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スタージ・ウェーバー症候群
田頭 秀悟

監修医師
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)

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鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。

スタージ・ウェーバー症候群の概要

スタージ・ウェーバー症候群は、脳や顔面の皮膚、眼に特徴的な血管の異常をともなう先天性疾患です。

主な特徴は脳の表面を覆う軟膜の血管腫や、顔面のポートワイン斑、緑内障などが挙げられます。

これらの影響により脳の血液循環に障害が生じ、てんかん発作や発達の遅れ、運動機能の障害などの神経症状が現れることがあります。とくにてんかん発作は患者の大多数に認められる症状です。

スタージ・ウェーバー症候群の発症頻度はまれで、およそ50,000〜100,000人の出生に1人と推定されています。現在のところ根本的な治療法はなく、症状に応じた対症療法を中心に治療します。

出典:公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター「スタージ・ウェーバー症候群」

スタージ・ウェーバー症候群の経過や症状の程度には個人差があり、軽度の症状のみで問題なく日常生活を送れる人もいれば、重度の障害をともなう人もいます。

スタージ・ウェーバー症候群の原因

スタージ・ウェーバー症候群の原因は解明されていませんが、赤ちゃんが母親のおなかの中にいる初期段階の血管形成に問題があると考えられています。

胎児の初期段階では、赤ちゃんの身体の中には原始静脈叢(げんしじょうみゃくそう)と呼ばれる初期の血管ネットワークが形成されます。

原始静脈叢は身体の血管系が正常に発達するにつれて自然に退縮するものですが、スタージ・ウェーバー症候群では、何らかの理由で退縮が正常に起こらず、本来消えるはずの血管が残ることが病気の原因と考えられています。

近年の研究により「GNAQ」という遺伝子の変異が血管の異常な形成や残存などに影響していることがわかっています。

スタージ・ウェーバー症候群の前兆や初期症状について

スタージ・ウェーバー症候群の初期症状は、出生時から存在する顔面のポートワイン斑で、額や眼の周囲、頬などに現れます。

ポートワイン斑は患者の大多数で認められるもので、薄いピンク色から濃い赤紫色までさまざまな色調を示し、平らで境界がはっきりとした斑点として認められます。

乳幼児期になると、多くの患者においててんかん発作が現れます。発作の様子はさまざまで、手足のけいれんのように気づきやすいものから、ぼんやりと動作が止まるのみの気づきにくい症状まで幅広いです。

また、一度発作が始まると長時間続く重積状態(じゅうせきじょうたい)になりやすい点も特徴です。

脳の血液循環障害やてんかん発作の影響により、運動発達や言語発達、知的発達などに遅れが生じることがあります。とくに脳の血管腫が広範囲に及ぶ場合や、てんかん発作がコントロールできない場合は、発達への影響が大きくなりがちです。

眼の症状としては緑内障が生じることがあります。緑内障により眼圧が上昇し、両目のサイズに違いが生じたり、視力低下や視野障害を引き起こしたりします。

出生まもない頃は自身で目の見えにくさを訴えることはできませんが、成長が進むにつれて見えづらさを訴えるようになることもあります。

スタージ・ウェーバー症候群の検査・診断

スタージ・ウェーバー症候群は、症状の観察をはじめ画像検査や脳波検査などの結果によって診断します。

画像検査

画像検査ではCT検査やMRI検査によって所見を確認します。なかでも造影剤を用いたMRI検査は脳の表面の血管がはっきりと映し出されるため、萎縮している部分や異常な血管が発生している部分の評価につながります。

脳波検査

脳波検査は脳の電気的な活動の記録が可能で、てんかん発作時の特徴的な波形を確認できます。

スタージ・ウェーバー症候群におけるてんかん発作は個人差がありますが、症状が軽微であっても適切な治療につなげるために、細やかな検査をおこなうことが重要です。

スタージ・ウェーバー症候群の治療

スタージ・ウェーバー症候群は現在のところ根本的な治療法が確立されていません。各症状に対する対症療法を中心に治療し、患者の生活の質を向上させて症状の進行を抑えることが重要です。

てんかん発作に対する治療

てんかん発作の治療では抗てんかん薬を用いた薬物療法をおこないます。患者の多くにおいて効果が期待できるものです。

しかし、複数の抗てんかん薬を併用しても発作のコントロールが困難な「難治性てんかん」の場合は、手術を検討します。

緑内障に対する治療

緑内障に対しては、眼圧を下げるための点眼薬による内科的治療をおこないます。子どもの頃から発生している緑内障はその後も進行する可能性があるため、治療後も継続的に眼科検診を受けることが重要です。

ポートワイン斑に対する治療

顔面のポートワイン斑に対しては、レーザー治療が有効とされています。通常、複数回のレーザー治療が必要となるため、皮膚科医や形成外科医と相談しながら治療を受けることが望ましいです。

スタージ・ウェーバー症候群になりやすい人・予防の方法

スタージ・ウェーバー症候群は、特定の人に起こりやすい明確な因子は現在のところ見つかっていません。

そのため、現在の医学でスタージ・ウェーバー症候群の予防は困難とされています。

しかし、早期発見と適切な介入によって症状の進行を抑えたり、合併症を予防したりすることは可能です。

出生時に顔面にポートワイン斑が認められた場合は、スタージ・ウェーバー症候群の可能性を考慮した検査や経過観察が重要です。とくにてんかん発作の早期発見と治療がその後に影響するため、小さな発作でも注意して観察し、不安に思う場合は医療機関へ相談することをおすすめします。

また、定期的な眼科検診によって緑内障を早期に発見し治療することで、視覚障害の進行の抑制が期待できます。

スタージ・ウェーバー症候群は希少疾患であるため、診断や治療に関する情報を得るためには、難病に詳しい専門医に相談することも有用です。

患者家族同士の交流や情報共有も、日常生活の質を向上させるための実践的なアドバイスを得る機会となります。

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