歯の欠損部を補う場合、インプラントとブリッジのどちらがいいの?
欠損補綴(ほてつ)治療の選択肢から入れ歯を除くと、残るは、インプラントとブリッジの二択になりそうです。つまり、「自費 VS 保険」の比較とも言い換えられそうですが、費用以外にも考慮すべき点があるのでしょうか。検討材料の棚卸しを、「戸田ファミリー歯科」の筒井先生にお願いしました。
監修歯科医師:
筒井 秀多(戸田ファミリー歯科 院長)
日本歯科大学卒業。小児歯科医院や一般歯科医院の勤務を経た2018年、埼玉県戸田市に「戸田ファミリー歯科」開院。患者側が主導権をもつ「家族で楽しく通えるクリニック」を心がけている。
「いい」の基準は自分の中にある
編集部
歯の欠損部を治療するとしたら、インプラントとブリッジのどちらにすべきでしょうか?
筒井先生
「どちらがどれくらい長持ちするか」という点が、1つの判断基準となるでしょう。インプラントの5年生存率は9割以上です。一方、ブリッジの場合、前後の歯に神経が残っているかどうかで生存率は大きく変化します。前後の歯に神経が残っている場合の生存率は9割近いですが、神経がない歯をブリッジの土台にする場合は大幅に生存率が下がります。費用も含め「保険診療の範囲内で」ということであれば、ブリッジの一択です。他方で、「これ以上、歯を1本も失いたくない」とするなら、インプラントが有力な選択肢になります。
編集部
ほかにも、比較軸として考えられる項目があれば教えてください。
筒井先生
「オペに対する恐怖心」や「充てられる治療期間」、「来院可能な回数」、「患部に隣接した歯への影響」、「予算」などが挙げられます。ブリッジの場合、器具で固定するために隣接した天然歯の一部を削るので、むし歯リスクが高まります。また、もともと3本の歯にかかっていた力を2本の歯で受け止めるのですから、歯の寿命が短くなりやすいです。
編集部
建物に例えるとしたら、柱を1本失ったようなものですからね?
筒井先生
インプラントという独立した柱を新しく立てるのか、それとも、ブリッジで残っている柱に荷重を逃がすのかのどちらかです。残っている柱に余力がないと、次々と倒れていってしまいます。このような歯列崩壊を防ぐとしたら、インプラントが対抗策になります。
編集部
なんだか、ブリッジが「悪手」に思えてきました。
筒井先生
そのようなことはありません。ほとんどのケースで保険適用が可能という点は、大きなメリットになるでしょう。また、前後の歯に神経が残っている場合はインプラントを入れた場合と持ちはさほど変わらないので、有力な候補になると思います。したがって、最終的には患者さんのお口の中の状態や事情によって治療方法を選択することになるでしょう。
医師や友人の意見を、どこまで参考にするか
編集部
説明を聞くにしても、医師の考えが入らないかどうか不安です。
筒井先生
たしかに、歯科医師が自分の得意とする治療方法に加重して説明するというのは、起こり得ることでしょう。それだけに、複数の歯科医院から説明を受けて、比較・検討してみてください。その際、途中での治療放棄につながらないよう、「通いやすさ」も考慮に入れるのがコツでしょうか。
編集部
自信があるからこその「医師の熱意」だった場合は?
筒井先生
患者さんが「信頼できそうだ」と思えば、それが全てではないでしょうか。インプラントとブリッジに対する印象がフィフティ・フィフティなのであれば、医師の自信に頼るのも方法の一つだと思います。
編集部
自分の考えと全く正反対の意見が出たら、その時点で迷いそうです。
筒井先生
たしかに難しいですよね。しかし、“正反対”ということは、ご自身の中で結論が出ている証拠だと思われます。やはり、自分の出した結論に従った方が、後悔しないのではないでしょうか。
編集部
口コミや友人の意見を参考にするのはどうでしょうか?
筒井先生
よくあるケースです。とくに、自分の出した結論を“後押しするような”口コミや意見が、選ばれやすいですよね。繰り返しになるかもしれませんが、ご自身の中で結論が出ているのであれば、それで構わないと思います。
イザというときに迷わないためにも
編集部
参考までに、インプラントとブリッジ以外の方法も教えてください。
筒井先生
わかりました。入れ歯については、みなさんもよくご存じでしょう。ほか、扱っている医院が限られるものの、「親知らずを抜歯して差し歯にする方法」や、「抜歯せず、残っている歯を根っこごと引き上げて、被せ物などで処置する方法」などがあります。ただし、適応できるケースかどうかは、その人の口腔内の状況によります。
編集部
先ほど、「来院回数」の話が出ていましたね?
筒井先生
はい。いずれの治療選択肢を選ぶにせよ、「最後までやりぬく」ことが大切です。仮に、通院に数時間もかかるような医院を選んだとして、本当に通えるでしょうか。最も好ましいのは、やはり、通いやすい立地にある「かかりつけの歯科医院」を持つことだと思います。
編集部
結局のところ、治療方法のメリットやデメリットが先にアリキではないと?
筒井先生
散見される「メリット・デメリット論」は、複数ある検討材料のうちの一つにすぎません。まずは、「治療になにを求めるのか」ですね。その次に、「自分の要望を満たすのは、どの治療方法なのか」。この順番で結論を導き出してはいかがでしょうか。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
筒井先生
ぜひ、日頃の歯科メインテナンスなどで、かかりつけの歯科医院を持っておきましょう。そうすれば、抜歯に至ることはなかったはずです。すでに抜歯跡のある人でも、気軽に相談できる専門家を置いておいて損はありません。歯とは一生つきあっていくのですから、身近で信頼できる先生を見つけておきましょう。
編集部まとめ
治療方法の選択にあたり、医学的な知見だけでなく、「自分の事情」を優先しても構わないということでした。ブリッジにせよインプラントにせよ、それぞれ確立した治療方法であることは確かです。できればカウンセリングの際、過去の治療例などから、「どのような事情を汲んだ結果、こうなったのか」を説明してもらってはいかがでしょうか。治療された歯だけではなく、その裏の理由も知っておきましょう。
医院情報
所在地 | 〒335-0011 埼玉県戸田市下戸田1丁目18-2 パティオ戸田公園 2階 |
アクセス | JR埼京線「戸田公園駅」 徒歩12分 |
診療科目 | 歯科 |