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成長ホルモン分泌不全性低身長症
佐伯 信一朗

監修医師
佐伯 信一朗(医師)

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兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学病院産婦人科、兵庫医科大学ささやま医療センター、千船病院などで研鑽を積む。兵庫医科大学病院産婦人科 外来医長などを経て2024年3月より英ウィメンズクリニックに勤務。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会健康スポーツ医、母体保護法指定医。

成長ホルモン分泌不全性低身長症の概要

成長ホルモン分泌不全性低身長症とは、脳の奥にある「下垂体(かすいたい)」という部分から出る成長ホルモンが、生まれつきまたは病気やけがの影響で十分に出なくなることで、身長の伸びが悪くなる病気です。日本では1975年から治療が始まり、今では注射の種類も進化し、患者さんの生活に合わせて選べるようになってきました。

成長ホルモン分泌不全性低身長症の原因

この病気の原因は、生まれつきの場合と、生まれた後に起こる場合があります。

生まれつきの場合には、赤ちゃんがおなかの中にいるときの脳や下垂体の発育に問題があったり、遺伝子(体の設計図)の異常があることが知られています。これらの問題により、成長ホルモンだけでなく、ほかのホルモンも出にくくなることがあります。

一方、生まれた後に起こる場合の原因としては、頭を強く打ったり、脳の手術を受けたり、脳の腫瘍(できもの)やその治療、放射線治療、髄膜炎(ずいまくえん)や脳炎(のうえん)などの感染症などが関係します。特に脳の下垂体の近くにできる「頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)」という腫瘍は、子どもに多くみられ、成長ホルモンの分泌に強く影響します。

また、これといった原因が見つからない「特発性(とくはつせい)」というタイプもあります。検査をしても下垂体に異常がなく、他のホルモンには問題がない場合が多いです。原因を正確に突き止めるためには、丁寧な問診や、画像検査、必要であれば遺伝子の検査なども行います。

成長ホルモン分泌不全性低身長症の前兆や初期症状について

この病気は、赤ちゃんや小さなお子さんではすぐに気づかれないことがあります。初期のサインとしては、「身長が伸びない」「お友達よりも明らかに小さい」といったことが多く、お子さんの成長曲線を見て医師が異常に気づくこともあります。

また、重いタイプのこの病気では、生まれてすぐに低血糖(血糖値が低い状態)になったり、黄疸(おうだん)がなかなか引かなかったりすることもあります。さらに、思春期がなかなか始まらない、筋力が弱い、疲れやすいなどの症状も見られることがあります。

成長ホルモン分泌不全性低身長症の検査・診断

この病気かどうかを調べるには、いくつかの段階を踏んで慎重に判断します。まずは身長と体重の記録から、お子さんの成長が年齢相応かどうかを確認します。身長が基準よりかなり低い場合や、1年であまり伸びていないような場合には、次のステップに進みます。

次に行うのが、「成長ホルモンをどれくらい出せるか」を調べる検査です。これは、特別な薬を使って体に刺激を与え、その後に血液を数回採って、成長ホルモンがどれだけ出ているかを測ります。2種類以上の方法で調べるのが一般的です。

また、成長ホルモンの働きを助ける「IGF-I(アイジーエフ・ワン)」という物質も一緒に調べます。これも血液検査でわかりますが、栄養状態などにも影響されるので、これだけで診断を決めることはできません。

さらに詳しく調べるために、「頭のMRI検査」を行い、下垂体の形に異常がないかや、腫瘍ができていないかを確認します。また、手のレントゲンを撮って骨の年齢(骨の成長具合)を確認する検査もよく行われます。必要に応じて、遺伝子の検査や、他のホルモンの状態を調べる検査も加えます。

これらの検査結果をもとに、専門の医師が総合的に判断し、成長ホルモンが不足しているかどうかを診断します。

成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療

この病気の治療は、体に不足している成長ホルモンを注射で補う方法です。注射は皮膚の下に打つもので、毎日または週に1回打つタイプがあります。最近では週に1回で済む薬も使えるようになってきており、注射の回数が減ることで、お子さんやご家族の負担が少なくなることが期待されています。

治療の効果を高めるためには、できるだけ早く治療を始めることが大切です。日本では注射の量に上限があり、海外と比べて少ない量で治療しているため、思ったほど身長が伸びないこともあります。そのため、思春期に入るまでにどれだけ身長を伸ばしておけるかが、最終的な身長を左右するといわれています。

また、身長の伸びをさらに良くするために、思春期を遅らせる薬や、筋肉や骨を丈夫にする薬を一緒に使うこともあります。ただし、これらの治療には副作用や心のケアが必要になることもあるため、慎重に判断されます。

成長ホルモン分泌不全性低身長症になりやすい人・予防の方法

この病気は、原因の多くが遺伝や体のつくりに関係しているため、はっきりとした予防方法はありません。ただし、出産時にトラブルがあった赤ちゃんや、頭を強く打った経験があるお子さん、脳の病気をしたことがあるお子さんでは、成長の様子をよく見ていくことが大切です。

また、保護者の方が「なんだか小さいな」「成長が遅いかも」と感じたときには、早めに小児科や専門の医師に相談することで、病気の発見と治療の開始が早まり、身長の伸びにも良い影響があります。

参考文献

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