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ロスムンド・トムソン症候群
林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
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眼科(角膜外来)

ロスムンド・トムソン症候群の概要

ロスムンド・トムソン症候群は遺伝子の修復に必要なRecQL4タンパクの異常が原因で、皮膚や骨格に異常を引き起こす、まれな遺伝性疾患です。
この病気は、日光を浴びると皮膚が赤くなる日光過敏性紅斑や、皮膚の萎縮、骨格の異常、若年性白内障などを特徴とします。

世界では約300人の患者さんが報告されており、日本でも約10人に発症が確認されています。日本では厚生労働省によって指定難病186として登録されています。

この病気は常染色体劣性(潜性)遺伝の形式で遺伝します。両親が保因者である場合、子どもが発症する確率は25%です。同じ遺伝子座に異常を認めるラパデリノ症候群、バレー・ジェロルド症候群は類縁疾患として知られていますが、ロスムンド・トムソン症候群に含むこともあります。

ラパデリノ症候群(RAPADILINO症候群)は橈骨欠損・低形成、膝蓋骨欠損・低形成、口蓋の低形成、口蓋裂、慢性の下痢、関節の脱臼、小柄な体型、四肢の奇形、細長い鼻、正常な知能を特徴とします。RAPADILINOは、これらの特徴的な症状の頭文字から付けられた名前です。高率に骨肉腫などの悪性腫瘍を合併します。

バレー・ジェロルド症候群(Baller-Gerold症候群)は、冠状縫合の早期癒合による短頭や橈骨欠損、拇指欠損を特徴とします。骨肉腫、皮膚がん、悪性リンパ腫を合併することがあります。

ロスムンド・トムソン症候群は、特に日光に弱く、皮膚の変化が顔や腕、脚に広がります。また、骨肉腫や皮膚がんなどの悪性腫瘍を合併するリスクが高いため、定期的な健康診断が重要です。根本的な治療はなく、対症療法が中心です。日光を避けることが基本的な予防策となります。

ロスムンド・トムソン症候群の原因

この病気の主な原因は、DNAの複製・修復に関与するヘリカーゼタンパクをコードするRecQL4遺伝子の変異です。この遺伝子の異常があると、DNAの安定性を失わせ、細胞の老化や損傷を引き起こします。RecQL4タンパク質は、DNAの二重らせん構造を解除するヘリカーゼとして機能し、遺伝情報の安定化に重要な役割を果たします。

RecQL4遺伝子の変異は、ロスムンド・トムソン症候群の患者さんの約60%に見られますが、残りの約40%ではこの遺伝子の異常が見つかっていません。そのため、ほかの遺伝的要因や染色体異常も病気に関与している可能性があります。

ロスムンド・トムソン症候群の前兆や初期症状について

ロスムンド・トムソン症候群の初期症状は、生後3~6ヶ月頃から現れ始めます。特に日光を浴びると赤くなる日光過敏性紅斑が顔や腕、脚に現れます。この皮膚の変化は、次第に萎縮や毛細血管拡張を伴うようになります。

この病気は、皮膚や骨格だけでなく、目や歯にも影響を与えます。特に若年性白内障は、視力の低下を引き起こすため、早期の治療が重要です。なお知的な障害はなく、多くの患者さんで知能は正常です。
生後3~6ヶ月の乳児期から症状が現れ始めるため、通常は小児科を受診します。

 

初期に現れる症状

  • 日光過敏性紅斑:日光を浴びると赤くなる
  • 皮膚の萎縮:皮膚が薄くなる
  • 毛細血管拡張:皮膚に赤い血管が見える
  • 色素沈着:皮膚にシミができる
  • 毛髪異常:眉毛や毛髪が薄い、または生えてこない。爪がよく生えない。
  • 手の骨や指の一部が欠けていることがある

 

進行すると現れる症状

  • 骨格異常:手足の骨が細長くなる
  • う歯:むし歯になりやすい
  • 若年性白内障:幼少期から白内障が進行
  • 低身長:成長が遅く、均整は取れているが小柄な体型
  • 発がん:骨の悪性腫瘍である骨肉腫や、皮膚がんを高率に発症する

ロスムンド・トムソン症候群の検査・診断

診断は、下記の手順で進められます。

A.ロスムンド・トムソン症候群を疑う臨床症状

1.を必須として、2〜9が2つ以上あれば疑い例とします。

  • 多形皮膚萎縮症
  • 低身長
  • 骨格異常(歯牙低形成、骨密度低下を含む)日光過敏症
  • 毛髪異常
  • 若年性白内障
  • 乳児期の難治性下痢
  • 爪異常
  • その他:毛細血管拡張症、色素沈着、成長遅延、性腺機能低下、角化異常

B.Aが陽性で家族歴がない場合、下記の検査を行います。

  • FISH検査(8番染色体の異常)
  • 皮膚生検:組織を免疫染色しRecQL4タンパク欠損を検出

Bのいずれも陰性だった場合は、以下の疾患を鑑別します。
ブルーム症候群、コケイン症候群、ウェルナー症候群、ファンコーニ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、色素性乾皮症、先天性角化症、アクロゲリア

Aかつ家族歴あり、もしくはB陽性、に対して遺伝学的検査を実施

  • RecQL4遺伝子の変異

上記陽性で診断確定、陰性でも定期検診による悪性腫瘍スクリーニングは継続します。

ロスムンド・トムソン症候群の治療

ロスムンド・トムソン症候群は遺伝性疾患なので根本的な治療法はありませんが、対症療法で症状を和らげることができます。特に皮膚の変化に対しては、日光を避けることが重要です。

骨や皮膚にがんが出現した場合は、がんに対しての治療が必要になります。抗がん薬の治療効果は一般のがん患者さんと変わりません。がんの合併がなければ、一般人に近い寿命が得られるとされます。

 

日光を避ける

日光を浴びないようにすることで皮膚の変化を抑えます。日焼け止めや帽子、長袖の服を着用することが推奨されます。

 

レーザー治療

毛細血管拡張に対してレーザー治療を行い、皮膚の見た目を改善します。

 

眼科治療

若年性白内障に対しては、必要に応じて手術を行います。

整形外科的治療

骨格異常に対しては、整形外科的治療が行われることがあります。

 

がんの定期検査

骨肉腫や皮膚がんなどの悪性腫瘍を早期発見するために、定期的な健康診断が重要です。
発見されたがんの治療は多科連携で行われ、患者さんの生活の質を向上させることが目標です。

ロスムンド・トムソン症候群になりやすい人・予防の方法

ロスムンド・トムソン症候群は遺伝性疾患であるため、根本的な予防法はありません。しかし、早期発見と適切な治療が重要です。

 

なりやすい方

  

家族歴

両親がRecQL4保因者である場合

 

予防の方法

  

日光を避ける

日光を浴びないようにすることで皮膚の変化を抑えます。

  

定期健康診断

がんの早期発見を目的とした定期的な健康診断が重要です。

  

遺伝カウンセリング

家族歴がある場合には、遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。

 

生活習慣の改善

健康的な食生活や運動習慣を心がけることで全体的な健康を維持します。

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