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敗血症
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

敗血症の概要

敗血症とは、感染症が全身に広がり、臓器障害を引き起こしている状態です。重症化により、全身に炎症が広がると、臓器の機能が著しく低下し、重篤な状態に陥る場合があります。細菌やウイルス、真菌などが原因で発症し、特に細菌感染が多く見られます。誰にでも起こりうる可能性がありますが、特に高齢者や免疫機能が低下している方はリスクが高いです。
敗血症が進行すると、重症敗血症や敗血症性ショックに至ることがあります。重症敗血症は、敗血症に臓器障害や低血圧を伴う状態です。さらに悪化すると敗血症性ショックになり、十分な輸液を行っても低血圧が持続するため昇圧剤の使用が必要になります。

敗血症の診断には、意識状態・呼吸状態・血液成分・尿量・血圧などさまざまな検査を実施し、総合的に診断します。適切な治療が遅れると、臓器障害が進行し、死亡率が高まるため、早期の対応が重要です。敗血症の治療には、抗菌薬の投与や手術による感染部位の除去、輸液や血圧を上昇させる薬の投与などが行われます。また、人工呼吸器や透析などの高度な医療機器を用いた治療も必要となることがあります。

敗血症の予防には、ワクチン接種や衛生管理の徹底が大切です。。早期の診断と治療を行うことで、患者さんの予後を改善することが期待されます。

敗血症の原因

敗血症の原因は、主に細菌、ウイルス、真菌などの感染です。これらの病原体が体内に侵入し、増殖することで全身に炎症反応を引き起こし、臓器障害をもたらします。敗血症を引き起こす感染症としては、肺炎、尿路感染症、腹膜炎、皮膚感染症などが一般的です。

細菌による敗血症

細菌感染が敗血症の最も一般的な原因です。例えば、大腸菌やブドウ球菌、連鎖球菌などが敗血症を引き起こす主な細菌です。これらの細菌は、肺・尿路・腹腔・皮膚などの部位に感染し、そこから血流に乗って全身に広がります。

ウイルスによる敗血症

ウイルス感染も敗血症の原因となることがあります。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどが、重篤な感染症を引き起こし、敗血症に至る場合があります。特に免疫機能が低下している患者さんや高齢者は、ウイルス感染による敗血症のリスクが高まります。

真菌による敗血症

真菌感染も敗血症の原因となります。真菌が、免疫抑制状態にある患者さんや長期にわたる抗菌薬治療を受けている患者さんに感染し、敗血症を引き起こすことがあります。真菌感染は、特に免疫機能が低下している患者さんにおいて重篤化しやすいです。

敗血症の前兆や初期症状について

敗血症の初期症状は他の感染症と類似しており、鑑別が難しいです。敗血症は、感染症が全身に広がり、臓器障害を引き起こす状態であるため、初期症状は感染源に関連した症状と全身的な炎症反応の症状が組み合わさって現れます。

一般的な初期症状としては、発熱や低体温、頻脈、頻呼吸、倦怠感、悪寒、発汗などが挙げられます。特に発熱や頻脈、頻呼吸など全身の炎症症状が見られる場合は敗血症の重要な指標となります。また、感染源に一致した症状も見られることがあります。例えば、肺炎による咳嗽や呼吸困難、尿路感染症による排尿困難や腹痛などが挙げられます。

敗血症性ショックに至ると、血圧低下が顕著になり、末梢の血流が著しく低下します。これにより、臓器への血流が不足し、多臓器不全が進行します。具体的には、腎不全による乏尿や無尿、肝不全による黄疸、呼吸不全による呼吸困難などです。これらの症状は、敗血症の進行を示すものであり、迅速な対応が必要です。

これらの症状が見られた場合、内科を受診されることをおすすめします。

敗血症の検査・診断

敗血症の診断には、臨床症状の評価とともに、さまざまな検査が行われます。敗血症は、感染症が全身に広がり、臓器障害を引き起こす状態であるため、感染源の特定と臓器機能の評価が重要です。

SOFAスコア

敗血症の診断には、SOFAスコアが用いられますこのスコアの合計が2点以上変化した場合に敗血症と診断されます。

臓器システム スコア
0
1 2 3 4
呼吸
PaO₂/FiO₂
≥400 <400 <300 <200
+人工呼吸
<100
+人工呼吸
凝固
血小板数(×10³
/μl)
≥150 <150 <100 <50 <20

総ビリルビン(mg/dl)
<1.2 1.2~
1.9
2.0~5.9 6.0~11.9 >12.0
心血管
平均血圧(MAP)
カテコラミン
MAP≥
70
MAP<
70
ドパミン
<5
or ドブタ
ミン
ドパミン 5.1~
15
or エピネフリ
ン≤0.1
or ノルエピネ
フリン≤0.1
ドパミン>15
or エピネフリン>
0.1
or ノルエピネフリン
>0.1
中枢神経
GCS
15 13~14 10~12 6~9 <6

