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ウィリアムズ症候群
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

ウィリアムズ症候群の概要

ウィリアムズ症候群(Williams syndrome)は、染色体の一部が欠失することで発症する遺伝性の疾患です。
主に7番染色体の長腕にある一部の遺伝子が欠失することで、身体的特徴や発達遅滞、学習障害、心血管疾患、特異な顔つき(「妖精様顔貌」とも呼ばれる)など、さまざまな症状が現れます。この病気は、1961年にニュージーランドの心臓専門医、ジョン・ウィリアムズによって初めて報告されました。
ウィリアムズ症候群は、約1〜2万人に1人の割合で発症する比較的まれな病気です。遺伝性疾患でありながら、多くの場合は家族歴がなく、自然発生的な染色体異常によって生じます。
一般的な特徴としては、知的障害を伴いながらも、音楽や社会的な交流に対して高い感受性を示すことがあります。特に、他者との関わりを好み、社交的で明るい性格を持つ傾向が見られるのが特徴です。

ウィリアムズ症候群の原因

ウィリアムズ症候群の主な原因は、7番染色体の長腕に位置する遺伝子群の一部が欠失することです。
この染色体異常は、親からの遺伝ではなく、ほとんどの場合自然に発生します。この遺伝子欠失が、ウィリアムズ症候群に特有のさまざまな症状を引き起こします。

1. 遺伝子の欠失

ウィリアムズ症候群では、約25~28個の遺伝子が7番染色体の一部で欠失しています。
その中でも、**エラスチン遺伝子(ELN)**が欠失していることが、この症候群に特徴的な心血管異常や皮膚の異常を引き起こすと考えられています。エラスチンは、血管や皮膚、結合組織に柔軟性を与えるタンパク質であり、その欠失により動脈硬化や高血圧、関節の硬直などが引き起こされます。

2. その他の欠失遺伝子

エラスチン以外にも、多くの遺伝子が欠失しており、それらが知的障害や発達遅滞、行動特性に影響を与えます。
例えば、LIMK1遺伝子は空間認知能力に関与しており、これが欠損することでウィリアムズ症候群の患者は空間認知に障害を抱えることが多くなります。

ウィリアムズ症候群の前兆や初期症状について

ウィリアムズ症候群は出生直後から特定の症状が現れることが多いですが、症状の現れ方は個人によって異なります。以下に、主な前兆や初期症状を紹介します。

1. 身体的特徴

ウィリアムズ症候群の子供は、特徴的な顔つきを持つことが多いです。この顔つきは「妖精様顔貌」とも呼ばれ、以下のような特徴が見られます。

  • 幅広い額
  • 短い鼻と鼻の先端の広がり
  • 大きな口と厚い唇
  • 小さな顎
  • ほうれい線が目立つ

これらの特徴は、成長とともに顕著になりますが、すべての患者に見られるわけではありません。

2. 心血管疾患

心血管系の異常は、ウィリアムズ症候群における最も重要な問題の一つです。特に、大動脈狭窄症や抹消肺動脈狭窄が一般的で、これにより心臓に負担がかかります。これらの症状は乳幼児期に診断されることが多く、治療が必要になる場合があります。また、高血圧や僧帽弁逸脱も多く見られます。

3. 発達遅滞と知的障害

ウィリアムズ症候群の子供は、全般的な発達遅滞が見られることが多く、言語や運動機能の発達が遅れる傾向にあります。知的障害の程度は軽度から中等度までさまざまで、学習能力や記憶力にも影響を与えることがあります。
しかし、言語能力やコミュニケーション能力に関しては比較的発達が早い場合もあり、明るく社交的な性格が特徴的です。

4. 感覚過敏

ウィリアムズ症候群の子供は、音や光に対して過敏な反応を示すことが多くあります。特に、聴覚過敏がよく見られ、大きな音や予期しない音に対して強い不安や驚きを感じることがあります。一方で、音楽に対して非常に興味を示し、音楽を通じたコミュニケーションが得意なことも特徴です。

