リンパ管奇形
山田 克彦

監修医師
山田 克彦(佐世保中央病院)

プロフィールをもっと見る
大分医科大学(現・大分大学)医学部卒業。現在は「佐世保中央病院」勤務。専門は小児科一般、小児循環器、小児肥満、小児内分泌、動機づけ面接。日本小児科学会専門医・指導医、日本循環器学会専門医。

リンパ管奇形の概要

リンパ管奇形は、リンパ管の形成に異常が生じることによって起きる先天性の病気です。リンパ管に大小さまざまな嚢胞(のうほう:袋状のもの)が発生します。

新生児期や乳児期に首や顔、脇の下や体幹などの皮下腫瘤として発見されるケースが多く、成長とともに徐々に大きくなることもあります。

リンパ管奇形が発生する場所によっては身体に大きな影響はない場合もありますが、首や顔周りに巨大な腫瘤ができた場合は気道や食道を圧迫し、呼吸状態や摂食機能の低下を招く危険があります。

リンパ管奇形の程度や場所によって硬化療法(病変内に薬剤を投与し縮小させる方法)や手術療法などから治療方法を選択します。

これらの治療により日常生活に支障がない状態を目指しますが、リンパ管奇形ができる場所や状態によっては外見上に問題が残ったり、継続的な呼吸管理を要したりする場合があります。

なお、リンパ管奇形は良性の腫瘤であり、がん化することはないとされています。

リンパ管奇形の原因

リンパ管奇形は、胎児期にリンパ管が形成される過程において何らかの異常が生じることが原因で発症すると考えられていますが、詳しい発症メカニズムは分かっていない点も多いです。近年の研究により、PIK3CAという遺伝子の異常との関連が示唆されています。

発症の予測は現時点では難しく、他の目的のために行った検査で偶然発見されるケースもしばしばあります。

生活習慣や環境的な要因、遺伝との関連性は明らかになっていないため、予防法が確立されていないのが現状です。

リンパ管奇形の前兆や初期症状について

リンパ管奇形の主な症状は身体の一部に腫瘤が現れることです。首や顔、脇の下や体幹に腫瘤ができ、柔らかな隆起した皮下腫瘤として認められる場合が多いです。

腫瘤は基本的には痛みや熱感を帯びることは少ないですが、感染が生じると腫れが大きくなり、痛みや発熱、発赤をともなうことがあります。

打撲や外傷によって急に腫れが増大することもあるため、注意が必要です。

成長とともにゆっくりと大きくなる場合や、大きさが変化しないまま経過する場合などにおいては、急な治療を必要としないケースがあります。

しかし、首や顔に巨大な腫瘤ができた場合は、呼吸困難や嚥下(えんげ)困難に陥る可能性があるため、早期の治療が求められるケースもあります。

また、腫瘤は左右非対称で形成され外見上のバランスを欠くこともあり、整容性が問題となることも少なくありません。

リンパ管奇形の検査・診断

リンパ管奇形の診断は視診や触診によって腫れ方の特徴や場所、大きさや柔らかさなどを確認します。超音波検査やCT検査、MRI検査などの画像検査も組み合わせて診断します。

超音波検査では、リンパ管奇形に特徴的な大小さまざまな多房性の嚢胞の有無や大きさなどを確認します。

CT検査やMRI検査では、リンパ管奇形の広がりや深さだけでなく周辺組織への影響を確認します。とくに手術を検討する場合は、治療計画を立てる上で重要な情報となります。

感染や炎症が生じている場合は、程度を調べるために血液検査を行うこともあります。

リンパ管奇形の治療

リンパ管奇形の治療は症状の程度や部位、年齢などを考慮して硬化療法、手術療法、薬物療法を組み合わせて行います。

硬化療法

嚢胞中に硬化剤という薬剤を注入し、腫瘤を固めて縮小する治療です。穿刺(せんし:針を刺すこと)が可能で、周辺組織の損傷リスクが少ない部位に適応されます。

数週間かけて腫瘤を小さくしたあと、手術によって切除することもあります。

手術療法

呼吸や摂食に影響を与える部位にある腫瘤ができている場合は、腫瘤の切除を検討します。

腫瘤の大きさや状態によっては周辺の血管や筋肉などの組織を損傷するリスクもあるため、慎重な判断を要します。

薬物療法

リンパ管奇形を含むリンパ管疾患の治療に効果が期待できる薬剤を用いる方法です。ステロイドや抗がん剤を用いる場合もあります。

いずれの治療法を行う場合も感染予防や定期的な経過観察が重要です。また、治療後も再発する可能性があるため長期的なフォローが必要です。

リンパ管奇形は腫瘤ができる場所によっては外見上に問題を抱えることもあるため、精神的なサポートも欠かせません。

リンパ管奇形になりやすい人・予防の方法

リンパ管奇形は胎児期の発生過程で起こる先天性の病気であり、明確な原因は解明されていません。

生活習慣や環境的な要因が関連していたり、親から子どもへ遺伝したりすることもないため、リンパ管奇形になりやすい人を予測することは困難であるのが現状です。

リンパ管奇形をすでに発症している場合、何らかの菌によって感染症が起きると症状が悪化する可能性があるため、日常的な手洗いやうがいなどの感染予防が重要です。

また、腫瘤がある部位を強く打たないように注意することも大切です。

リンパ管奇形による腫瘤ができる場所によっては呼吸困難になったり、食事摂取が難しくなったりすることもあるため、日頃から子どもの様子をよく観察するようにしましょう。

また、リンパ管奇形の診断を受けた後は定期的な診察を受けることが重症化の予防につながります。

成長期の子どもの場合、身体の成長にともなって症状が変わる可能性があるため、医師による継続的な経過観察が重要です。


関連する病気

  • 静脈奇形
  • 動静脈奇形
  • リンパ管腫症
  • ゴーハム病
  • 単純性血管腫
  • ポートワイン母斑
  • 混合型血管奇形

この記事の監修医師