目次 -INDEX-

吉川 博昭

監修医師
吉川 博昭(医師)

プロフィールをもっと見る
医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。

自律神経失調症の概要

自律神経失調症とは、特定の疾患名ではなく、さまざまな要因が関与する症候群です。原因は主に、ストレス生活リズムの乱れがあげられます。その初期症状は非特異的なものが多く、 さまざまな身体的・精神的症状が出現します。またストレスの多い現代社会において、自律神経失調症に関連する症状を有する人は少なくありません。予防は十分な睡眠、バランスの良い食事を心がけ、生活リズムを整えて、適度な休養や運動をすることです。治療は適切な生活習慣の改善を行い、必要に応じて医療機関を受診して薬物療法や精神療法などを試みます。

自律神経とは

神経系は末梢神経系と中枢神経系に大別され、末梢神経は体性神経系と自律神経系とに分類されます。体性神経系は感覚・運動機能に関わり、自律神経は内臓の機能(呼吸、循環、消化、発汗・体温調節、内分泌機能、生殖機能、および代謝機能などの自分でコントロールできない機能の制御)に関わります。どちらも中枢神経系である脳と脊髄から末梢効果器へ情報を伝える遠心路とその逆の求心路を持ちます。自律神経系の遠心性神経は、解剖学的ならびに機能上の違いにより交感神経系副交感神経系に分類されます。求心性神経に内臓求心性線維があります。

交感神経の働きは、瞳孔散大、心臓の脈拍上昇、血管を収縮、血圧上昇など、仕事をしたり外で活動するために適した身体状態を作ることです。一方、副交感神経の働きは、瞳孔縮小、心臓の脈拍低下、血管を拡張、胃・腸の蠕動運動亢進、消化液の分泌促進など消化・排泄・睡眠・細胞の修復など生体を維持する活動に関わっています。

自律神経失調症の原因

自律神経失調症は、ストレス生活リズムの乱れが最も大きな原因とされ、さまざまな要因が複合的に関与して自律神経のバランスが崩れると考えられています。

  • ストレス
    交感神経を過剰に刺激し、自律神経のバランスを崩す大きな要因となります。
  • 不規則な生活リズム
    不規則な睡眠や食事は交感神経と副交感神経のリズムを乱します。
  • 内分泌の変化
    更年期や月経周期の変化などホルモンバランスの変動が交感神経と副交感神経に影響を与えます。
  • 薬物
    特定の薬物(抗うつ薬、降圧剤、制吐剤など)が自律神経に影響を及ぼすことがあります。
  • 慢性疾患
    糖尿病、甲状腺機能異常、貧血など、慢性的な身体疾患が原因となる場合があります。
  • 加齢
    交感神経と副交感神経の調節機能が低下することがあります。

ストレスとは

Selye(1907-82、カナダ)が「生体に刺激が加えられた際に生体に生じる反応(歪み)」をストレスと名付けました。ストレスを引き起こす刺激には、温熱・外傷・騒音などの物理的なもの、不快な臭いのような化学的なもの、感染などの生物学的なもの、そして人間関係や仕事の悩みなどの心理・社会的なものがあり多様です。こうしたストレスは視床下部をはじめとする中枢神経系で統合・処理され、情動や覚醒水準などの高次神経機能に変化をもたらすとともに、自律神経系、内分泌系、運動系などを介して全身に さまざまな反応を誘発します。

ストレスに対処する方法には、「自らストレスの対象に立ち向かう(fight)」、「その対象からいち早く逃れる(fright)」、あるいは「諦めて対象が消えるのをじっと待つ(freeze)」があります。先の2つは防御反応とよばれ、交感神経系が強く働きます。諦めるパターンは副交感神経が極度に活動します。

自律神経失調症の患者数

患者数や有病率を把握することは難しいと考えられます。自律神経失調症自体が特定の疾患名ではなく、 さまざまな要因が関与する症候群であるためです。

自律神経失調症の前兆や初期症状について

自律神経失調症の初期症状は非特異的なものが多く、以下に記載した さまざまな身体的・精神的症状が出現します。

1)身体的症状

  • 疲労感・倦怠感
  • めまい、立ちくらみ
  • 頭痛・頭重感
  • 動悸(心臓の鼓動が明確に感じられる)・胸部圧迫感
  • 手足のしびれ・震え
  • 息切れ、息苦しさ
  • 便通異常(下痢や便秘)
  • 発汗異常
  • 肩こり
  • 腰痛