ウィリアムズ症候群の検査・診断

ウィリアムズ症候群の診断は、臨床的な特徴を基に行われますが、確定診断のためには遺伝子検査が必要です。早期診断は、適切な治療と支援を提供するために重要です。

1. 身体的な検査

ウィリアムズ症候群の典型的な身体的特徴(妖精様顔貌や心血管異常)から診断が疑われることがあります。特に、心血管系の異常が見られる場合、心エコーや心電図検査が行われ、心臓や血管の状態が評価されます。

2. 遺伝子検査

ウィリアムズ症候群の確定診断には、FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)法を用いて、7番染色体の欠失を確認する遺伝子検査が行われます。これにより、染色体の異常が特定され、確定的な診断が可能です。

3. 発達評価

発達の遅れや知的障害を評価するために、心理学的なテストや発達評価が行われます。これにより、個々の子供の強みや課題が明確になり、早期介入や支援の計画を立てることができます。

ウィリアムズ症候群の治療

ウィリアムズ症候群には根本的な治療法はありませんが、個々の症状に対して適切な治療と支援を行うことで、生活の質を向上させることが可能です。治療は、医師、教育者、リハビリ専門家など、多職種チームによる包括的なアプローチが求められます。

1. 心血管疾患の管理

心血管系の異常がある場合、定期的な心臓のチェックが必要です。大動脈狭窄や肺動脈狭窄がある場合は、外科的な治療が検討されることがあります。
また、高血圧がある場合は、薬物療法によって血圧をコントロールすることが重要です。

2. 発達支援とリハビリ

ウィリアムズ症候群の子供に対しては、早期からの発達支援が効果的です。特に、言語療法、作業療法、理学療法などが推奨されます。発達遅滞や学習障害があるため、個々の能力に応じた教育プログラムや支援が必要です。

  • 言語療法:
    言語能力が比較的発達している場合でも、コミュニケーションスキルの向上を図るために、言語療法が有効です。
  • 作業療法:
    日常生活の自立を促すために、手先の使い方や運動能力を向上させる作業療法が重要です。
  • 理学療法:
    運動能力の発達を促進し、筋力の低下や関節の硬直を防ぐために、理学療法が行われます。

3. 聴覚過敏への対処

聴覚過敏がある場合は、音に対する感受性を調整するための支援が必要です。環境音を調整したり、特定の音に対する耐性を高めるためのリハビリテーションが行われることがあります。
また、音楽に対して強い感受性があるため、音楽療法が感情の表現やリラクゼーションに役立つこともあります。

4. 健康管理と栄養サポート

ウィリアムズ症候群の子供は、低身長や消化器系の問題を抱えることが多いため、栄養管理や成長モニタリングが必要です。特に、便秘や体重増加の問題がある場合は、食事指導や薬物療法が行われます。

ウィリアムズ症候群になりやすい人・予防の方法

ウィリアムズ症候群になりやすい人

ウィリアムズ症候群は遺伝性疾患であり、ほとんどの場合自然発生的に染色体の欠失が起こるため、特定の予防策はありません
しかし、家族歴がある場合や、既にウィリアムズ症候群の子供がいる家庭では、将来的にリスクを評価するための遺伝カウンセリングが推奨されます。

予防の方法

ウィリアムズ症候群自体を予防する方法はありませんが、症状の早期発見と適切な治療、支援を行うことで、症状の悪化を防ぎ、生活の質を向上させることが可能です。早期診断が行われることで、心血管疾患のリスク管理や発達支援がより効果的に行われ、個々の能力を最大限に引き出すことが期待されます。

遺伝カウンセリング

家族歴がある場合や、既にウィリアムズ症候群の子供がいる家庭では、遺伝カウンセリングを受けることが推奨されます。遺伝カウンセラーとともに、将来的なリスクや診断、検査について話し合うことで、適切なサポートを受けることができます。
ウィリアムズ症候群の子供たちは、社交的で音楽的才能がある一方で、発達の遅れや健康上の問題に直面することが多いです。早期の支援と治療により、彼らの生活の質を向上させることが可能ですので、家族や医療専門家との連携が重要です。


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