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赤外線障害
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

赤外線障害の概要

赤外線障害は、過度に赤外線に曝露されることで、目や皮膚を中心に生じる健康被害です。

赤外線は太陽光など自然界にも存在し、通常の範囲であれば人体に大きな影響はありません。しかし長時間または高強度の赤外線に曝露すると、様々な障害を引き起こすことがあります。

赤外線障害は、出現した症状に応じて、点眼薬や外用薬を使って治療をします。曝露量によっては全身的な治療を施す場合もあります。

とくに赤外線を扱う特殊な環境で働く人は、一般の人よりも赤外線障害のリスクがあるため、適切な防護措置が欠かせません。

赤外線障害の原因

赤外線障害は過剰な赤外線への曝露によって引き起こされます。

赤外線は主に熱エネルギーとして使用するもので、赤外線ヒーターや溶鉱炉、特定の産業用機器などが発生源です。

赤外線源との距離が近すぎる、曝露時間が長い、防護服を正しく使用していない、などの条件が重なると、赤外線障害の発症リスクが高まります。

赤外線障害の前兆や初期症状について

赤外線障害は目や皮膚に対する症状をはじめ、疲労感やめまいといった全身的な症状も引き起こします。

目の症状

目の症状は充血や異物感、痛みなどです。視力低下やまぶしさといった白内障のような症状や、目の疲れを感じることもありますし、赤外線白内障を発症する可能性があります。一方、短時間の曝露では眼精疲労や一時的なまぶしさ、視力低下を引き起こすこともあります。

とくに溶接作業中に発生する「溶接アーク光」に曝露した場合、激しい痛みや涙の過剰分泌、まぶしさなどの症状が現れることがあります。

皮膚の症状

皮膚の症状としては赤みや熱感、軽度の腫れなどがみられます。長時間の赤外線曝露によって皮膚の深部まで熱が浸透すると、低温熱傷(慢性熱傷)を引き起こすことがあります。長時間の赤外線曝露によって皮膚の深部まで熱が浸透すると、低温熱傷(慢性熱傷)を引き起こすことがあります。

全身症状

全身症状としては頭痛や疲労感、めまい、軽度の吐き気などが出現することがあります。これらは熱中症との区別が難しい場合があるため、正確な鑑別が求められます。

赤外線障害は赤外線に対する曝露の強度や時間、影響を受けた部位によってさまざまな形で現れます。

赤外線障害の前兆や初期症状は一時的なものが多いですが、繰り返し曝露されることで症状が重症化する可能性があります。

日常的に赤外線を扱う環境で働く人は症状の出現に気を付けて、曝露された場合は早い段階で適切に対処するよう心がけましょう。

赤外線障害の検査・診断

赤外線障害は目と皮膚の検査を中心に、症状の経過や赤外線への曝露歴によって診断します。

目の検査

目の検査では細隙灯顕微鏡検査(さいげきとうけんびきょうけんさ)によって、角膜の損傷や水晶体の混濁の有無などを観察します。

眼底検査では網膜の状態を評価し、赤外線による網膜の熱傷の有無を確認します。

皮膚の検査

皮膚の検査では赤みや熱感、腫れの状態をくわしく観察します。他の皮膚疾患との鑑別のために、必要に応じて皮膚の組織を採取して調べることもあります。

その他

身体的な検査以外では作業環境の測定が重要です。職場での赤外線の発生源や強度を測定し、曝露量を評価します。また、赤外線への曝露歴や職業歴、防護具の種類などの情報は診断の手がかりとなります。

軽度の赤外線障害であれば一時的な症状で済む場合もありますが、重度の場合は長期的な治療や経過観察を要することもあります。

早期発見や早期治療が予後改善につながるため、気になる症状を感じた場合は速やかに医療機関を受診しましょう。

赤外線障害の治療

赤外線障害の治療は赤外線への曝露を避けることを中心に、組織を回復させる治療をおこないます。

目の治療

白内障を引き起こしている場合は、手術により水晶体の白濁を取り除きます。点眼薬を使用して、目の不快感や炎症を緩和する場合もあります。

皮膚の治療

皮膚組織に対しては、軽度の場合は冷却や保湿が基本です。熱感や炎症を抑えるための外用薬を使用することもあります。

重度の火傷のような症状がある場合は、適切な創傷ケアや皮膚科医による専門的な治療を要する場合もあります。

全身に対する治療

全身症状が現れている場合は、十分な水分補給と休息が重要です。頭痛や倦怠感に対しては適切な鎮痛剤を投与することもあります。熱中症の症状をともなう場合は、体温や電解質バランスの管理もおこないます。

慢性的な赤外線障害に対しては、長期的な管理計画が必要になることがあります。定期的な検査と経過観察をおこない、組織の変化や合併症の有無を確認します。

これら各組織に対する治療を施すことと同時に、赤外線への再曝露を避けることが不可欠です。職業的に曝露される可能性がある場合は、適切な防護具の使用や作業環境の改善などが欠かせません。

赤外線障害は適切な治療によって回復するケースが多いですが、重度の場合や繰り返し曝露される場合は、長期にわたる治療を要することもあるため注意が必要です。

赤外線障害になりやすい人・予防の方法

赤外線障害になりやすい人は、職業的に赤外線に曝露される機会が多い人です。製鉄所や溶接作業者、ガラス工場の従業員、パンなどの高温の炉を扱う調理師などが該当します。

目の基礎疾患がある人や、目の保護機能が低下している高齢者も赤外線の影響を受けやすいといえます。

皮膚に関しては、もともと皮膚が薄い人や日焼けしやすい肌質の人、皮膚疾患を持つ人などは赤外線による皮膚障害のリスクが高い可能性があります。

予防の基本は、赤外線への不必要な曝露を避けることです。

職業上の曝露が避けられない場合は、適切な防護具の使用が必須です。目をはじめとした顔全体を保護するためには、専用のフェイスマスクやゴーグルを使用することで赤外線の曝露を減らせます。

皮膚を保護するためには適切な作業着や手袋などを使用します。高温環境での作業時には、休憩時間の確保や水分補給も予防の重要なポイントです。

また職場環境の改善も重要な予防策です。赤外線源の周囲に遮蔽物を設置したり、作業区域を適切に区画したりすることで、不必要な曝露を減らせます。

定期的な作業環境の評価や測定をおこない、赤外線の発生状況をモニタリングすることも重要です。

そして定期的な健康診断を受け、変化や症状を早期に発見することが重要です。症状に気がついた場合は、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。

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