クレアチニン(mg/dl)
尿量(ml/day)
<1.2 1.2~
1.9
2.0~3.4 3.5~4.9
<500
>5.0
<200

血液・体液の培養

敗血症の感染源を特定するために、血液培養や体液の培養検査が行われます。血液培養は、血液中の細菌を検出する検査であり、敗血症の診断において重要です。体液の培養検査は、尿、髄液、傷口の組織、痰などのサンプルを採取し、細菌の有無を調べます。感染源を特定し、適切な抗菌薬の選択が可能です。

血液検査

血液検査では、白血球数、血小板数、乳酸値、ビリルビン値、クレアチニン値などが測定されます。これらの値は、臓器障害の程度を示す指標です。例えば、乳酸値の上昇は、組織への酸素供給不足を示し、敗血症の重症度を評価するために重要です。また、血小板数の減少は、播種性血管内凝固症候群(DIC)の合併を示す指標になります。

画像検査

敗血症では、胸部X線・CT・MRI検査などが行われ、感染源の特定や臓器障害の評価をします。例えば、肺炎による敗血症の場合、胸部X線検査で肺の感染巣が確認されます。また、腹腔内感染症の場合、CT検査で腹腔内の膿瘍や炎症が確認できるでしょう。

敗血症の治療

敗血症の治療は、感染源の制御と全身管理、臓器機能のサポートが中心となります。敗血症は、迅速な対応が求められる緊急疾患であり、適切な治療が遅れると、臓器障害が進行し、死亡率が高まるため、早期の治療が重要です。以下に具体的な治療内容を解説します。

感染源の制御

敗血症の治療には、感染源の特定と制御が不可欠です。そのため、感染源に対する適切な抗菌薬を選択することが重要です。血液・体液の培養検査の結果から感染源を特定し、適切な抗菌薬を投与します。抗菌薬の投与は、早期に開始することが重要であり、適切な抗菌薬の選択が患者さんの予後を改善します。

感染源の制御には、手術やドレナージが必要な場合もあります。例えば、腹腔内の膿瘍や壊死組織の除去、感染部位の排膿などで必要です。これにより、感染源を物理的に除去し、感染の拡大を防ぎます。また、カテーテルや気管チューブなどの医療器具が感染源となっている場合は、交換や除去が必要です。

全身管理

敗血症では、全身管理が重要です。全身の血液循環が障害されるため、輸液や血圧を上昇させる薬の投与が行われます。電解質輸液(生理食塩水など)が望ましく、急速に電解質輸液を投与します。体液過剰による肺水腫を避けつつ、組織灌流を回復させることが目標です。

酸素投与も重要な治療の一環です。酸素はマスクや鼻カニューレによって投与され、呼吸不全に対しては気管挿管や機械的人工換気が必要となります。特に急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を合併した場合は、ICUでの治療が不可欠です。

臓器機能のサポート

臓器機能のサポートも重要です。人工呼吸器による呼吸補助や、腎機能を補助するための透析が行われます。これにより、臓器機能障害の進行を防ぎ、患者さんの生命を維持します。

敗血症になりやすい人・予防方法

敗血症になりやすい人には、いくつかのリスク要因があります。まず、免疫力が低下している人々が挙げられます。免疫抑制剤を使用している患者さん、糖尿病や悪性腫瘍などの慢性疾患を持つ人々、化学療法を受けているがん患者さんなどは、感染症にかかりやすく、敗血症のリスクが高まります。また、高齢者や新生児も免疫力が低いため、敗血症のリスクが高いです。

敗血症の予防には、ワクチン接種・早期発見・生活習慣の改善の3つが重要です。以下で具体的に解説します。

ワクチン接種

ワクチン接種が有効です。インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなどを接種することで、感染症のリスクを減少させることができます。また、手洗いやマスクの着用などの衛生管理も感染症の予防に役立ちます。特に、免疫力が低下している人々は、感染症の予防が重要です。

早期発見

感染症の早期発見は、敗血症の予防に重要です。発熱や咳、喉の痛みなどの感染症の初期症状が見られた場合は、早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。特に、免疫力が低下している人や高齢者は、重症化しやすいため、早期の対応が求められます。

生活習慣の改善

感染症のリスクを減少させるために、生活習慣の改善も重要です。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけることで、免疫力を維持し、感染症のリスクを減少させます。喫煙や過度の飲酒は免疫力を低下させるため、控えるのが良いでしょう。

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参考文献

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