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A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の概要

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、学童期の小児に好発する疾患です (参考文献 1)。小さい子の病気というイメージがあるかもしれませんが、大人でも発症します (参考文献 1) 。咽頭炎の原因にはいろいろあり、それらとの鑑別が必要になりますが、溶連菌による咽頭炎の特徴としては①発熱がある②咳がない③扁桃に滲出物が付着している/ 腫れている④首の前のリンパ節が腫れていて痛いというものがあります (参考文献 3)。
予防には手洗いなどの基本的な感染対策や、感染者との接触を避けることが有効です (参考文献 1)。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の原因

この疾患はその名の通り、A群溶血性レンサ球菌 (以後、溶連菌と呼びます) が原因となります。この溶連菌は今回のテーマである咽頭炎のほかにも蜂窩織炎やとびひ (伝染性膿痂疹) といった疾患の原因菌であるほか、近年話題になっている劇症型溶結性レンサ球菌感染症を引き起こすこともあります (参考文献 1) 。
A群溶結性レンサ球菌咽頭炎は患者との接触により感染するとされていて、学校などの集団生活により感染が広がることがあります (参考文献 1)。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の前兆や初期症状について

溶連菌感染症では突然の発熱に加えて全身倦怠感、咽頭痛が現れます (参考文献 1) 。口蓋扁桃に白いゴミのようなもの (白苔) がついたり、口蓋垂 (のどちんこ) の前あたりにポツポツと小さな出血斑が見られたり、苺舌といって舌がイチゴのようになることがあります (参考文献 1) 。猩紅熱 (しょうこうねつ) では発熱後1~2日程度で体幹に赤いポツポツができたり、体幹が日焼けしたような見た目になったりして、腋の下や鼠径部は紙やすりのような感触になることがあります (参考文献 1)。

気になる症状があれば、お近くの小児科や内科を受診しましょう。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の検査・診断

咽頭炎自体は溶連菌のみならず、他のウイルスや細菌による症状である場合や、感染症による症状ではないこともあり、原因によって治療方針も異なってきます (参考文献 2) 。

A群溶連菌による咽頭炎は学童期の疾患のイメージをもたれることが多く、実際にこの年代に多いのですが、5歳から15歳の咽頭炎全体でA群溶連菌が原因のものの割合は 15~30% といわれています (参考文献 2)。

急性の咽頭炎の原因として最も多いものはウイルス感染症で、ウイルス感染症であると判断される場合には対症療法のみで様子をみることもあります (参考文献 2)。
「喉が痛くて病院にいったのだから、抗菌薬を出してもらえるだろう」と考えるかもしれませんが、菌とウイルスは全く違うので、ウイルス性の咽頭炎に抗菌薬を服用する意味は無いことに注意してください。

溶連菌による咽頭炎の診断に用いられる「センタースコア」には次のような項目があり、該当する項目が多いほど溶連菌感染症である可能性が高いことが知られています (参考文献 3)。その点数によって、溶連菌の検査・治療をしない、溶連菌の検査をして結果に応じて溶連菌に効く治療を始める、検査なしでも溶連菌への治療を開始するなどと、対応が変わってきます(参考文献 3) 。

  • 発熱がある
  • 咳がない
  • 扁桃に滲出物が付着している、または腫れている
  • 首の前のリンパ節が腫れていて痛い

溶連菌感染症の検査をする場合は喉の奥の咽頭を綿棒でこすり、迅速検査キットで抗原の有無を判定することが一般的です (参考文献 1)。血液検査で溶連菌関連のマーカーの数値を確認することもあります (参考文献 1) 。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の治療

検査の結果溶連菌感染症による咽頭炎と判断されれば、抗菌薬を中心とした治療が行われます (参考文献 4)。使う薬剤はペニシリン系の薬剤がベースとなりますが、ペニシリンへのアレルギーがある方や経過によっては違う種類の抗菌薬を使って治療していきます (参考文献 1, 4)。
抗菌薬は10日程度継続して投与する必要があるとされています (参考文献 1, 4)。ほとんどの場合、発熱やのどの痛みは1~3日程度で改善するとされていますが (参考文献 4) 、症状が良くなったからと自己判断で内服を中断せず、医師の指示に従ってしっかりと処方分を飲み切るようにしてください。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎になりやすい人・予防の方法

扁桃炎は感染症ですから、感染した人が近くにいる環境や、多くの人が集まり接触感染や飛沫感染のリスクが高い環境は発症のリスクとなります (参考文献 1)。

予防のためには手洗いなどの手指衛生や、マスクの着用などの基本的な感染対策が有効となります (参考文献 1, 4)。
感染拡大の予防には患者自身の手洗いが重要になってきます (参考文献 4) 。咽頭炎の症状がある人もそうでない人も、咳や鼻をかんだ後、食事をとるときなど、こまめに手洗いをしましょう。
COVID-19 (新型コロナ感染症) ではアルコールによる手指衛生が有効だったこともあり、その完便さも含めてアルコール消毒だけで済ませてしまう方もいるかもしれませんが、しっかりと石けんと水道水を使って手を洗いましょう。


参考文献

  • 1.国立感染症研究所. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは
  • 2.UpToDate. Group A streptococcal tonsillopharyngitis in children and adolescents: Clinical features and diagnosis
  • 3.Fine AM, et al . Large-scale validation of the Centor and McIsaac scores to predict group A streptococcal pharyngitis. Arch Intern Med. 2012 Jun 11;172(11):847-52. doi: 10.1001/archinternmed.2012.950. PMID: 22566485; PMCID: PMC3627733.
  • 4.UpToDate. Treatment and prevention of streptococcal pharyngitis in adults and children

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