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「矯正治療中」の適切なお口のケア方法をご存じですか? ポイントを歯科医が解説

 公開日:2025/08/02

矯正治療中は、装置の影響でどうしても歯磨きが難しくなります。普段以上に丁寧なケアが求められる中で、「歯ブラシはどのタイプを選べばいい?」「特別なケア用品は必要?」といった疑問を持つ人も多いでしょう。そこで、矯正治療中の正しい口腔ケアや、より効果的におこなうためのポイントについて、赤坂ヴィーナスデンタルクリニックの岩城先生に解説してもらいました。

岩城 賢珠

監修歯科医師
岩城 賢珠(赤坂ヴィーナスデンタルクリニック)

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明海大学歯学部卒業。ニューヨーク大学、ハーバード大学、UCLAなど米国の名門大学で多数のCEコースを修了し、国際的な視野と最先端技術を習得。審美歯科・インプラント・成人矯正・小児矯正など幅広い分野で研鑽を積む。患者さんにとって「最善の治療・最善のおもてなし・最善の空間」を愛情を持って提供することを理念とし、最新の設備と技術、優れたスタッフとともに、理想の歯科医療を実践している。国際インプラント学会インプラント指導医、厚生労働省指定研修指導医。

装置の種類で異なる? 矯正治療中の口腔ケアの基本

装置の種類で異なる? 矯正治療中の口腔ケアの基本

編集部編集部

矯正装置を装着している間は、どのくらいの頻度で歯磨きをするのが理想的でしょうか?

岩城 賢珠先生岩城先生

ワイヤー矯正の場合は装置がかなり複雑で、歯と装置の間に汚れが残りやすいため、できれば飲食ごとに磨くのが理想的です。治療前からその習慣が身についている人はそのまま継続してもらい、そうでない人は治療をきっかけに意識を変えて、毎食後に磨くことを意識していきましょう。くわえて、寝ている間はお口の中で細菌が一番増えやすい時間帯なので、1日のなかでも就寝前の歯磨きはとくに丁寧に、完璧を目指して磨くことを心がけてください。

編集部編集部

矯正装置の種類によって、ケアの方法に違いはありますか?

岩城 賢珠先生岩城先生

ワイヤー矯正は歯の表面に1本ずつ装置がつき、それらがワイヤーでつながっているため、歯磨きの難易度が一気に上がります。もともと磨き残しの多い人はむし歯や歯周病のリスクも高くなるため、治療前に歯磨き指導を受けて、きちんと磨けるようになることが重要です。マウスピース型矯正装置に関しては、装置を外して普段通りに歯磨きやフロスができるのが最大の利点です。そうした点で、ワイヤー矯正の方がより丁寧なケアが求められます。

編集部編集部

子どもの矯正治療中の口腔ケアで、保護者が注意したいことや仕上げ磨きのアドバイスがあれば教えてください。

岩城 賢珠先生岩城先生

小学生ぐらいのお子さんは、モチベーションの維持が大変で、学校で自分で歯磨きをするのもハードルが高いと思います。とはいえ、朝から夜まで磨かない状態だと、歯の表面に汚れが長くとどまり、むし歯や歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。したがって、せめて帰宅したらすぐに歯磨きするように促してあげてください。また、お子さん一人で完璧に磨くのは難しいので、夜だけでも保護者が歯ブラシや補助清掃器具を使って、仕上げ磨きをおこなうようにしましょう。

磨き残しを減らす! 矯正治療中におすすめのケアアイテムと使い方

磨き残しを減らす! 矯正治療中におすすめのケアアイテムと使い方

編集部編集部

ブラケットやワイヤー周りを効果的に清掃するには、どのようなアイテムを使うとよいでしょうか?

岩城 賢珠先生岩城先生

毛先のすべてそろった平坦の歯ブラシよりも、毛並みにバラつきのあるタイプの方が細かい部分に毛先が届きやすくなります。矯正用の歯ブラシも市販されていますし、歯ブラシだけでは落としきれない汚れには、先の細いタフトブラシ歯間ブラシを併用するのがおすすめです。

編集部編集部

歯ブラシ以外に、口内を清潔に保つための補助的なアイテムはありますか?

岩城 賢珠先生岩城先生

歯磨きの仕上げに「マウスウオッシュ(うがい薬)」を併用するとさらに効果的です。細菌の繁殖を抑えたり、炎症を抑えたりする成分が含まれているものがあるため、お口の中を清潔に保つための補助として活用してもらうとよいと思います。とくに、就寝前の使用がおすすめです。

編集部編集部

電動歯ブラシは、矯正治療中に使用しても問題ないでしょうか?

