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「インプラント」と「差し歯」の違いとは 選び方のポイントやメリット・デメリットを解説

 更新日:2024/01/12
「インプラント」と「差し歯」の違いとは 選び方のポイントやメリット・デメリットを解説

差し歯」「インプラント」という言葉はほとんどの人が知るところだと思いますが、その違いを説明できる人は少ないのではないでしょうか。その他、歯に対する「被せもの」という言葉もありますが、そのような専門家が使う言葉の意味も十分に理解できていない場合があるのではないでしょうか。そこで今回、差し歯とインプラントの違いや、それぞれの治療にまつわる豆知識について、歯科技工士の黒澤史織さんに詳しく話をお伺いしました。

黒澤 史織さん

著者
黒澤 史織(歯科技工士)

プロフィールをもっと見る
2019年東北大学歯学部附属歯科技工士学校を卒業。2019年東北大学病院に入職し、技工業務全般をおこなうほか、腓骨再建のシミュレーションなど医科歯科連携した業務にも携わっている。2022年東北大学大学院歯学研究科に入学し、スポーツマウスガードについて研究をしている。
石川 聡さん

共著者
石川 聡(つだぬまオリーブ歯科クリニック 院長)

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日本歯周病学会歯周病専門医。歯学博士。東京医科歯科大学歯周病学分野非常勤講師。専門は歯周治療、臨床医として個人に最適な治療を提案するため日々研鑽を積む。専門分野における学術活動も積極的に行う一方、YOBO-LABOなどの活動で様々な予防医療啓発活動にも力を入れている。

インプラント・差し歯・被せものって何?

インプラント・差し歯・被せものって何?

編集部編集部

はじめに「インプラント」「差し歯」「被せもの」とはどのようなものか教えてください。まずはインプラントからお願いします。

黒澤 史織さん黒澤さん

歯というものは、見える部分(歯冠/しかん)と見えない根元の部分(歯根/しこん)に分かれます。インプラントは歯冠と歯根の両方を失った部分に対しておこなわれる治療です。元々歯があった部分のあごの骨にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に支台部(アバットメント)と、セラミックなどの人工歯(上部構造)をかぶせる治療法をインプラントといいます。基本的にはこの3パーツで構成されています。独立した歯として機能させることができて、見た目も自然で自分の歯と同じような感覚で噛むことができます。

インプラント

編集部編集部

差し歯とはどのようなものでしょうか?

黒澤 史織さん黒澤さん

自分の歯の見えない根元の部分(歯根)に対して行う治療です。歯冠を失った時、根の治療をした後に人工の土台を入れて、その上に「被せもの」である人工歯(クラウン)をかぶせます。パーツは土台と被せ物の2つに分かれていますが、この2つが一体化したものが差し歯です。歯根に対して芯棒(土台)を差し込む形であったため“差し歯”という言葉が定着しました。また、土台ごと人工の歯が外れた時には一体化しているように見えます。

編集部編集部

被せものについてもお願いします。

黒澤 史織さん黒澤さん

歯の見える部分(歯冠)に対する治療です。むし歯によって削られた歯を補うために、歯冠部を覆う人工の歯が「被せもの」であり、専門的には「クラウン」と呼びます。機能や形、見た目を回復します。

クラウン

インプラントと差し歯のメリット・デメリット

インプラントと差し歯のメリット・デメリット

編集部編集部

インプラントのメリットとデメリットについて教えてください。

黒澤 史織さん黒澤さん

1番のメリットは、周りの健康な歯を削る必要がないことです。抜歯後の歯が無い部分のあごの骨に直接埋め込むので、自分の歯と同じような感覚で噛んだり話したりできますし、見た目も自然でキレイです。デメリットは、費用が高いことですね。保険が適用されないので全額自己負担の自費診療となり、1本あたり30~50万円の歯科医院が多いですね。また、インプラントを埋め込む外科手術が必要で、侵襲度が高い治療になります。特に歯周病や糖尿病、喫煙はインプラント治療が失敗するリスク因子になります。インプラント治療を希望される方は歯科医師によく相談してください。

編集部編集部

差し歯のメリットとデメリットについて教えてください。

黒澤 史織さん黒澤さん

メリットは、基本的にどの歯科医院でも治療できることが多く、治療期間はインプラントと比較して早い点ですね。デメリットは、保険適用の材料を使った場合、思い通りの見た目や材料の適切な強度が得られないこともあります。

編集部編集部

差し歯とインプラントはどちらのほうが良いのでしょうか?

黒澤 史織さん黒澤さん

インプラントは歯が無くなったところにおこなう治療で、差し歯は歯の見えない部分(歯根)に対しておこなう治療です。歯を抜かない場合は、自動的に差し歯が選択されますので、インプラントにする必要はありません。歯の状況が思わしくない場合には歯を抜いて、インプラントにするという選択が出てきます。どの治療法が適しているか歯科医師に相談することをお勧めします。

インプラントと差し歯による治療の豆知識

インプラントと差し歯による治療の豆知識

編集部編集部

インプラントは自費診療、差し歯治療は保険診療となるのでしょうか?

黒澤 史織さん黒澤さん

基本的にインプラントは自費治療となり、保険適用はされません。差し歯は保険治療と自費治療があり、歯科医師に相談しながら方針を決めることをお勧めします。

編集部編集部

インプラントが取れてしまった場合の対処方法について教えてください。

黒澤 史織さん黒澤さん

まずは取れた部品を無くさないように大事に保管し、なるべく早くインプラント治療をおこなった歯科医院で治療を受けてください。治療を受けるまでの間はインプラントが取れた部分に負担をかけないようにしてください。負担をかけると炎症や化膿の原因になり、さらなるトラブルを引き起こす可能性があります。

編集部編集部

差し歯が折れて、取れてしまった場合どのように対処すると良いでしょうか?

黒澤 史織さん黒澤さん

インプラントが取れた時とほとんど同じです。歯科医院に行くまでの間、取れた差し歯もなくさないように大事に保管してください。また、支えていた歯の根の部分が虫歯になっていたり、部分的に欠けたり割れたりしている場合もあります。差し歯が取れて気になると思いますが自分で元に戻さないでください。また、差し歯が外れて誤って飲み込んだり、歯ぐきに刺さったりする危険があります。差し歯が取れた部分は空洞になっていているので、食事をする時は食べ物が詰まらないように気を付けましょう。

編集部まとめ

インプラント・差し歯・被せものそれぞれについて、歯の構造から治療のメリット・デメリットに至るまで詳しく教えていただきました。そういえば知らなかった、という内容も多かったのではないでしょうか。糖尿病や喫煙が歯の治療において失敗するリスク因子になる場合があるようです。費用面でも治療法を考える必要があるとのことでした。読者の皆様が歯科治療を選択する際の一助としていただけましたら幸いです。

この記事の監修歯科医師