2)精神的症状

  • 不眠
  • 集中力の低下
  • 記憶障害
  • 不安感
    ・抑うつ気分
    ・決断力の低下
    ・情緒の不安定

これらの症状が持続する場合は自律神経障害が疑われます。

自律神経失調症の経過

症状が持続すれば、日常生活に支障が出るため、医療機関の受診と適切な治療が必要となります。

自律神経失調症の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、一般内科や脳神経内科、婦人科、精神科の診療科、病院やクリニックです。自律神経失調症は自律神経のバランスが乱れる症状であり、内科で診断と治療が行われています。

自律神経失調症の検査・診断

自律神経失調症の診断には、特異的な検査はありません。まずは、問診と身体所見から自覚症状とストレス要因を確認します。次に一般的な検査で器質的な身体疾患や内分泌疾患を除外し、自律神経症状が主体で精神疾患が明らかでない場合に、自律神経失調症と診断されます。

  • 問診
    めまい、動悸、倦怠感、不眠などの自覚症状と排尿機能、性機能、発汗機能障害の有無を確認します。
  • 身体所見
    血圧、脈拍、体温などのバイタルサインを確認します。神経学的診察では、脳神経系、運動機能、感覚機能、小脳系、反射系、自律神経機能(起立試験や瞳孔機能など)を確認します。
  • 検査
    血液検査、尿検査、心電図などの一般的な検査を実施します。必要時は脳MRI検査や心臓エコー、腹部CT、24時間血圧測定、心拍変動、睡眠(ポリソムノグラフィー)、発汗、外分泌腺(Schirmer 試験・唾液分泌試験)機能など器質的な身体疾患や内分泌疾患を除外します。

自律神経失調症の診断に特異的な検査はありませんが、上記検査で身体疾患が認められず、自律神経症状が主体で精神疾患(うつ病、不安障害など)が明らかでない場合に、自律神経失調症と診断されます。

自律神経失調症の鑑別診断

類似した症状を示す疾患(内分泌疾患、神経疾患、精神疾患など)を鑑別します。

パーキンソン病やルビー小体病、多系統萎縮症、糖尿病による末梢神経障害など身体疾患に伴う自律神経症状や、うつ病や不安症などの症状の一部として出現する自律神経症状もあるため、鑑別診断が重要となります。

自律神経失調症の治療

生活習慣の改善
自律神経のバランスを整えるためにまず生活習慣の改善が基本となります。

  • 十分な睡眠と休息をとる
  • 規則正しい生活リズムを心がける
  • バランスの良い食事をとる
  • 適度な運動を行う

薬物療法
症状に応じて適切な薬物治療を行います。薬物療法では、患者さんにあった種類や量を慎重に調節します。

  • 抗うつ薬や抗不安薬を使用してストレスを和らげる
  • 不眠症状がある場合は睡眠薬を使用する
  • 痛みのなどの身体症状がある場合は対症療法(痛み止めなど)を併用

精神療法
精神療法では、ストレス要因への対処法を身につけ、自己理解を深めることが目的となります。

  • カウンセリングを受け、ストレス要因を探る
  • 認知行動療法などで対処法を学ぶ
  • 自分自身の内面を見つめ直す洞察療法を行う

自律神経失調症の対処法

気軽にできるストレス解消法として、散歩や体操、入浴などがあげられます。ペットを育てる、音楽鑑賞、カラオケなどの趣味をもつことも効果的です。つまり、リラックスできて楽しいと思える時間、心の充実感を大切にすることです。

自律神経失調症になりやすい人・予防の方法

  • ストレスを溜め込みやすい性格(真面目で几帳面、責任感が強いなど)の人
  • 対人関係でストレスを感じやすい人
  • 更年期などホルモンバランスが乱れやすい女性
  • 精神的ストレスや過労、睡眠不足などで自律神経のバランスが崩れやすい人

予防は、ストレス対策生活習慣の改善が主体となります。心理社会的ストレスを一人で抱え込まず、周囲の人に相談するなど適切な対処法を身につけることです。十分な睡眠、バランスの良い食事を心がけ、生活リズムを整えて、適度な休養や運動をすることです。

この記事の監修医師