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金属アレルギー
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

金属アレルギーの概要

金属アレルギーは、金属が皮膚に触れることでアレルギー反応が引き起こされる病気です。
一般的に、金属が汗や体液と反応してイオン化し、それが皮膚に吸収されることで免疫システムが過剰反応し、アレルギー症状が現れます。金属アレルギーは、日常生活でよく使用するアクセサリーやメガネのフレーム、歯科治療で使用される金属、さらには化粧品や食べ物に含まれる微量の金属でも反応が起こることがあります。
このアレルギー反応は、接触した金属部分の周囲にかゆみや発疹、赤みなどの皮膚症状が現れることが特徴です。症状が進行すると、水ぶくれやかさぶたができることもあります。アレルギーの強さや発症頻度は個人差があり、軽度の症状から重度の症状までさまざまです。慢性化すると、日常生活に影響を及ぼす可能性もあるため、適切な対処が必要です。

金属アレルギーの原因

金属アレルギーの主な原因は、特定の金属に対する免疫システムの過剰反応です。
金属が皮膚に長時間触れた状態が続くと、汗などの水分と反応して金属がイオン化し、皮膚に吸収されます。これにより、免疫システムが異物とみなしてアレルギー反応を引き起こします。

アレルギーを引き起こしやすい金属

金属アレルギーの原因となる金属にはいくつかの種類があります。特に以下の金属は、アレルギーを引き起こしやすいとされています。

ニッケル

ニッケルは、日常生活で触れる多くのものに含まれているため、最も一般的なアレルゲンの1つです。
ピアスやアクセサリー、台所用品、銀食器、衣類の金具などに多く含まれており、これらに触れることでアレルギー反応を引き起こすことがあります。特に女性は、ニッケルに対して敏感になる傾向が強いです。また、ボディピアスの数が増えるほど、ニッケルに対する感作(アレルギーを引き起こす準備状態)が強くなることがわかっています。

ニッケルを含む食品

ニッケルアレルギーを持つ人のほとんどは、アクセサリーや金属製品を避けることで症状を管理できますが、重度のアレルギーがある人では、ニッケルを含む食品(チョコレート、ナッツ、オート麦、缶詰食品など)を食べることで全身にアレルギー反応が起こる場合があります。これを「全身性ニッケルアレルギー症候群(SNAS)」といい、非常にまれですが、消化管に症状が現れることがあります。
約6%のニッケルアレルギー患者が、この症状を持っているとされ、ニッケルを避けた食事が有効なことがあります。

コバルト

コバルトもニッケルと似たアレルゲンで、化粧品(特に青色のアイメイクやタトゥーの顔料)や工業製品(陶器、プラスチック、レンガなど)に含まれています。
また、コバルトは手のひらや足の湿疹を引き起こすことがあり、特に汗をかきやすい部分に影響を与えることがあります。コバルトを避けることが、こうした湿疹の予防に役立つ場合があります。

クロム

クロムもまた、さまざまな製品に含まれており、皮革製品、セメント、塗料、ステンレス鋼、石鹸、化粧品、さらには食品にも含まれています。クロムアレルギーを持つ人は、これらの製品や食品(牛肉やレバー、ビール酵母など)に注意が必要です。

さらに、金もアレルギーを引き起こすことがあります。金のジュエリーが原因で、手や顔、まぶたに皮膚炎が起こることがありますが、すべての人が問題を感じるわけではありません。
金属アレルギーのパッチテストで陽性だった人の中でも、金ジュエリーを着用しても症状が出ない人もいます。金製の歯科修復物でもアレルギー反応が見られることがありますが、無症状のまま過ごせる場合もあります。

金属イオン化のメカニズム

金属アレルギーの発症メカニズムは、金属が汗や水分に触れることでイオン化し、それが皮膚から体内に吸収されることにあります。
体内に吸収された金属イオンは、免疫システムによって異物と認識され、その結果、アレルギー反応が引き起こされます。この反応は「遅延型アレルギー反応」と呼ばれ、金属に接触してから数時間から数日後に症状が現れることが多いです。

金属アレルギーの前兆や初期症状について

金属アレルギーの前兆や初期症状は、金属が皮膚に接触した部分に現れることが一般的です。最初は軽度のかゆみや赤みから始まりますが、次第に症状が進行し、皮膚に目に見える変化が現れます。

