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はしか
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

はしかの概要

はしか (麻疹) は、麻疹ウイルスによる急性ウイルス性感染症です。
主な症状は発熱、咳、鼻水、結膜充血、咽頭痛に続く特有の発疹で、合併症がなければ7〜10日程度で軽快します。合併症としては肺炎や中耳炎があり、重症の場合には脳炎を引き起こすこともあります。
感染力は高く、発症前日から感染力があり、飛沫や接触だけでなく空気感染により広がります。予防手段としては1歳児および小学校入学前1年間の幼児に対して麻疹風疹混合ワクチン (MRワクチン) の定期接種が行われています (参考文献 1) 。

はしかの原因

はしかの原因は、麻疹ウイルスです。
麻疹ウイルスはパラミクソウイルス科モルビリウイルス属のウイルスで、非常に感染力が強く、感染者の体液からの感染 (接触感染) や咳やくしゃみを介した感染 (飛沫感染) だけでなく、飛沫を直接浴びなくても空気中に放出されたウイルスが他の人の呼吸器から侵入することでも感染が広がります (空気感染) 。
また、潜伏期間は10~12日で、不顕性感染は少ないものの発症前日から感染力があるため注意が必要です。

はしかの前兆や初期症状について

はしかは通常、感染後10〜12日間の潜伏期間を経て現れます。
最初の症状として、発熱、咳、鼻水、結膜炎 (目の充血) 、咽頭痛が数日間続きます。この時期を「カタル期」と言います。発熱は一度落ち着き、また、同程度の時期にコプリック斑と呼ばれる小さな白い斑点が口腔内の頬の内側に現れます。
その後、体温は再び 39℃ 以上になり、同時に顔や首に赤い発疹が現れ全身に広がります。この時期を「発疹期」と言います。発疹が全身に広がるころにはコプリック斑は消失します。
高熱や発疹は数日間持続し、下痢や脱水症状を認めることもあります。合併症がなければ7〜10日程度で症状は軽快し、発疹は色素沈着を残した後に消退します。かさぶたのようなものが途中でできることもあります。

合併症としては肺炎が最も多く、他には中耳炎、クループ症候群 (急性声門下喉頭炎) 、心筋炎、脳炎があります。脳炎は1000人中0.5〜1人に合併し、致命率が約15%、回復しても約20〜40%に重度の後遺症を残すと言われています (参考文献 1) 。

はしかの検査・診断

はしかの診断には、ウイルス遺伝子の検出やはしかに特異的なIgM・IgG抗体の検査が重要です。
日本では、はしかに似た他の疾患 (風疹など) と見分けるためにPCR法によるウイルス遺伝子検出とIgM抗体の測定が求められています。こうしたウイルス遺伝子型の情報は流行ウイルス株の解析や公衆衛生上の管理に不可欠となっています。

現在日本では、症状などからはしかを疑った場合は、発疹出現後7日以内に血液・咽頭拭い液・尿を採取して保健所に提出すること、および発疹出現後4~28日に特異的IgM抗体の検査を行うことが推奨されています (参考文献 2) 。

はしかの治療

はしかの治療は、基本的に対症療法が中心です。
麻疹ウイルスに対する特効薬は存在しないため、治療は症状の緩和と合併症の予防を目的とします。十分な休養と水分補給、そして高熱や痛みがある場合には解熱鎮痛剤 (例えばアセトアミノフェンなど) が使用されます。
合併症が疑われる場合にはそれに応じた治療が行われます。例えば、細菌性の二次感染が発生した場合には、抗菌薬が投与されます (参考文献 1,3) 。

はしかになりやすい人・予防の方法

はしかの予防方法の中で最も有効な方法は、麻疹ワクチンの接種です。
日本では予防接種法の対象ワクチンとして区市町村が予防接種を実施しています。定期接種では麻疹風疹混合ワクチン (MRワクチン) として実施されており、第1期は1歳前後の乳幼児にワクチン接種を行い、第2期として小学校入学前 (5歳以上7歳未満) の子どもに追加接種を行うことになっています。
1回の接種を受けることで93~95%程度の人が麻疹ウイルスに対する免疫を獲得できると言われており、2回の接種を受けることで97~99%程度の人が免疫をつけることができると言われています (参考文献 3) 。

初めてワクチンを接種した際は、接種後に発熱 (約20〜30 %) や発疹 (約10%) が見られますが、ほとんどは自然に消滅します。また、接種後30分は失神がアナフィラキシー反応に注意する必要があります。
女性の場合、接種後2か月間は妊娠を避けましょう (参考文献 3) 。

もし免疫のない人がはしかに罹っている人と接触すれば、ほぼ確実に感染すると言われています。その場合に発症を防ぐためには、接触から 72時間以内にワクチンを接種する、もしくは4日以上6日以内にガンマグロブリンを筋肉注射するという方法があります。
しかし、ガンマグロブリンの使用にあたっては医師と十分に相談する必要があり、またいずれの方法をとったとしても確実に発症を防げるわけではありません。疑わしい症状が出たら医療機関を受診しましょう (参考文献 4) 。

また、もしはしかに罹ってしまった場合は周囲への感染拡大を予防するために、感染力の高い「症状が出現する1日前 (発しん出現の3~5日前) から発しん消失後4日くらいまで(または解熱後3日)」の間は学校・職場を休むことが重要です (参考文献 4) 。


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