30~40代でも安心の入れ歯! 目立たず周囲に気付かれにくいものがあるって本当?
入れ歯には、見た目の問題が生じます。加えて、臭いや“空気が抜けるような発音”を気にする人もいるでしょう。その一方で、インプラントのような大がかりな手術を必要とせず、いつでも元の状態に戻せる治療方法でもあります。そんな「一長一短」を打破する、“いいとこ取り”の入れ歯は存在しないのでしょうか。「三戸岡歯科医院」の三戸岡先生に伺ってみました。
監修歯科医師:
三戸岡 直樹(三戸岡歯科医院 院長)
大阪歯科大学卒業。1985年、兵庫県神戸市に「三戸岡歯科医院」開院。以来、30年以上に渡り、入れ歯の研鑽を積み、そのモットーは「10年経っても何も問題ない入れ歯」。日本顎咬合学会認定医。日本臨床歯周病学会、日本歯内療法学会、日本歯周外科学会、日本歯科審美学会、日本アンチエイジング歯科学会ほかの各会員。
金属を使っていないノンクラスプデンチャーは気付かれにくい
編集部
入れ歯を検討しているのですが、金属の留め具が目立ちそうで悩んでいます。
三戸岡先生
入れ歯を天然歯に固定する「クラスプ」という留め具のことですよね。保険診療の入れ歯を前提とすると、残念ながら使わざるをえません。しかし、自由診療の入れ歯を選択肢に入れてもいいのなら、「ノンクラスプ」の入れ歯もあります。
編集部
つまり、金属の留め具を使っていないということですか?
三戸岡先生
はい、使いません。入れ歯の土台全体が「柔らかな素材」でできていて、周辺の歯ぐきに“ぴったりフィット”することで固定される仕組みの入れ歯を、「ノンクラスプデンチャー」といいます。クラスプという一部分ではなく、土台全体で力を受けられますから、「ほかの歯や歯ぐきに優しい入れ歯」ともいえるでしょう。対するクラスプは、引っかけてある歯を集中して揺らし続けますので、見た目以外の悪影響も出るはずです。
編集部
留め金がないのに、上の入れ歯が外れたりしないのですか?
三戸岡先生
ノンクラスプデンチャーは素材が軽く、ぴったりと吸着するので簡単には落ちません。むしろ、下の入れ歯の方が舌の力を受けやすく、技巧的に難しい印象ですね。他方、保険でつくる上の入れ歯は、留め金に頼ってしがみついているようなイメージです。外れかけていたら、留め金を締めるしかありません。
編集部
ノンクラスプの柔らかな土台は、いずれ硬くなると思うのですが?
三戸岡先生
患者さんのお手入れ方法に左右されますね。とくに、消毒しようとして熱湯に入れた場合の硬化や変形が顕著です。お手入れは、水かぬるま湯に限ります。入れ歯を検討中であれば、使い方だけでなくセルフケアの方法も歯科医師から教わりましょう。
日頃の手入れや入れ歯への慣れで、臭いや発音も自然に
編集部
あと、入れ歯というと、「臭う」イメージがあります。
三戸岡先生
入れ歯のお手入れをきちんとおこなっていれば、臭いの問題は気にならないと思います。例えば、女子会などで食事した場合でも、1食分くらいならお手入れをパスしても構わないでしょう。「あの人、食後になるといつもいなくなるよね」といった詮索も回避できます。
編集部
何もしなければ、入れ歯だけでなく口の中にも臭いの元となるばい菌が広がるのでは?
三戸岡先生
そもそも、「入れ歯を使っているから口臭がする」とは言いきれません。口臭はお口に限らず、食べ物や胃腸の状態にも関係しているからです。口臭の原因はどこかにあるはずなので、気になるようでしたら、歯科医師と相談して個別に解決していきましょう。むしろ、口臭対策として入れ歯をゴシゴシこすりすぎると、その傷によってばい菌が付着しやすくなります。間違った知識が悪影響を招く典型例といえるでしょう。
編集部
他方で発音はどうでしょうか? 空気の抜けたような声質をよく聞きます。
三戸岡先生
たしかに、最初は「サ行」が発音しにくいかもしれません。しかし、慣れによって舌や唇の動きがカバーしてくれるようになります。なお、保険の入れ歯は床が比較的厚いので、より違和感を伴うでしょう。
編集部
入れ歯の色が天然歯と違ってくるようなことはありますか?
三戸岡先生
これも日頃のお手入れが関係してきます。やはり、研磨剤の入った歯磨き粉でこすると、小さな傷がついて変色を起こしやすくなります。その一方で、天然の歯も次第に黄ばんできます。もし、入れ歯を作り替えるようなことがあったら、その都度、そのときの色に調整していきましょう。
入れ歯とインプラントとの比較
編集部
入れ歯だと、食べられるものの制限がかかると聞きます。
三戸岡先生
ノンクラスプデンチャーの場合、噛む力は天然歯に比べて6割ほどとされています。保険の入れ歯なら3割ほどです。ただし、入れ歯を入れた部分に限定される話なので、お口全体で考えたら、そんなに制限は受けないはずです。それに、食べ物の変化から入れ歯を疑われること自体、少ないことなのではないでしょうか。
編集部
それでも「気付かれにくさ」という点では、インプラントが勝る印象です。
三戸岡先生
そうかもしれませんが、インプラントは一度治療したら後戻りできません。まずは欠損を入れ歯で補ってみて、満足いかなければインプラントに変えてみてもいいでしょう。実際、当院でも、そのようにしている患者さんが少なくありません。
編集部
結論としては、ノンクラスプにしてもインプラントにしても、「自費」ということになりますよね?
三戸岡先生
そうなります。保険は審美面、つまり見た目の問題までカバーしていませんからね。あくまで不具合や病気の人に対して、費用負担を認めているにすぎません。治療選択肢のバリエーションや“持ちのよさ”なども考慮して、自費か保険かを判断していきましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
三戸岡先生
30代や40代の女性は、若い女性よりもかえって審美に敏感な印象です。補綴(ほてつ)治療には、入れ歯に限らず多彩な選択肢がありますから、あまり焦らずにじっくり決めていきましょう。わからないことがあったら、遠慮なく歯科医師にご相談ください。
編集部まとめ
「保険の入れ歯に伴う留め金問題」に関しては、ノンクラスプデンチャーで解決できます。一方、見た目以外の臭いや発音となると、自分自身の慣れや工夫が必要になってきそうです。必ずしも、「入れ歯だから困る」という事態にはならないのでしょう。ここは、入れ歯に対する先入観を捨て去り、一度、ニュートラルに立ち返ってみることをおすすめします。
医院情報
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診療科目 | 歯科 |