監修医師:
河辺 泰宏(医師)
インフルエンザB型の概要
インフルエンザ(influenza)は、インフルエンザウイルスによって起こる気道を中心とした急性感染症です。インフルエンザウイルスは、オルソミクソウイルス科に属するRNAウイルスで、A型、B型、C型ならびにD型に分類されますが、ヒトに典型的な症状を引き起こすのはA型とB型です。インフルエンザB型は、インフルエンザウイルスB型によって引き起こされ、主に冬季に流行し、飛沫感染および接触感染を介して迅速に伝播します。インフルエンザB型は、A型と比較して変異が少なく、特に免疫機能が未成熟な小児や免疫力が低下した高齢者に対して重篤な症状を呈することがあるため、適切な診断と治療が不可欠です。
インフルエンザB型の原因
インフルエンザB型の原因は、インフルエンザウイルスB型による感染です。このウイルスは、感染者がくしゃみや咳をすることで空気中に放出され、その飛沫を吸い込むことで他の人に伝播します。また、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることでも感染が成立します。ウイルスの感染力は高く、特に人が密集する環境で広がりやすい特徴があります。1個のウイルスは体内に入ると4時間で100個、8時間で1万個、24時間で100万個に増加して100万個になって初めて発症すると言われています。
インフルエンザB型の前兆や初期症状について
かぜ症候群(普通感冒)に比べて、発熱や倦怠感などの全身症状が強い特徴があります。感染症法によるインフルエンザ様疾患の定義としては、(1~3日間の潜伏期間の後に)①突然の発症、②高熱(38℃以上)、③上気道炎症状、④全身倦怠感の全てを満たす場合となっています。全身倦怠感の他に関節痛、筋肉痛などが現れ、鼻汁、咳などの上気道炎症状が続き、通常1週間程度で軽快します。関節痛は大人や年長児に多くみられ、筋肉痛、特に腓腹筋(ふくらはぎ)痛はインフルエンザB型に多く、尖足歩行といって一時的に痛みでつま先歩きしかできなくなることがあります。また、解熱した後1日程度平熱になった後に再び発熱する2峰性発熱を起こすことがあり、特に小児のインフルエンザB型で多くみられます。これらの症状を認めた時には、子どもであれば小児科、高齢者や基礎疾患のある方は専門医の診察を受けることが望ましいです。
インフルエンザB型の検査・診断
インフルエンザB型の診断には、従来の迅速診断キットを使用する方法に加え、AIを活用した新しい検査技術が登場しています。従来の迅速診断キットでは、鼻や喉の粘膜から採取した検体を用いてウイルス抗原を検出し、数分で結果を得ることができます。これにより、迅速な診断と治療が可能となります。さらに、最新のインフルエンザ検査機器では、咽頭の画像データや患者の体温、自覚症状などをAIが解析し、インフルエンザに特徴的な所見や症状を検出することが可能です。他にも、より詳しい検査として、血清抗体検査、ウイルス分離、遺伝子検出法があります。
インフルエンザB型の治療
インフルエンザ発症早期(48時間以内)に抗ウイルス薬を使用すると、病気の期間を半日から1日程度短縮できると言われ、肺炎などの合併症の減少、入院期間短縮、死亡率の減少などの効果があることも報告されています。治療には、以下の抗ウイルス薬が使用されます。
タミフル(オセルタミビル)
タミフルは飲み薬です。発症後48時間以内に服用することで、ウイルスの増殖を抑制して、症状の軽減と病気の進行を防ぐことが期待されます。5日間連続で服用することが必要です。
リレンザ(ザナミビル)
リレンザは吸入薬で、ウイルスの増殖を抑制します。吸入薬のため、気道に直接作用し、迅速に効果を発揮します。インフルエンザB型にも効果が高いという報告もあります。
イナビル(ラニナミビル オクタン酸エステル)
イナビルは吸入薬で、単回投与で効果を示します。長時間作用型のため、1回の吸入で効果が持続します。
ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)
ゾフルーザは、単回投与で効果を示す新しいタイプの抗ウイルス薬で、ウイルスの増殖を阻害することが特徴です。
ラピアクタ(ペラミビル)
ラピアクタは点滴静注による投与が必要で、特に重症患者や経口薬が困難な患者に対して使用されます。
これらの抗ウイルス薬を用いることで、インフルエンザB型の症状を軽減し、病気の進行を抑えることができます。治療を受ける際には、医師の指示に従い、適切なタイミングで薬を使用することが重要です。また、解熱鎮痛剤で症状を緩和し、十分な休養と水分補給を行うことも必要です。
インフルエンザB型になりやすい人・予防の方法
インフルエンザB型になりやすい人
インフルエンザB型にかかりやすく、重症化のリスクがあるのは、5歳未満(特に2歳未満)の幼児、65歳以上の高齢者、慢性疾患を持つ人、免疫力が低下している人、妊婦と出産後2週間以内の人です。こういった方は、インフルエンザが重症化するリスクが高く、予防が非常に重要です。
予防の方法
最も効果的な予防策は、毎年のインフルエンザワクチン接種です。
ワクチンは、インフルエンザウイルスに対する免疫力を高め、感染や重症化を防ぐ効果があります。加えて、手洗いやうがい、マスクの着用といった日常的な予防策も実施することが推奨されます。健康的な生活習慣を維持し、免疫力を高めることも重要な予防策となります。
参考文献
- 日本感染症学会:一般社団法人日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」.2019年10月24日.
- 日本感染症学会:日本感染症学会提言「今冬のインフルエンザに備えて 治療編〜前回の提言以降の新しいエビデンス〜」.2021年12月21日.
- Duval X, et al : Efficacy of oseltamivir-zanamivir combination compared to each monotherapy for seasonal influenza : a randomized placebo-controlled trial. PLoS Med 7 : e1000362. 2010.
- 高宮光:インフルエンザワクチンの有効率と接種率.インフルエンザ2019;20:177-178,