ってから。アメリカでは1998年から根管治療の専門医に歯科用顕微鏡を用いた治療が義務化されています。日本では、歯科医院の約5パーセントに導入されていて、今後の活用が期待されています。
歯科用顕微鏡を活用した治療
従来の歯科治療に比べてより精密で正確な治療を行えるようになりました。では、歯科用顕微鏡を活用できる治療にはどのようなものがあるでしょう。
歯を削らねばならない虫歯治療や根管治療、被せ物や詰め物の補綴治療、歯周病治療、インプラント、口腔外科――虫歯の初期段階からインプラントに至るまで、ありとあらゆる段階で大きなメリットがあると言っても過言ではないでしょう。
特に、神経を取ったあとに感染源を取り除く根管治療においては、治療の成功率は飛躍的に向上することが知られています。また、歯周病治療においても、肉眼では見つけられない感染源を除去したり、歯の根元が露出した部位に歯肉を移植する際に活用されています。
歯科用顕微鏡を用いた治療のメリット・デメリット
メリット――より正確で精密な治療が可能
歯科顕微鏡を用いた治療のメリットは、何と言っても、患部を明るい状態で裸眼の数十倍にも拡大して見ることができる点にあります。正確で確実な診断をくだせるだけでなく、精密な治療が可能になります。これは、問題がある部位を、必要とされるだけ削れるようになるということ。取りこぼしがなくなるのと同時に、削りすぎを防ぐことにつながる――つまり、最低限の侵襲で済むということです。
歯は、一度削ってしまえば、二度ともとには戻りません。削れば削るほど、もろく、弱くなります。顕微鏡を用いた治療は、できるだけ削らない治療につながり、健康な歯を守ることにもつながるわけです。
また、歯科用顕微鏡のメリットは、治療の内容を患者が把握しやすくなる点にもあります。歯科医が診る映像をモニターに映し出すことができるため、口腔内の現状や治療方法、その結果などをつぶさに観察することができます。
デメリット――料金が高額?
歯科顕微鏡を用いた治療のデメリットは、より精密かつ高度な治療を反映できるため、自費診療につながるケースがあることです。このような場合の治療費はそれぞれの歯科医院が設定するため、目安となる金額の幅も広くなります。歯科医院を選ぶ第一基準が「料金」となっている場合は、事前に下調べをする必要があるでしょう。あるいは、事前に歯科医へ「自費治療を望まない」と伝えるかです。もちろん、歯科医院によっては、顕微鏡を用いた治療を保険診療あつかいしているところもあります。
また、1回の治療にかかる時間が通常の治療と比較して長くなりがちな点もデメリットと言えるかもしれません。自費診療の場合、1時間程度の診療時間が想定されます。そのため、ちょっとした空き時間に気軽に利用するわけにはいきません。
しかし、1回の治療に時間をかけ、徹底的に問題の部位を取り除くことで再治療の可能性は低くなります。最終的には、通院にかかる時間が短縮されることも考えられます。これはメリットに変えることができるデメリットと言っても過言ではないでしょう。
歯科用顕微鏡治療にかかる費用
先にも述べたように、歯科用顕微鏡を用いた治療は、自費診療あつかいになる場合があります。その料金も幅広く、一概には言えませんが、東京医科歯科大学では、歯科顕微鏡を用いた歯の根の手術で約8万円だと言われています。
前歯や小臼歯、大臼歯などの部位によっても費用に差があります。前歯は4万円から25万円、小臼歯は5万円から27万円、大臼歯の場合は6万円から28万円ともされていますので、不安がある場合は事前に問い合わせてみましょう。
さらに、顕微鏡治療の経験が豊富な歯科医なのか、自分の治療に顕微鏡を用いてくれるのかなど、疑問や不安を事前に解消し、料金なども含めて全てクリアにしてから治療を受けられるよう、慎重に歯科医院を選ばれることをおすすめします。
信頼のおける歯科医院選びが需要なポイント
歯科顕微鏡を用いた治療では、口腔内の問題点がはっきり明確になります。それだけに、これまで見逃されがちだったことにも目が行き届き、治療期間が長期間になったり、「治療ができない」という現状が浮き彫りになることも。
患者としてこういった現実を目の当たりにすると、さまざまな不安や疑問を抱くこともあるでしょう。それだけに、そうした不安や疑問を気軽に相談でき、しっかり説明してくれる歯科医、信頼のおける歯科医院選びが重要になります。
自費診療がほとんどで、料金は高額――顕微鏡を用いた治療は、そんなデメリットを補う効果が見込める、信頼性の高い治療です。だからこそ、事前の下調べには十分に時間をかけ、じっくりお付き合いのできる歯科医、歯科医院をお選びください。
歯科用顕微鏡やマイクロスコープは、幅広く応用できる医療機器です。患部を拡大して見られるわけですから、むし歯がわずかに残っていたり、歯や修復物などに細かな亀裂が入っていたり、そうした異常を見逃しにくくなります。また、精密な診断ができるということは、治療の成功率そのものを向上させることにつながります。事実、他院で改善できなかった患者さんの症状が良くなった例も散見されています。歯科用顕微鏡やマイクロスコープからの映像はモニターに映すことができるので、患者さんも納得しやすいのではないでしょうか。治療やその理由の「見える化」という意味で、大きな意義を持っていると考えます。
監修ドクター:河合 啓太 歯科医師 河合歯科医院 院長
顕微鏡治療でおすすめの歯医者さん 中部編
河合歯科医院
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