

監修医師:
宮島 徹(北海道大学大学院医学研究院血液内科学講座)
目次 -INDEX-
慢性活動性EBウイルス感染症の概要
慢性活動性EBウイルス感染症は、EBウイルスが主にT細胞・NK細胞といった免疫細胞に持続感染して増え続け、発熱・リンパ節の腫れ・肝機能異常などの症状が長く続く病気です。進行すると消化管潰瘍、冠動脈瘤、間質性腎炎、血管炎、脳や末梢神経の障害など、さまざまな臓器合併症が起こりえます。経過中にEBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症を合併したり、T/NK細胞リンパ腫や白血病(血液のがん)へ移行することがあります。この病気は、東アジア(日本・韓国・中国北部)で多く報告され、日本では年間の新規発症は約50〜100例と非常にまれです。小児・若年成人に多い一方で、40代以降の発症例もあります。自然軽快する例の報告もありますが例外的で、全身症状が目立つ、または主要臓器の合併症がある場合は治療が必要です。まず炎症や病勢を抑える薬物療法を行い、根治を目指す治療として同種造血幹細胞移植を検討します。
慢性活動性EBウイルス感染症の原因
EBウイルスは、最初に発見されたヒトの発がんウイルスです。多くの人が子どもの頃に感染し、その後はB細胞に潜んだまま一生を通じて潜伏します。通常は免疫が働くため、EBウイルスが潜伏したB細胞が直接問題を起こすことはまれです。ところが、極めてまれにEBウイルスがT細胞やNK細胞に入り、これらの免疫細胞ブレーキを失って増え続けることがあります。その結果、長引く発熱や臓器の炎症を引き起こします。これが慢性活動性EBウイルス感染症の本質で、単なる感染症ではなく、「ウイルスが入り込んだ免疫細胞が異常に増える血液の病気」という位置づけです。なぜ一部の人でこの状態が生じるのか、現時点では完全には解明されていません。
慢性活動性EBウイルス感染症の前兆や初期症状について
初期には発熱が目立ち、だるさ・リンパ節の腫れなどが続きます。経過中に消化管潰瘍、冠動脈瘤、間質性腎炎、血管炎、脳や末梢神経の障害などの臓器合併症が現れることがあります。皮膚では、日光で悪化する水疱性の皮疹(種痘様水疱症)や、蚊に刺されると強く腫れる(重症蚊刺アレルギー)ことがあります。ときに血球貪食症候群で急激に発症することもあります。
慢性活動性EBウイルス感染症の検査・診断
診断基準(厚生労働省研究班、2022年)では、以下をすべて満たすことが必要です。
- 伝染性単核症に類似した症状が3か月以上続く・繰り返す(発熱、リンパ節腫脹、肝脾腫など)
- 末梢血や組織でEBウイルス量が多いことを確認
- T細胞またはNK細胞にEBウイルスに感染していることを証明
- 他の疾患では説明できない(免疫不全、自己免疫・炎症性疾患、膠原病、他の悪性リンパ腫などを除外)
このほか、血液検査、超音波やCTなどの画像検査、必要に応じて皮膚や消化管の生検、骨髄検査を組み合わせて、臓器の状態や病勢を評価します。
慢性活動性EBウイルス感染症の治療
同種造血幹細胞移植が根治を目指す治療です。移植前には、ステロイド、免疫抑制薬(シクロスポリンA)、エトポシドやCHOP療法などの化学療法を用いて、病勢を落ち着かせます。薬物療法単独では長期寛解が得られにくいため、同種造血幹細胞移植へつなぐ「橋渡し治療」として位置づけられます。治療の詳細は、年齢・臓器障害・病勢などにより専門施設で個別に判断されます。
慢性活動性EBウイルス感染症になりやすい人・予防の方法
EBウイルス自体は成人のほとんどが一度は感染しますが、本性の発症は極めてまれです。日常生活で有効とされる特別な予防法は確立していません。気になる症状が3か月以上続く・くり返すときは、血液内科などの専門医療機関で評価を受けることが重要です。
参考文献
- Yonese I, et al: Nationwide survey of systemic chronic active EBV infection in Japan in accordance with the new WHO classification. Blood Adv 2020; 4(13): 2918-2926
- Kawada J, et al: Updated guidelines for chronic active Epstein–Barr virus disease. Int J Hematol 2023; 118(5): 568-576
- 日本小児感染症学会 監修:慢性活動性EBウイルス病とその類縁疾患の診療ガイドライン2023




