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脂肪肉腫
松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

脂肪肉腫の概要

脂肪肉腫とは、悪性軟部腫瘍の一種です。悪性軟部腫瘍のうち、約15~20%は脂肪肉腫が占めていると報告されています。
悪性軟部腫瘍とは、筋肉や脂肪、神経など軟部組織にできる悪性腫瘍のことです。脂肪細胞に似た組織が異常に増殖し、腫瘍になります。
胃がんや大腸がんのようなほかのがんと違い、発生頻度はそこまで高くなく、比較的まれながんです。

良く発生しやすい部位は、腕や太もも、胴体、頭頸部などが知られています。このほか、お尻や背中にできることもあり、痛みを感じにくいことが多いです。しかし、腫瘍が大きくなる、あるいは腫瘍ができる場所によっては痛みを伴う場合もあります。

WHO(世界保健機関)では、脂肪肉腫を次の5種類に分類しています。

  • 高分化型脂肪肉腫(異型脂肪腫様腫瘍)
  • 脱分化型脂肪肉腫
  • 粘液型脂肪肉腫
  • 多形型脂肪肉腫
  • 混合型脂肪肉腫

もっとも多く見られるのが、高分化型脂肪肉腫(異型脂肪腫様腫瘍)です。悪性度は低いとされています。しかし、増殖がゆっくりなため良性の脂肪腫としっかり見極めることが重要です。

脱分化型脂肪肉腫は後腹膜に発生しやすいことで知られています。転移しやすく予後が悪いため、早期発見・早期治療が大切です。
粘液型脂肪肉腫は、腫瘍の内部に粘液質の物質が含まれていることがあります。四肢にできやすいことが特徴です。

多形型脂肪肉腫は悪性度が高く、こちらも四肢にできやすいことで知られています。短期間で腫瘍が大きくなりやすく、転移しやすいため注意しなければなりません。
混合型脂肪肉腫は、粘液型と高分化型、脱分化型など複数種の脂肪肉腫が見られる状態のことで、高齢者によく見られます。

脂肪肉腫

脂肪肉腫の原因

脂肪肉腫の原因は、いまだ解明されていません。ですが、脂肪肉腫のうち脱分化型脂肪肉腫については原因の一部が明らかになりつつあります。

脱分化型脂肪肉腫をもつ115の症例でゲノム解析を行ったところ、脱分化型脂肪肉腫の発生や進展に関わっている遺伝子異常が発見されました。ゲノム解析の結果、コピー数の異常が脱分化型脂肪肉腫の発症につながる遺伝子異常を引き起こしていることが分かりました。

また、症例の約8%でDNM30Sの融合遺伝子が存在することも発見されました。そのほかの脂肪肉腫については、遺伝子異常が関与しているのかは、まだ分かっていません。

現時点では、染色体異常によって遺伝子情報が変化することが脂肪肉腫と関係しているのではと考えられています。

脂肪肉腫の前兆や初期症状について

脂肪肉腫は、前兆や初期症状がほとんどないため、見逃されてしまうこともあります。
ただし、腫瘍が大きくなった場合は痛みや腫れ、しこりなどの症状が現れることがあります。

とくに体の内側の深いところに脂肪肉腫ができた場合は、かなり大きくならないと気づかないことも少なくありません。

一般的に、脂肪肉腫の大きさが5cm以上になると、しこりを自覚し、受診される方が増えます。ただし、太ももに発生した場合は気づきにくいため、10cmほどの大きさになってようやく受診される方もいます。

どの型においても自覚症状が乏しいことから、健康診断や人間ドックなどの画像検査で偶然発見されることも少なくありません。

脂肪肉腫の検査・診断

脂肪肉腫が疑われる場合、まずは触診や視診によって症状を確認します。その後、より精密な結果を得るために画像検査や血液検査などを行うことが一般的です。

触診、視診

脂肪肉腫は、触るとゴムのような感触で、動きづらいことが特徴です。触診や視診は、医師がしこりの状態を触ったり見たりして確認する検査です。

一つの判断材料にはなりますが、触診や視診だけで確定診断をすることはありません。

血液検査

血液検査をすることで、脂肪肉腫かどうかを見分ける判断がしやすくなります。ある程度の大きさがあり悪性度が高い脂肪肉腫の人では、血液中に含まれているLDHやCRPなどの値が上昇していることがあります。

ただし、血液検査も脂肪肉腫の確定診断をするものではありません。全身状態を把握するために行われます。

画像検査

画像検査では、CT検査やMRI検査、超音波検査、PET検査などが行われます。

CT検査はX線を照射して体内の断面図を取得する検査です。脂肪肉腫の大きさや位置、浸潤の有無などが分かります。

MRI検査も体内の断面図を取得できる検査です。こちらはX線照射は行わず、磁場とラジオ波を用いて画像を取得します。CT検査もMRI検査も腫瘍の広がりや湿潤を観察するのに有効です。

超音波検査は超音波を使ってリアルタイムで患部の観察ができます。
PET検査は、CT検査やMRI検査とは違い脂肪肉腫の活動性も分かることが特徴です。

生検

生検とは、腫瘍の一部または全体を採取して顕微鏡で詳細に調べる検査のことです。脂肪肉腫の確定診断に用いられます。

腫瘍に細い針を刺して病原を採取する方法、手術で腫瘍の一部を採取する方法があります。

脂肪肉腫の治療

脂肪肉腫の治療法としては、手術を行うことが一般的です。手術での切除が難しい場合や手術との併用で、放射線治療や化学療法が行われることもあります。

手術治療

切除が可能な脂肪肉腫の場合は、外科的手術が第一選択となります。手術を行う際、脂肪肉腫が周りの組織に浸潤している可能性も考え、周囲の組織と一緒に切除することが多いでしょう。

周囲の組織も一緒に切除することを広範切除といいます。広範切除は再発予防にも効果があるため、正常な組織も切除する方法をとることが原則です。

放射線治療

手術のみで切除するのが難しい場合や手術で十分に切除できなかった場合には、放射線治療が検討されることもあります。放射線治療は、手術の前に行われることもあれば後に行われることもあります。

化学療法

脂肪肉腫の型や転移の有無によって、化学療法も検討されます。化学療法に用いられる治療薬は、アドリアマイシンが現在のところ第一選択薬です。

脂肪肉腫になりやすい人・予防の方法

脂肪肉腫になりやすい人の特徴は、現在のところ分かっていません。

軟部肉腫は10万人あたり約3人しか発症しない珍しい病気のため、研究があまり進んでいないのが現状です。
ほかのがんと違い、明らかになっている予防法もありません。


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