監修医師:
大坂 貴史(医師)
ロタウイルス(こども)の概要
ロタウイルス感染症はロタウイルスに感染して起こる疾患です。ロタウイルスは主に乳幼児期に多い疾患で、5歳になるまでにほぼ全てのお子さんが感染するとされています (参考文献 1, 2) 。入院が必要になる場合も多く、5歳までにロタウイルス関連の胃腸炎で入院する人の割合は15~43人に1人、その中の多くは2歳以下という報告があります (参考文献 1) 。
症状として発熱、吐き気・嘔吐の後に下痢が現れ、通常1~2週間で症状は軽快しますが、一部では重度の脱水で入院が必要になったり、中枢神経系の後遺症が残る方もいます (参考文献 1) 。
ロタウイルスに感染した際の特別な治療はなく、下痢や嘔吐で身体の外へ出ていった水分を補うためにしっかりと水分を口から補給することや、経口摂取が難しい人は点滴で水分補給をしてもらうといった支持療法が中心になります (参考文献 1) 。
非常に感染力が強いウイルスなので、適切な対策をしても感染自体を完全に防ぐことは難しいですが、2回目以降の感染では症状が比較的軽いという特徴を利用して、ワクチン接種による重症化予防ができます (参考文献 1) 。
ロタウイルス(こども)の原因
ロタウイルス感染症はその名の通り「ロタウイルス」というウイルスに感染して起こる病気です。ロタウイルスの主な感染経路は人と人の間で起こり、便から排出されるウイルスが口から入って感染する糞口感染という形で伝染します (参考文献 1) 。ロタウイルスの感染力は非常に強く、ほんのわずかな数のウイルスの粒子でも感染するとされており、ロタウイルスに感染している子供に接触した成人のうち 30~50% が感染するとされています (参考文献 1) 。感染者の便を触った手を十分に洗わず食事すると感染するということはイメージしやすいかと思いますが、汚染された水や食べ物を触った手を介して感染が成立する可能性も指摘されています (参考文献 1) 。
ロタウイルス(こども)の前兆や初期症状について
2日程度の潜伏期間の後に発熱・吐き気・嘔吐の症状で発症し、1~2日経つと下痢が現れるというのが一般的な発症様式です (参考文献 1) 。
1~2週間の経過で回復することが多いですが、ロタウイルス感染症の脱水は、他の原因による胃腸炎に比べて重症度が高くなることが多く、次のような合併症につながることがあり、場合によっては死に至ります (参考文献 1) 。
- 重度の脱水によるショック
- 腎不全
- ロタウイルス脳炎・脳症といった中枢神経の病気:難治性のけいれんが特徴で約4割に後遺症が残ります
ロタウイルス感染症では、初回の感染で重症化することが多いことが知られています (参考文献 1)。5歳までにロタウイルス関連の胃腸炎で入院する人の割合は15~43人に1人とされており、その中の多くは2歳以下という報告があります (参考文献 1) 。
入院が必要となる場合も多いので、お子さんに気になる症状があればすぐに近くの内科を受診しましょう。
ロタウイルス(こども)の検査・診断
ロタウイルスの検査で最も用いられているのは、便の中のロタウイルス抗原を検出する迅速診断検査で、およそ15分程度で結果が判明します (参考文献 1) 。
ロタウイルス(こども)の治療
ロタウイルスの感染症に対する特別な治療法はなく、下痢やその他の症状に対する対症療法が軸になります (参考文献 1) 。先ほど紹介したように脱水がひどくなる場合が多いので、患者さんの状態に合わせて経口での水分摂取や、口から飲めない場合には点滴をして、身体の中に十分量の水分を確保することが重要です (参考文献 1)。
小さなお子さんだと口から水を飲むことが難しくなってしまうことも多いかと思いますので、早めに近くの内科や小児科を受診しましょう。
「下痢の症状に対して下痢止めを使えばいいのでは?」と思うかもしれませんが、下痢止めを使うことでウイルスの排出が妨げられ、回復も遅くなってしまうことがあるので通常使用しません (参考文献 2) 。
ロタウイルス(こども)になりやすい人・予防の方法
ロタウイルス感染症は乳幼児期にかかりやすい病気で、その感染力の強さから、5歳までにほぼすべての子供がロタウイルスに感染するといわれています (参考文献 1, 2)。また、例年春先に流行のピークがあるとされています (参考文献 1)。
お子さんがロタウイルス感染症になった時には、オムツの処理の際に手袋着用や手洗いの徹底である程度は身を守ることはできますが、ロタウイルスの感染力があまりに強いので完全に予防することは難しいとされています (参考文献 1, 2) 。
ロタウイルス感染症には「初回感染時の症状が強く、2回目以降の感染では症状が比較的軽い」という特徴があります (参考文献 1) 。ロタウイルスに対するワクチン接種が生後6週からスケジュールされていますので (参考文献 1, 2) 、計画通りにしっかりお子さんにワクチン接種させることで重症化を予防できるといえるでしょう。