より安全にインプラント治療ができる!? 「 サージカルガイド」とは?
歯の欠損治療において、天然歯と遜色のないかみ心地が実現できるというインプラント治療。しかし、利便が得られる一方で、切開手術による不安も無視できないのではないでしょうか。その安全性の向上に大きく関わってきそうなもので、「サージカルガイド」という器具があるとのこと。詳しい解説を、「のぶスマイル歯科」の柳澤先生にお願いしました。
監修医師:
柳澤 伸行(のぶスマイル歯科 院長)
昭和大学歯学部卒業。昭和大学歯科病院補綴科入局、一般歯科医院勤務を経た2011年、埼玉県川口市に「のぶスマイル歯科」開院。生まれ育った地元で、信頼関係に根ざした地域医療を提供している。日本口腔インプラント学会、日本歯科審美学会、日本臨床歯周病学会の各会員。
すべての症例で必ず使うとは限らない
編集部
インプラント治療の説明で、より安全性を高めるための器具があるという話を聞いたのですが?
柳澤先生
「サージカルガイド」のことですね。サージカルガイドとは、インプラントを埋入する際、決まった箇所、角度、深さにしか打てないようにした補助器具のことです。専用のマウスピースを作り、インプラントを埋入する部分にあらかじめ「ガイド」を埋め込んでおくことが多いようです。
編集部
「サージカルガイド」自体が狂っているようなことはないのですか?
柳澤先生
X線撮影や歯科用CTから得られた情報を元にシミュレートしますので、「精度が高い」といえるでしょう。しかし実際には誤差はありますので、必ず確認を行いながらゆっくりと手術を行っていきます。
編集部
「サージカルガイド」は精度を高めるための器具なのですね?
柳澤先生
そうですね。加えるとしたら、大規模な歯茎の切開手術を用いなくても、インプラント治療ができることでしょうか。事前のシミュレートによりデジタルデータをすでに持っているわけですから、ピンポイントの外科手術で済むわけです。
編集部
考えられるデメリットは?
柳澤先生
いまの話の裏返しです。つまり、骨の状態などが予測していた内容と違ったときに、対応しづらくなります。サージカルガイドで決められたことしかできないわけです。ほか、マウスピースの費用がかかること、作製するので1工程増えること、などが挙げられます。
編集部
どれくらいの歯科医師が使っているのでしょうか?
柳澤先生
必要とされない症例もありますので、一概には言えないですね。「サージカルガイド」が本領発揮するのは、シビアな症例です。例えば、顎の骨が薄くてインプラント治療を困難にさせているケースなどでしょう。他方、歯科医師が目で確認しながら進めたいときなどには、あえて「使わない」場合もあります。
治療の安全性は向上したと言えるのか
編集部
事故率などはどれくらい軽減したと思いますか?
柳澤先生
これも難しい質問ですね。インプラント治療の安全性が高まった反面、いままで難しかった症例にも適応できてしまうからです。治療の選択肢を広げたことは確かではありますが、どれくらい事故率が軽減したのかは、なんともいえません。
編集部
インプラントの「持ち」はどうなのでしょうか?
柳澤先生
「サージカルガイド」を使ったからといって、耐用性が上がるわけではありません。「持ち」の問題は、むしろ治療後のメインテナンスで決まりますから、定期的に歯医者に通ってください。
編集部
「サージカルガイド」の費用についても教えてください。
柳澤先生
一般的には、インプラントの基本費用に5万円ほど上乗せするようです。施術箇所によっても上下するでしょう。なお当院では、サージカルガイドの有無にかかわらず、費用は同じです。1歯あたり、税込38.5万円前後といったところでしょうか。
道具はあくまでも道具にすぎない
編集部
「サージカルガイド」が簡便な反面、新米の医師でもインプラントを打ててしまうのではないでしょうか?
柳澤先生
そのとおりです。新米であってもベテランであっても、「サージカルガイド」を盲信するのは、とても危険なことです。もし皆さんがインプラント治療を検討しているのであれば、施設の設備だけで決めず、歯科医師の施術歴も参考にしてください。
編集部
熟練した医師が「サージカルガイド」を使う分には、ほぼ問題ないと?
柳澤先生
症例が豊富な先生ほど、“盲信する怖さ”を知っているはずですからね。「サージカルガイド」に限らず、通常の手順をきちんと進めていれば、事故には至らないはずです。
編集部
その他、知っておいた方がいいことはありますか?
柳澤先生
「サージカルガイド」は、メーカーによって、異なった名称を付けていることがあります。当院の場合は「ノーベルガイド」といいます。ノーベルバイオケア社の製品で、よりマウスピースの精度が高いと感じています。
編集部まとめ
「サージカルガイド」の果たした役割は、どうやら、「いままで難しかった症例にも適応の幅を広げた」ことにあるようです。額面どおり「安全性が向上したか」といえば、断言はできません。信頼すべきはヒトであり、けっしてモノではないのでしょう。もともと慎重だった医師の治療をさらに確実にしたのが、「サージカルガイド」なのかもしれません。
医院情報
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診療科目 | 歯科 |