

監修医師:
五藤 良将(医師)
熱性けいれんの概要
熱性けいれんは、主に6ヵ月から5歳の乳幼児に見られる疾患で、急な高熱によって発作を引き起こします。この症状は38度以上の発熱が見られる際に、脳内の活動が乱れることで起こることが多いです。発症すると、短時間で収まることが多いとされていますが、約30%の子どもが繰り返し発作を経験します。
熱性けいれんの発生は、日本では全乳幼児の3.4〜9.3%に見られ、欧米より多いとされています。そのうち2.5〜7%の子どもがてんかんを発症するとされています。逆に言えば90%以上がてんかんを発症しないともいえます。また、遺伝的要因も関与しており、親や兄弟が同じ疾患を経験している場合、子どもが熱性けいれんを発症するリスクは高まります。
熱性けいれん自体は、通常、生命に危険を与えることは少なく、6歳頃までには自然と発症しなくなることが多いです。しかし、ほかの重篤な病気が隠れている場合もあり、髄膜炎や代謝異常など、ほかの原因によるけいれんとの鑑別が重要です。熱性けいれんを経験した子どもは、発熱時の観察と適切な対応が求められます。
熱性けいれんの原因
熱性けいれんの原因は、発育途中の未熟な脳が急激な体温の上昇に対応できないためとされています。主に38度以上の発熱を伴う状況で、乳幼児が意識障害やけいれんを経験することがあります。主に、発熱を引き起こす疾患がけいれんの直接的な誘因となることが多く、その例として突発性発疹、夏風邪、インフルエンザなどが挙げられます。これらはすべて、急に高熱を引き起こす特性を持っており、熱性けいれんのきっかけとなりえます。
また、熱性けいれんは遺伝的要素も強く影響していると考えられています。両親のどちらか、または両方が熱性けいれんの経験者の場合、その子どもが熱性けいれんを発症する可能性は、経験者でない子どもたちよりも2〜3倍高まるとされています。さらに、性別に関しても、男児の方が女児に比べて熱性けいれんを発症する確率がやや高いと報告されています。
熱性けいれんは通常、けいれんを起こすほかの根本的な病気がない場合に限定されます。つまり、けいれん発作がほかの中枢神経系の感染症や重篤な代謝異常などから発生している場合は、熱性けいれんとは別の診断がなされることが多いです。このように熱性けいれんの診断と管理には、発熱の原因となる疾患の特定とともに、ほかの可能性を排除するための注意深い評価が必要とされます。
熱性けいれんの前兆や初期症状について
熱性けいれんの前兆や初期症状は、発熱後24時間以内に発症することが多く、特定の兆候に注意が必要です。最初の徴候として、乳幼児が突然両手足をかたく突っ張り、その後、ガクガクと手足をふるわせる動作が見られます。この間、子どもは意識を失い、反応が薄れます。また、目がつり上がり白目をむく、唇が紫色になる、嘔吐や失禁を伴うこともあり、これらの症状が組み合わさることが少なくありません。呼びかけに対して反応がない場合も熱性けいれんの一つのサインとされています。
熱性けいれんの発作は通常5以内で収まり、多くの場合、発作が終わった後は子どもが元の状態に戻るとされています。ただし、発作が15分以上持続する場合や1日に2回以上繰り返す場合は、病状がより重大な可能性があり、ただちに専門的な治療が必要です。
前兆や症状に気付いた際の受診科ですが、熱性けいれんを経験した子どもは、まず小児科の診察を受けることが推奨されます。発作がすぐに収まった場合でも、なるべく早めに医師の診断を受けることが大切です。夜間や休日に症状が現れた場合は、救急外来の受診が推奨されます。
発作が長引いたり、繰り返し発生したりする場合は、迅速な医療介入が求められます。意識が戻らない、視線が合わない、呼びかけに応答しないなどの症状が見られる場合は、救急車を呼ぶことを検討すべきです。
熱性けいれんの検査・診断
熱性けいれんの診断は、主に症状に基づいて行われますが、けいれんの背後にほかの病気がないかを確認するための検査も重要です。熱性けいれん自体は特定の検査を要する病気ではありませんが、発症する可能性のあるほかの疾患を除外するために、さまざまな検査が行われます。
