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手術後すぐにかめる! 即時荷重インプラントって何?

 更新日:2023/03/27

治療技術の進歩によって、施術日当日から食事のできるインプラントが登場したそうです。前歯の欠損による見た目の問題も、すぐに解消してくれるでしょう。そんな「即時荷重インプラント」の詳細を、「いちデンタルクリニック」の一戸先生に解説していただきました。

一戸江梨

監修医師
一戸江梨(いちデンタルクリニック 院長)

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神奈川歯科大学卒業。一般歯科勤務を通じて、保険診療から自由診療までオールラウンドな治療経験を積む。2018年、東京都世田谷区に、歯科技工所を併設した「いちデンタルクリニック」開院。女性歯科医師を中心に、スタッフ一丸となって治療にあたっている。顎咬合学会認定医。

患者の不具合に寄り添ったインプラント

患者の不具合に寄り添ったインプラント

編集部編集部

最近よく聞く「即時荷重インプラント」って何ですか?

一戸江梨一戸先生

「顎に埋め込むインプラント体」と「その上にはめる仮歯」の施術が、1日でできる治療方法のことです。従来の進め方では、インプラントと顎の骨がしっかり接着するまで、3カ月から6カ月間待たなくてはいけませんでした。

編集部編集部

その間はどうしていたのでしょう?

一戸先生一戸先生

入れ歯などを使っていただくか、人工歯のない状態で食事をするしかありませんでした。1本の奥歯だけならそんなに不自由を感じないものの、前歯数本となると、見た目が大きく関わってきますよね。せっかく手術した恩恵を受けきれないため、即時荷重という方法が開発されたのでしょう。

編集部編集部

似たような用語で、「抜歯即時埋入」という言葉もみかけますが?

一戸先生一戸先生

「抜歯即時埋入」は、歯の根っこが残っている場合に用いるインプラント治療法です。「抜いて、すぐ埋める」という意味ですね。対する「即時荷重」は、歯の根っこが残っていてもいなくても適応できます。

編集部編集部

どうして「即時」が可能になったのでしょう?

一戸先生一戸先生

インプラントの形が大きく関わっていると思います。インプラント治療が始まったころは、「いかに埋めるか」が問われていました。しかし、今では「いかに初期固定を得るか」という発想が欠かせません。また、初期固定の度合いを測る装置も開発されています。計測された数値が基準に満たない場合は、径の大きなインプラントに代えるか、施術そのものを見送ります。

編集部編集部

本当にその日からかめるのですか?

一戸先生一戸先生

1カ月くらいの間は、患部で固いものをかまないほうがいいでしょう。また、仮歯なので、人工歯の高さをほんの少し低くして、強い力が加わらないようにすることも可能です。「意図的に隙間を空ける」ようなイメージでしょうか。もちろん、しっかり接着したら、本来のかむ力が発揮できる「本番の歯」と取り換えます。

即時荷重は、メリットにもリスクにもなりえる

即時荷重は、メリットにもリスクにもなりえる

編集部編集部

時短というメリットはわかりやすいですが、その一方、デメリットは?

一戸先生一戸先生

即時荷重インプラントの成功率は、通常のインプラントより、若干下がります。予後の安定を考えたら、旧来のインプラントのほうが、好ましいといえば好ましいですよね。最終的には、骨質や審美的要素も含めて、患者さんと判断していただきます。

編集部編集部

誰でも受けられるわけではないですよね?

一戸先生一戸先生

原則として、通常のインプラントが適応できる方は、どなたでも受けられます。他方、顎の骨が薄く、骨再生治療などを必要とする場合は、そもそも即日ではなくなります。そうなると、即時荷重インプラントを選ぶ意味がありません。

編集部編集部

気になる費用体系はどうなっていますか?

一戸先生一戸先生

通常のインプラントも即時荷重インプラントも、費用のうえでは、ほとんど変わりません。当院の場合、検査費用込みで、おおむね50万円弱となっています。

編集部編集部

あえて、旧来のインプラントを選ぶケースってあるんですか?

一戸先生一戸先生

即時荷重という方法自体が、1つのリスクになりえます。通常のインプラントで難しい方が即時荷重で進めると、さらに総合的なリスクを増加させます。その辺の判断はトータルでおこなっていて、場合によっては、旧来の方法をお勧めすることもあります。

1日の受診でインプラントを入れられるわけではない

1日の受診でインプラントを入れられるわけではない

編集部編集部

初診から施術終了までの流れについて教えてください?

一戸先生一戸先生

通常のインプラント治療に準じます。異なるところは、「インプラント体と仮歯を入れる手術が1日で済む」点のみです。事前にはカウンセリング検査もしますし、本番の歯への交換も必要ですし、「すべての手順が1日で終わる」わけではありません。もし歯周病が見受けられたら、その治療を終えるまでは、インプラント治療に進めません。

編集部編集部

予後についてもお願いします。

一戸先生一戸先生

こちらも、通常のインプラントと変わりません。本番の歯へ交換した後も、定期的な受診を続けて、「インプラント周囲炎」の予防に努めましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

一戸先生一戸先生

治療の安全性からしたら、急を要す事態でない限り、通常のインプラントに分があると考えています。他方、前歯などの審美的な効果を優先したい場合は、有力な選択肢となるでしょう。当たり前かもしれませんが、「治療リスク」と「その必要があるのか」を天秤にかけ、熟慮のうえで決めていきましょう。

編集部まとめ

即時荷重インプラントといっても、施術日当日から“固いもの”が食べられるわけではないのでした。そう考えると、通常のインプラントとの違いは、「仮歯で過ごせる」審美的な点にあると思われます。機能面や安全性を重視するのであれば、いまのところ、通常のインプラントのほうが“無難”です。ただし、インプラントの歴史は始まったばかりですので、今後、さまざまな応用技術が開発されてくるでしょう。

医院情報

いちデンタルクリニック

いちデンタルクリニック
所在地 〒154-0002 東京都世田谷区下馬3-33-10
アクセス 三軒茶屋駅から徒歩12分
診療科目 歯科

この記事の監修歯科医師