主な初期症状

  • かゆみ:
    金属が触れた部分にかゆみが生じることが最も早いサインです。かゆみは軽度から強度までさまざまで、皮膚の状態によって異なります。
  • 赤みや発疹:
    皮膚に赤い発疹や斑点が現れることが一般的です。これらの症状は、金属が接触している部位に局所的に現れます。
  • 乾燥やひび割れ:
    アレルギー反応が進行すると、皮膚が乾燥し、ひび割れたり、カサカサした状態になることがあります。
  • 水疱やかさぶた:
    重度の場合、皮膚に水疱(みずぶくれ)ができ、その後かさぶたが形成されることがあります。これはアレルギー反応が進行しているサインであり、放置すると症状がさらに悪化することがあります。

症状の出現部位

金属アレルギーの症状は、金属が直接触れた部位に現れることが多いです。アクセサリーを身につける首、耳、手首、指、さらにはベルトのバックルが当たる腹部やジーンズのボタンが触れる腰部分などが典型的な発症部位です。
また、歯科材料や医療用金属が原因の場合、口腔内や体内で症状が出ることもあります。

金属アレルギーの検査・診断

金属アレルギーの診断は、皮膚科医が行うパッチテスト(貼布試験)が最も一般的です。この検査では、疑われる金属アレルゲンを含んだ試薬を皮膚に貼り付け、アレルギー反応の有無を確認します。
パッチテストは、金属アレルギーの確定診断に使用されます。テストでは、通常、背中にアレルゲンとなる金属を含む試薬を貼付し、48時間後にその反応を評価します。皮膚に赤みやかぶれが見られた場合、その金属に対してアレルギーがあることが確認されます。
ただ、先述のように金属アレルギーのパッチテストで陽性だった人の中でも、金ジュエリーを着用しても症状が出ない人もいます。

金属アレルギーの治療

金属アレルギーの治療は、主に症状を抑えることを目的としています。
アレルゲンとなる金属との接触を避けることが最も重要な対策です。また、発症した症状を軽減するために、以下のような治療法が用いられます。

ステロイド外用薬

皮膚に赤みやかゆみが生じた場合、ステロイド外用薬が処方されることが一般的です。
ステロイド外用薬は、炎症を抑制し、かゆみや腫れを軽減します。軽度の症状には弱めのステロイドが使用されますが、重症の場合はより強力なステロイドが処方されることがあります。

抗ヒスタミン薬

かゆみが強い場合、抗ヒスタミン薬が使用されることがあります。
抗ヒスタミン薬は、アレルギー反応を引き起こすヒスタミンの作用を抑制し、症状を和らげます。経口薬や外用薬が使用されることがあり、症状に応じて適切な薬剤が選ばれます。

保湿剤の使用

アレルギーによる皮膚の乾燥やひび割れを防ぐために、保湿剤の使用が推奨されます。特に皮膚が乾燥している場合、保湿を行うことで皮膚のバリア機能が改善され、症状の軽減につながります。

金属の除去

金属アレルギーの原因となる金属製品を生活から取り除くことが最も重要な治療法です。
歯科治療で使用された金属やアクセサリー、衣服の金属部分を避けることで、アレルギー反応を防ぐことができます。特に、歯科治療やインプラントが原因の場合、医師や歯科医師と相談して、代替素材を使用することが推奨されます。

金属アレルギーになりやすい人・予防の方法

金属アレルギーになりやすい人

  • アクセサリーを頻繁に使用する人:
    ニッケルやクロムなどが含まれるアクセサリーを頻繁に使用する人は、金属アレルギーのリスクが高くなります。
  • 歯科治療を受けている人:
    歯科治療で金属製の詰め物やかぶせ物、インプラントが使用されている場合、金属アレルギーを発症するリスクがあります。
  • 汗をかきやすい人:
    汗をかきやすい人は、金属が汗でイオン化しやすくなるため、アレルギー反応が起こりやすくなります。

予防の方法

  • 金属との接触を避ける:
    アレルギーの原因となる金属との接触を避けることが最も効果的な予防方法です。アクセサリーや衣服の金属部分にニッケルやクロムが含まれている場合は、アレルギーフリーの素材に置き換えることを検討してください。
  • 汗をかいたらこまめに拭く:
    汗をかくことで金属がイオン化しやすくなるため、汗をかいた場合はこまめに拭き取ることが大切です。特に夏場や運動後には注意が必要です。
  • アレルギーフリーメタルを使用する:
    金属アレルギーを避けるために、アレルギーフリーメタル(チタンやプラチナなど)を使用したアクセサリーや歯科材料を選ぶことが推奨されます。これにより、アレルギー反応のリスクを大幅に減らすことができます。

金属アレルギーは、適切な対処を行うことで症状を軽減し、日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。
早期の診断と適切な治療が重要ですので、疑わしい症状がある場合は、医師に相談して適切な対応を受けることが大切です。


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