歯科の定期検診に行くべき理由は? どれくらいの頻度で通えばいいの?
治して終わりなのではなく、そこからが始まりとされる歯科治療。予防についての考え方は理解できるものの、なかなか“目に見える効果”が得られません。具体的な出口が見えてこそ、そこに向けて歩き出せるもの。そこで、「スマイル歯科医院」の龍造寺先生に、改めて、「歯科の定期検診とはなにか」をうかがいました。
監修歯科医師:
龍造寺 隆光(スマイル歯科医院 院長)
神奈川県藤沢市に「スマイル歯科医院」を開院。医院に多くの漫画やアニメのグッズを院内に設置し、子どもでも通いやすい環境づくりに注力している。
健康の維持に限らず、最低限の治療介入で済ませられる
編集部
定期的な歯科検診の重要性を各所で聞くようになってきましたが、検診で来院される人は増えましたか?
龍造寺先生
当院でも定期検診を目的として通う方が、前年比で2割くらい増えています。原則として治療の必要がない方ですから、メインテナンスにかかる時間は15分程度。保険も使えますし、1回1500円前後の自己負担額で、お口の健康を守り続けられるわけです。仮に疾患があったとしても、かなり早い段階で発見できる点が検診のメリットですね。
編集部
そうは言っても、「具体的なメリット」が見えないと行動に移せない気がします。
龍造寺先生
でも、むし歯や歯周病にかかったら嫌ですよね。話題の新型コロナウイルスにしたって、「発症を防ごう」という機運が高まっています。病気にならないこと自体がメリットのはずなのですが、いまひとつ伝わりきっていないようです。加えて、口腔ケアが全身疾患と関わりをもつことも証明されてきました。健康管理の窓口を歯科医院が担う一面もあります。
編集部
では逆に、歯科検診を受けず歯を失った場合、身体にどういった悪影響を及ぼしますか?
龍造寺先生
歯が少なくなって、食べ物をきちんとかめなくなると、柔らかいものばかり食べるようになるでしょう。そうなると、栄養バランスに偏りが生じるはずです。生活習慣病のリスクすら押しあげかねません。寿命を左右すると言ってもいいのではないでしょうか。入れ歯やインプラントなどで抜けた歯を補うにしても、その治療や再処置、あるいはメインテナンスが一生涯続きます。
編集部
そうした悪循環を断ち切るのが、定期的な歯科検診であると?
龍造寺先生
その通りです。加えて、時系列観察ができる点も重要です。むし歯や歯周病は、早期発見ももちろんなのですが、「進行しているかどうかのウォッチ」が欠かせません。症状が進行しておらず、特段の痛みなどもなければ、無理に治療介入する必要はないでしょう。ただし、「定期的に来院していただくこと」が前提です。来院していただけるかどうかわからなかったら、悪化が怖いので、歯を削ってしまうかもしれませんね。
日頃のセルフケアを歯科医院でチェックする
編集部
病気の進行をウォッチするとしたら、そんなに間が空けられないですよね?
龍造寺先生
再診のタイミングについては、お口の中の状態に応じて、医師から指示をいたします。おおまかな目安としては、「3カ月ごと」になるでしょうか。ただし、意識の高い方は、1カ月から2カ月おきに受診されますね。
編集部
ちなみに、定期検診ではなにをするのでしょうか?
龍造寺先生
セルフケアでは不十分なところを歯科衛生士が清掃します。加えて、ブラッシング方法などのアドバイス、間違ったケア方法の修正・指導などをしています。これと前後して、歯科医師がお口の中を確認し、各疾患の早期発見に結びつけています。
編集部
歯のケアをお任せするのではなくて、自ら上達する必要もあると?
龍造寺先生
その通りです。例えば3カ月に1度の検診なら、間の約90日は、歯科医師が介入できません。歯科医院でのケアよりセルフケアのほうが、“圧倒的に”重要です。ある臨床データによると、ただ通院しているだけでは、通院していない方と比べて、「結果に大差がない」そうです。
編集部
つまり、定期検診は「セルフケアのためにある」と言えそうですか?
龍造寺先生
自己採点の場として活用いただければうれしいですね。セルフケアは毎日おこないますから、例えその差がわずかでも、将来的には「大差」となります。そして、上達すればするほど、上昇カーブの傾きも大きくなるでしょう。
かつての常識が、現代の非常識となっていることも
編集部
セルフケアの最新事情があったら教えてください。
龍造寺先生
歯磨きに関する今の主流的な考え方は、「食後30分空けてから」になりつつあります。食事の直後は、お口の中が酸性に傾くので、「唾液によって中和されるのを待ちましょう」という考え方です。また、歯磨き後の口ゆすぎは、1回もすれば十分です。歯磨き粉に含まれる有効成分を、洗い流しきらないでください。
編集部
そういった情報は、定期検診で教えてもらうことができますか?
龍造寺先生
先ほどお話したように、セルフケアが大事になっていくので「患者教育」という視点でも、レクチャーすることはありますよ。また、疑問があれば歯科衛生士に質問して、会話するきっかけにしてほしいですね。歯科衛生士はメインテナンスのプロなので、頼っていい存在です。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
龍造寺先生
歯科医院は、必ずしも「かかった病気を治すところ」ではなく、「病気にならないようにするところ」です。よく耳にするフレーズだとは思いますが、やはりその意識が大切です。そして、「病気にならないようにする」ためにも、定期検診にきていただき、セルフケア方法を上達しましょう。
編集部まとめ
歯科の定期検診を受けることで、疾患の早期発見と早期治療開始ができる、進行度合いによっては最低限の治療で済む、セルフケアの上達が図れる、歯を守ることで寿命の伸延が望める、そしてなにより、健康で生き生きとした生活を楽しめる。おおむね3カ月に1度の歯科検診で、これだけのメリットが得られるのでした。「自分のため」という自覚をもち、義務感からではなく「必要だから通う」という意識へ切り替えましょう。
医院情報
所在地 | 〒251-0052 神奈川県藤沢市藤沢2-3-13 藤沢市トレアージュ白旗内 医療モール2F |
アクセス | 小田急江ノ島線「藤沢本町駅」 徒歩6分 |
診療科目 | 歯科 |