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ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症
井林雄太

監修医師
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)

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大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症の概要

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症(以下、GALT欠損症)は、ガラクトース血症の一種であり、母乳やミルクに含まれるガラクトースをうまく処理できない遺伝性の病気です。
ガラクトース血症とは、ガラクトースを代謝する経路のいずれかの酵素に異常があるために、血中のガラクトース濃度が異常に高くなる状態を指します。

ガラクトースは、乳糖(ラクトース)が分解されることで生成される単糖類であり、エネルギー源として重要な役割を果たしています。
GALT欠損症では、ガラクトースを代謝する酵素であるガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(GALT)の活性が低下または欠損しているため、ガラクトースが体内に蓄積します。
この蓄積したガラクトースは、さまざまな臓器に影響し、重篤な症状を引き起こす原因となります。
新生児期早期から不機嫌、哺乳力の低下、体重減少、嘔吐、下痢などの症状が現れます。
病気の進行に伴い肝機能障害や黄疸が出現して、敗血症や髄膜炎などの感染症を併発することがあります。

GALT欠損症は新生児マススクリーニングによって早期に発見することが可能です。
早期発見と早期治療によって、重篤な症状の発症を予防し、健康な成長を促すことができます。
新生児マススクリーニング(NBS)の対象疾患のため、日齢4~6日でかかとから少量の血液を採取し、病気の有無が調べられます。

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症の原因

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症は、ガラクトース代謝に関わる酵素の遺伝的な欠損または活性低下によって引き起こされる、遺伝性の代謝異常です。
ガラクトースとその代謝物が体内に異常に蓄積することでさまざまな症状を引き起こします。

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(GALT)は、ガラクトースをグルコースに変換するために必要な酵素です。
ガラクトースは、乳糖(乳製品に含まれる主要な糖)が分解されることによって生成されます。
GALTの正常な働きによって、ガラクトースは体内で利用可能なエネルギー源となります。
GALT酵素が欠損または機能していない場合、ガラクトースは正常に代謝されず、体内に蓄積します。
蓄積したガラクトースは、さまざまな臓器や組織に損傷を与え、重篤な症状を引き起こす可能性があります。
特に、新生児期に適切な治療が行われない場合、肝機能障害、黄疸、敗血症などの重篤な合併症を引き起こし、命に関わることもあります。

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症は遺伝性疾患であり、親のGALT遺伝子の変異が子どもに引き継がれることにより起こります。
この疾患は常染色体劣性遺伝形式をとり、両親がともにGALT遺伝子の変異を持っている場合、子どもがGALT欠損症を発症する可能性があります。両親がともに保因者(遺伝子異常を持つが発症していない)である場合、子どもが発症する確率は25%です。

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症の前兆や初期症状について

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症は、早期発見と早期治療が重要な病気です。特に新生児期に見られる初期症状を見逃さないことが、その後の発達に大きく影響します。

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症では、ガラクトースが体内に蓄積し、肝臓などの臓器に負担をかけることで、新生児期早期からさまざまな症状が現れます。
ミルクを飲む力が弱くなかなか体重が増えない、ミルクの吐き戻しが多い、皮膚や白目が黄色くなる(黄疸)、便が水っぽく回数が多い、機嫌が悪いなどといった症状がみられます。

また、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症では、発達への影響にも注意を払う必要があります。
成長の過程において、体重や身長の伸びが悪くなる成長遅延、知的発達の遅れ、震え・発声障害・運動失調などの神経系の異常、白内障などが起こることがあります。
ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症による症状や発達への影響を軽減するために、早期から継続した食事療法や治療を行うことが大切です。
ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症は、小児科や代謝内科での継続的な治療と経過観察を受けることが大切です。

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症の検査・診断

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症の早期発見と適切な治療のためには、正確な検査と診断が不可欠です。この病気の検査方法には、新生児マススクリーニング、血液検査、遺伝子検査などがあります。

新生児マススクリーニングでガラクトース値の上昇が認められた場合、速やかに精密検査を行う必要があります。早期に診断し、適切な治療を開始することで、重篤な症状の発症を予防できる可能性があります。

血液検査は、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(GALT)酵素の活性を直接測定する方法です。GALT酵素の活性が低下している場合、ガラクトース血症の可能性が高くなります。
ボイトラー法という検査方法では、GALT酵素の働きが正常かどうかを判定することができます。

遺伝子検査は、ガラクトース血症の原因となっている遺伝子変異を特定し病気の確定診断に役立ちます。
また、遺伝子検査によって両親がGALT遺伝子に変異を持っているか調べることができるため、遺伝カウンセリングにも用いられます。
ガラクトース血症は、常染色体劣性遺伝という遺伝形式をとるため、両親がともに保因者(遺伝子異常を持つが発症していない)の場合、子どもがガラクトース血症を発症する確率は25%となります。
家族歴がある場合は、遺伝カウンセリングを検討することも重要です。

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症の治療

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症の治療は、主に食事療法によって行われます。
この病気は、ガラクトースを代謝する酵素の欠損が原因であるため、食事からガラクトースの摂取を制限することが重要な治療法となります。
早期に診断し、適切な治療を継続することで症状を予防できるとされています。

ガラクトース血症の治療において、ガラクトース制限食は重要です。
牛乳、粉ミルク、チーズ、ヨーグルトなど、乳糖を含む食品はすべて避ける必要があります。
乳糖は体内でガラクトースとグルコースに分解されるため、摂取するとガラクトースが体内に蓄積してしまいます。
粉ミルクの代わりに、代替ミルクとして大豆ミルクやガラクトースを含まないよう特別に調合された特殊ミルクなどが用いられます。
豆類、一部の果物や野菜、内臓肉などにガラクトースが含まれている場合があり、これらの食品も避ける必要があります。

急性期には感染症や腎機能障害が見られる場合があり、点滴や抗生物質の使用、必要に応じた透析などが行われます。
また、慢性的な神経症状や卵巣機能不全などの合併症もあるため、長期的な経過観察と医療機関との連携が不可欠です。

ガラクトース血症の治療は、生涯にわたる食事療法が基本となります。食事療法を継続することで、ガラクトースの蓄積を防ぎ、合併症のリスクを減らすことができます。
食事療法を中断したり、自己判断で制限を緩めたりすると、症状が悪化する可能性があります。
定期的な検査を受け、医師や栄養士の指導を受けながら、適切な食事療法を継続することが、長期的な健康維持のために重要です。

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症になりやすい人・予防の方法

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症は、遺伝性の疾患であるため、家族歴が重要なリスク要因となります。
両親から受け継いだ遺伝子の変異が原因で発症するため、家族のなかにガラクトース血症の方がいる場合、子どもがこの病気を持つ可能性が高まります。
もしご家族にガラクトース血症の方がいる場合は、遺伝カウンセリングを受け、ご自身のお子さんがこの病気を受け継ぐリスクについて詳しく知ることが重要です。
遺伝カウンセリングでは、遺伝子検査の結果をもとに、病気のリスクや予防策について専門家からアドバイスを受けることができます。

ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ欠損症を予防するための直接的な方法はありません。
しかし、リスクを評価し、早期発見につなげるための手段として、出生前診断や遺伝カウンセリングが有効です。
発症後は、合併症予防のために、食事療法と定期的な検査が不可欠です。
生涯にわたり牛乳や乳製品・ガラクトースを含む食品を完全に避けるガラクトース制限食を厳守すること、定期的に受診し血液検査や尿検査などを行いガラクトースの代謝状態や合併症の有無を確認することが大切です。

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