まず、血液検査を通じて、炎症の有無、電解質バランス、血糖値などを調べることが多いとされています。これにより、低血糖症や低カルシウム血症など、けいれんを引き起こす可能性のある代謝異常を検出できます。また、ウイルス検査を行い、インフルエンザなどのウイルス感染症がけいれんの原因でないかを確認します。
さらに、髄液検査によって髄膜炎の有無を調べることがあります。髄膜炎はけいれんや意識障害を引き起こす重篤な状態であり、迅速な診断と治療が必要です。頭部のCTやMRIは、脳内に腫瘍や出血がないかを確認するために使用され、これにより脳炎やほかの重篤な脳の問題を除外します。
脳波検査も行われることがあり、これはてんかんと熱性けいれんを区別するのに役立ちます。てんかんは熱を伴わないけいれんが特徴であり、発作時に特有の脳波の異常が見られることが少なくありません。検査により、長期的な抗てんかん剤治療が必要かどうかを判断できます。
熱性けいれんの治療
熱性けいれんの治療は、主に発熱とけいれん発作への対応に焦点を当てて行われます。通常、熱性けいれんの発作は5分未満で自然に収まるため、積極的な治療を必要としないケースが多いですが、発作が5分以上続く場合や、特定の症状が見られる場合には迅速な対応が求められます。
発熱を下げるためには、解熱剤が使用されます。しかし、けいれんが5分以上継続する場合、またはけいれん重積状態の予防が必要な場合には、より積極的な治療が行われます。
このような状況では、鎮静薬のロラゼパムや抗てんかん薬のフェノバルビタール、ホスフェニトインなどが投与されることがあります。これらの薬剤は主に静脈内に投与され、発作を迅速に終息させることを目的としています。静脈内投与が困難な場合は、ミダゾラムを口腔内投与する方法も選択されることがあります。
このように、熱性けいれんの治療は、発熱の管理と発作のコントロールに焦点を当て、必要に応じて迅速な医療介入を行います。再発の予防や潜在的な合併症の早期発見のためにも、定期的なフォローアップが重要とされています。
熱性けいれんになりやすい人・予防の方法
熱性けいれんは、特定の条件を持つ小児に発生しやすいことが知られています。これには幼少期の脳が急激な体温変化に対応できない生理的な特性が関与しています。けいれんを予防するための戦略として、特定のリスクを持つ子どもたちに焦点を当てることが重要です。
熱性けいれんになりやすい子どもたちは以下のような特徴を持つ場合があります。遺伝的な要素が強く、てんかんの家族歴がある場合や、脳に構造的な異常(脳性麻痺や脳画像検査での異常所見など)が見られる子ども、過去に熱性けいれん重積状態や長時間続くけいれんを経験した子どもなどです。これらの子どもたちは、通常の予防措置だけでなく、特定の医療的介入が必要な場合があります。
予防の方法としては、ジアゼパムなどの座薬の使用が一つの方法です。座薬は発熱が始まった初期(37.5度から38度以上のとき)に使用すると効果的とされており、けいれんの発生を抑制することが期待されます。なかでも過去に2回以上熱性けいれんを経験した子どもには、このような予防投与が検討されることが多いようです。
また、熱性けいれんの発作を抑えるためには、発熱が見られた場合の迅速な対応が重要です。保護者は子どもの体温を定期的に確認し、高熱が認められた場合にはお子さんを一人にしないなどの配慮が必要です。解熱剤の使用はがけいれん予防に直接効果があるわけではないため、けいれんが発生した際の迅速な医療介入が必要になることもあります。
熱性けいれんを予防するためには、高リスクな子どもたちに対して特別な注意を払い、必要に応じて早期から予防策を講じることが重要です。これには医師との密接な連携が不可欠であり、発熱やけいれんの兆候が見られた場合には速やかに専門的な診断を受けることが勧められます。




