「インプラント」と「差し歯」の違いとは 選び方のポイントやメリット・デメリットを解説
「差し歯」「インプラント」という言葉はほとんどの人が知るところだと思いますが、その違いを説明できる人は少ないのではないでしょうか。その他、歯に対する「被せもの」という言葉もありますが、そのような専門家が使う言葉の意味も十分に理解できていない場合があるのではないでしょうか。そこで今回、差し歯とインプラントの違いや、それぞれの治療にまつわる豆知識について、歯科技工士の黒澤史織さんに詳しく話をお伺いしました。
著者:
黒澤 史織(歯科技工士)
共著者:
石川 聡(つだぬまオリーブ歯科クリニック 院長)
インプラント・差し歯・被せものって何?
編集部
はじめに「インプラント」「差し歯」「被せもの」とはどのようなものか教えてください。まずはインプラントからお願いします。
黒澤さん
編集部
差し歯とはどのようなものでしょうか?
黒澤さん
自分の歯の見えない根元の部分(歯根)に対して行う治療です。歯冠を失った時、根の治療をした後に人工の土台を入れて、その上に「被せもの」である人工歯(クラウン)をかぶせます。パーツは土台と被せ物の2つに分かれていますが、この2つが一体化したものが差し歯です。歯根に対して芯棒(土台)を差し込む形であったため“差し歯”という言葉が定着しました。また、土台ごと人工の歯が外れた時には一体化しているように見えます。
編集部
被せものについてもお願いします。
黒澤さん
インプラントと差し歯のメリット・デメリット
編集部
インプラントのメリットとデメリットについて教えてください。
黒澤さん
1番のメリットは、周りの健康な歯を削る必要がないことです。抜歯後の歯が無い部分のあごの骨に直接埋め込むので、自分の歯と同じような感覚で噛んだり話したりできますし、見た目も自然でキレイです。デメリットは、費用が高いことですね。保険が適用されないので全額自己負担の自費診療となり、1本あたり30~50万円の歯科医院が多いですね。また、インプラントを埋め込む外科手術が必要で、侵襲度が高い治療になります。特に歯周病や糖尿病、喫煙はインプラント治療が失敗するリスク因子になります。インプラント治療を希望される方は歯科医師によく相談してください。
編集部
差し歯のメリットとデメリットについて教えてください。
黒澤さん
メリットは、基本的にどの歯科医院でも治療できることが多く、治療期間はインプラントと比較して早い点ですね。デメリットは、保険適用の材料を使った場合、思い通りの見た目や材料の適切な強度が得られないこともあります。
編集部
差し歯とインプラントはどちらのほうが良いのでしょうか?
黒澤さん
インプラントは歯が無くなったところにおこなう治療で、差し歯は歯の見えない部分(歯根)に対しておこなう治療です。歯を抜かない場合は、自動的に差し歯が選択されますので、インプラントにする必要はありません。歯の状況が思わしくない場合には歯を抜いて、インプラントにするという選択が出てきます。どの治療法が適しているか歯科医師に相談することをお勧めします。
インプラントと差し歯による治療の豆知識
編集部
インプラントは自費診療、差し歯治療は保険診療となるのでしょうか?
黒澤さん
基本的にインプラントは自費治療となり、保険適用はされません。差し歯は保険治療と自費治療があり、歯科医師に相談しながら方針を決めることをお勧めします。
編集部
インプラントが取れてしまった場合の対処方法について教えてください。
黒澤さん
まずは取れた部品を無くさないように大事に保管し、なるべく早くインプラント治療をおこなった歯科医院で治療を受けてください。治療を受けるまでの間はインプラントが取れた部分に負担をかけないようにしてください。負担をかけると炎症や化膿の原因になり、さらなるトラブルを引き起こす可能性があります。
編集部
差し歯が折れて、取れてしまった場合どのように対処すると良いでしょうか?
黒澤さん
インプラントが取れた時とほとんど同じです。歯科医院に行くまでの間、取れた差し歯もなくさないように大事に保管してください。また、支えていた歯の根の部分が虫歯になっていたり、部分的に欠けたり割れたりしている場合もあります。差し歯が取れて気になると思いますが自分で元に戻さないでください。また、差し歯が外れて誤って飲み込んだり、歯ぐきに刺さったりする危険があります。差し歯が取れた部分は空洞になっていているので、食事をする時は食べ物が詰まらないように気を付けましょう。
編集部まとめ
インプラント・差し歯・被せものそれぞれについて、歯の構造から治療のメリット・デメリットに至るまで詳しく教えていただきました。そういえば知らなかった、という内容も多かったのではないでしょうか。糖尿病や喫煙が歯の治療において失敗するリスク因子になる場合があるようです。費用面でも治療法を考える必要があるとのことでした。読者の皆様が歯科治療を選択する際の一助としていただけましたら幸いです。