岩城 賢珠先生岩城先生

電動歯ブラシの使用自体は可能ですが、いくつかの注意点があります。まず、ヘッドが大きすぎると装置のまわりや奥歯が磨きにくくなるため、小さめのヘッドを選ぶようにしましょう。また、パワーが強すぎる機種では、装置に不要な力が加わって、外れたり壊れたりするリスクがあります。基本的には手用の歯ブラシやタフトブラシで丁寧に磨けていれば十分なので、電動歯ブラシは夜の仕上げ用として取り入れるぐらいでもよいかもしれません。現在お使いの機種に不安がある場合は、必ず担当医の先生にご相談ください。

編集部編集部

マウスピース型矯正装置の清掃方法について教えてください。

岩城 賢珠先生岩城先生

マウスピースは通常1~2週間で新しいものに交換しますが、使用後は必ず水洗いをするようにしてください。市販の洗浄剤を寝る前に使っても問題ありませんが、基本的に就寝中にも装着するものなので、そこまで神経質になる必要はないと思います。唾液の影響でぬめりや汚れがつくこともありますが、気になる場合は水洗いにくわえて中性洗剤とスポンジで優しく洗うときれいになります。

編集部編集部

洗う際に注意すべき点はありますか?

岩城 賢珠先生岩城先生

マウスピースは熱に弱いため、熱湯での洗浄や消毒は避けてください。また、歯磨き剤には研磨剤が含まれていることが多く、使用するとマウスピースに細かい傷がついてしまいます。すると、かえって汚れがつきやすくなるため、歯磨き剤を使ってマウスピースを磨くのは控えてください。

口腔ケアが不足するとどうなる? 矯正治療中のリスクとその対策

口腔ケアが不足するとどうなる? 矯正治療中のリスクとその対策

編集部編集部

矯正治療中に口腔ケアを怠ると、どのようなリスクがあるのでしょうか?

岩城 賢珠先生岩城先生

矯正治療中は装置の影響(とくにワイヤー矯正)で、むし歯や歯周病のリスクが高まります。せっかく歯並びが整っても、治療後にむし歯が多く見つかったり、歯周病が進行していたりすると本末転倒です。理想的な結果を得るためにも、矯正治療中こそ日々のケアをしっかり意識してもらいたいと思います。

編集部編集部

矯正治療中にむし歯や歯周病になってしまった場合、治療の進捗や期間に影響はありますか?

岩城 賢珠先生岩城先生

大きなむし歯が見つかったり、痛みが出たりした場合は、そちらの治療を優先する必要があるため一時的に矯正装置を外すことがあります。その間は治療が中断されてしまうため、むし歯の程度によっては1~2カ月ほど期間が延びてしまうこともあります。また、被せ物が必要になると、当初の治療計画が変更になる可能性もあるため注意が必要です。

編集部編集部

歯周病の場合は、治療にどのような影響が出るのでしょうか?

岩城 賢珠先生岩城先生

歯周病は歯を支える骨が溶けていく病気で、矯正治療ではその骨の中を歯が動いていくため、骨が減ると歯の移動に制限が出たり、計画通りに動かなかったりすることがあります。また、歯周病の進行具合によっては、治療結果にも影響を及ぼす可能性があるため、こちらも要注意です。

編集部編集部

矯正治療中はセルフケアにくわえ、歯科医院でのクリーニングやメンテナンスも必要ですか?

岩城 賢珠先生岩城先生

どれだけ丁寧にセルフケアをしていても、治療中はどうしても磨き残しが出てしまいます。そのため、矯正の通院時にあわせてクリーニングも一緒に受けてもらうのが理想的です。できれば月に1回、矯正のチェックとクリーニングをセットで受けてもらうのが望ましいですが、難しい場合でも最低3カ月に1回はクリーニングを受けることをおすすめします。

編集部編集部

そのほかに、矯正治療中の口腔ケアで気をつけたい点や注意すべきことがあれば教えてください。

岩城 賢珠先生岩城先生

糖分を多く含むものや、炭酸飲料など酸性の飲み物は極力控えるようにしてください。また、装置が外れてしまうと、ワイヤーが唇や歯ぐきに当たって痛みが出ることがあります。そのため、装置に負担をかけるような硬いものや、粘着性のある食べ物はできるだけ控えてもらうと安心です。

編集部編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

岩城 賢珠先生岩城先生

矯正治療を始める人は、ご自身のお口の状態をよりよくしたいという前向きな気持ちからだと思います。その土台となるのが、今回お伝えした口腔ケアです。何かわからないことがあれば、遠慮せず担当の歯科医や歯科衛生士に相談してみてください。治療中もよいお口の環境を整えていけるよう一緒に頑張っていきましょう。

編集部まとめ

矯正治療中は装置の構造上、どうしても汚れがたまりやすく、むし歯や歯周病のリスクが高まります。だからこそ、毎日の丁寧なセルフケアと、歯科医院での定期的なクリーニングが欠かせません。矯正装置に応じた適切なケアを実践し、気になることは遠慮せず専門家に相談しながら、きれいな歯並びと健康なお口を目指しましょう。

医院情報

赤坂ヴィーナスデンタルクリニック

赤坂ヴィーナスデンタルクリニック
所在地 〒107-0052 東京都港区赤坂2-3-5 赤坂スターゲートプラザ2F
アクセス 東京メトロ銀座線・南北線「溜池山王」駅10番出口より徒歩1分 東京メトロ千代田線「赤坂」駅より徒歩7分
診療科目 歯科、小児歯科、歯科口腔外科、矯正歯科

この記事の監修歯科医師