なんでこんなに高いの? インプラント手術が高額な理由とは?
失った歯を取り戻したい。そんな思いの方にとってインプラント手術は夢のような治療だ。しかし、金額を聞いて躊躇してしまう人も多いはず。なぜこんなにも高額なのか。医院によって金額が違うのはなぜか。また、低額料金を提示している歯科医院は大丈夫なのか。インプラント手術の金額に関する疑問をつむら歯科医院の津村太郎先生に伺った。
監修医師:
津村 太郎(つむら歯科医院 院長)
2004年、北海道医療大学歯学部卒業。同年4月、北海道医療大学歯学部研修科入局。2005年4月から秋田県内の歯科医院に勤務。2006年4月から秋田大学医学部附属病院歯科口腔外科臨床研修医。2008年から2016年まで東京都内、神奈川県内の歯科医院勤務後、2016年9月、つむら歯科医院を東京都世田谷区弦巻に開院。「納得して治療を受けていただく」をモットーに、事前の説明を大切にした治療を心掛けている。
専用設備や道具にお金がかかる
編集部
インプラントはかなり一般的な医療になってきていると思いますが、費用が高いことは変わりません。なぜ高額なのでしょうか?
津村先生
インプラントは基本的に合金製の支柱とかぶせもので1本の人工歯ができます。この2つがそれぞれ結構な金額になるのです。
編集部
材料自体にお金がかかるということですね。
津村先生
そうです。それ以外に医院側は、手術のための個室を作り、手術の際には生体モニターで管理するといった設備面での費用がかかります。さらに、完全滅菌で手術をするなど、道具も特殊なものになりますから、どうしても設備の費用が上乗せされることになってしまいます。
編集部
特殊な道具とは、どのようなものですか?
津村先生
たとえば、インプラントはドリルであごの骨に穴を開けるのですが、ドリルはインプラント専用のものを使用します。1回使ったら基本それで終わりです。また、インプラント手術では歯肉を切りますが、これも全てインプラント専用の特殊な道具を使います。基本的には全部新品の道具を使いますから、それらが手術費用に上乗せされます。
編集部
患者さんや医院によって手術の方法が変わるということもあるのですか?
津村先生
骨の硬さとかは人によって違いますからね。ただ、私の考えですがCTの設備がない歯科医院での手術はやめたほうがいいと思います。非常に危険です。
編集部
どうしてCT設備が必須なのでしょう?
津村先生
厳密には必須ではないのですが、CTで撮って3次元で見て、骨の厚さや幅がどのくらいあるか、どこに支柱を埋めたほうがいいのかということを把握してから手術したほうがいいと思います。レントゲンだと、それはわからないですからね。現在のCTはインプラントをどこに埋めればいいかも示してくれます。そういう分析も大事ですから、CTはやはり必須と私は考えます。
編集部
もし骨の幅が少なかったらどうするのでしょう?
津村先生
その場合は、先に骨を足す手術をすることになります。方法は何種類かありますが、当然、治療費は加算されますね。
インプラントメーカーの歴史が金額を決める
編集部
最近、とても安くインプラント手術をしているクリニックがあります。
津村先生
確かにありますね。それは、インプラント手術の歴史が浅いためです。
編集部
歴史が浅いとは?
津村先生
インプラントは比較的、新しい治療法です。なので、まだ事例の少ないメーカーは安く提供しようとするので、価格が抑えられるのです。また、保証がしっかりしているかも重要ですが、安いところはあまり長期の保証を付けてくれないかもしれません。簡単にいえば、ブランド力によって差が出るというようなことになりますね。また、そうしたメーカーのものを大量に材料を購入して、安くしている歯科医院もあるでしょうね。
編集部
金額の内訳については先生に聞いてもいいですか?
津村先生
もちろんです。大体の医院は一次オペと二次オペに分けていると思いますので、一次オペでこの金額、歯が入った二次オペでこの金額になると、提示してくれるはずです。
編集部
一次と二次ときっちり聞いておけば、まあそれ以上増えることはそうそうないだろうということですね。
津村先生
ないと思います。私のところでは、基本的にインプラントを埋めた後にちょっと待つ期間でその一次の代金をいただきます。一次手術をして骨とインプラントがくっついたかどうかをみて、「二次オペをしよう」となります。私は初めに全額支払うことはあまりお勧めしていません。インプラントは自費治療ですからね。自費治療は成功報酬だと私は思っています。
インプラントができない人もいる
編集部
ところで、インプラント手術ができない人もいるのでしょうか? たとえば、歯周病の人はだめとか。
津村先生
歯周病の人はやめたほうがいいと思います。私は歯周病の患者さんがインプラント手術をしたいと仰った場合は、より設備の整っている大学病院を紹介します。もっとも、インプラントより先に歯周病の治療をしなさい、ということになっていくとは思いますが。
編集部
ほかにできない人はいますか?
津村先生
糖尿病の人も慎重になったほうがいいでしょう。感染症にかかりやすく、傷が治りにくいですからね。骨粗鬆症の薬を飲んでいる人も主治医と要相談ですね。
編集部
インプラント手術は絶対安心というものでもないのですか?
津村先生
それは患者さんの口の中の状態次第です。でも、どうしても入れ歯が嫌で、もう1回硬いものが噛みたいと思う人もいらっしゃいます。できるだけ希望は叶えたいと思いますが、危ないなと思ったらお断りします。そうした判断基準はそれぞれの歯科医師が持っていると思いますよ。
編集部
誰でもできるわけではないのですね。
津村先生
そうですね。今、一番問題になっているのは、寝たきりになった時にケアできなくなることです。インプラントは歯ブラシによる口腔の手入れが大切ですからね。ケアが自分でできなくなると、インプラントは異物でしかなくなってしまいます。そうなった場合は、インプラントを除去することになるでしょうね。
編集部
最後に伺いたいのですが、インプラントを受けるクリニックを選ぶときの基準はありますか?
津村先生
どのくらいインプラント手術をしているかは聞くといいでしょう。あとは、先生と信頼関係が築けるかどうかですね。インプラントを入れることによって高いと感じるのか安いと感じるのかは、人それぞれだと思います。信頼できる先生を選んでください。
編集部まとめ
津村先生は、今までインプラント手術をした患者さんが訴えてきたことを書き出して、初めてインプラント手術を受ける人に提示しているという。ある人の経験は、ほかの人にも起こる可能性があるということを示すためですが、それによって患者さんもそのリスクをきちんと認識できるとのこと。もちろん、それによってトラブルも減らすことができるのでしょう。
医院情報
所在地 | 〒154-0016 東京都世田谷区弦巻2-9-5 シャンボール弦巻1F |
アクセス | 東急田園都市線「駒沢大学駅」より徒歩12分 東急世田谷線「世田谷駅」より徒歩10分 |
診療科目 | 歯科 |