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突発性発疹(小児バラ疹)
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

突発性発疹(小児バラ疹)の概要

突発性発疹(小児バラ疹)は、主に6〜18か月の乳幼児期に罹患する急性ウイルス感染症です。この病気は、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)またはヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)によって引き起こされます。突発性発疹の症状は、生まれて初めての高熱で発症することが多く、38〜40℃の高熱が3〜4日続いた後、熱が下がると現れる発疹です。発熱は通常3〜4日間続き、その後熱が下がり解熱します。解熱と同時に、体幹部を中心に赤い発疹が現れ、顔や四肢に広がることもありますが、症例数としては少ないです。

この病気は、ほとんどの子どもが一度は感染すると言われています。飛沫感染や接触感染を通じて広がりますが、感染力は比較的弱いため集団生活の場で大規模な流行を引き起こすことは稀です。季節に関係なく年間を通じて発症する可能性があります。

突発性発疹の予後は一般に良好で、特別な治療を必要としません。かかった子どもは、発熱中に不機嫌になることが多いですが、解熱後は比較的元気に過ごします。発疹が出る頃にはウイルスはが減少しているため、感染力も低下しています。発疹は通常2~3日で消失し、痕が残ることはほとんどありません。

初めての発熱を経験する乳幼児に見られると不安でしょうが、適切で迅速な治療を行えば脳炎や、脳症、劇症肝炎、血小板減少性紫斑病などの重篤な合併症を予防できます。

突発性発疹(小児バラ疹)の原因

突発性発疹の原因は、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)およびヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)です。これらのウイルスは、乳幼児期に初感染を引き起こし、その後体内に潜伏します。HHV-6は、小児期の疾患のひとつである突発性発疹の原因ウイルスです。90%以上の成人の体内に潜伏感染しています。

感染経路は主に飛沫感染と接触感染です。ウイルスは唾液中に存在し、咳やくしゃみを通じて飛沫として広がります。さらにウイルスが付着した手や物を介して感染することもあります。

初感染時に免疫が形成されるため、再度同じウイルスに感染する可能性は低いです。ただし、HHV-6とHHV-7は異なるウイルスであるため、両方のウイルスに感染する可能性があります。

突発性発疹のウイルスは他のヘルペスウイルスと同様、体内に潜伏します。感染者が無症状であっても、他人にウイルスを感染させる可能性があるのです。
突発性発疹の原因ウイルスは、1988〜1994年にかけて特定されました。しかし、ウイルスがどのようにして体内に潜伏し続けるのか、再活性化のメカニズムについてはさらなる研究が必要です。

突発性発疹(小児バラ疹)の前兆や初期症状について

突発性発疹の前兆としては、発熱の前に軽い風邪のような症状が見られます。例えば、軽い咳や鼻水、喉の痛みなどです。しかし、全ての子どもに症状が見られるわけではなく、突然発熱することもあります。

突発性発疹の初期症状は、他のウイルス感染症と似ているため、診断が難しいです。特に発熱だけで突発性発疹と診断することはできないため、発疹が出るまで、親は子どもの体調を注意深く観察する必要があります。

突発性発疹の合併症として熱性けいれんが挙げられます。高熱が続く間にけいれんを起こすことがあり、特に5分以上続く場合や左右非対称のけいれんが見られる場合は、迅速な救急搬送が必要です。けいれんが起きた場合は、まずは落ち着いて子どもの様子を観察し、冷静に対応してください。

これらの症状がみられた場合、小児科や皮膚科への受診を推奨します。

突発性発疹(小児バラ疹)の検査・診断

突発性発疹の診断は、主に臨床症状に基づいて行われます。特に、発熱と発疹の経過が診断の鍵となります。経過次第で判断するため、発疹が出る前に突発性発疹と確定診断することは困難です。

突発性発疹の確定診断には、血液検査やPCR法、別感染症との鑑別が必要です。

血液検査

血液検査でヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)やヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)の抗体を測定する方法があります。また、急性期の血液からウイルスを分離することも可能です。しかし、これらの検査は一般的には行われず、臨床症状に基づいて診断されることが多いです。

PCR法

PCR法を用いてウイルスDNAを検出することも可能ですが、これも通常の診断には用いられません。PCR法は、ウイルスの遺伝子を増幅して検出する方法であり、非常に高感度ですが、検査設備が整った医療機関でしか行えないことが多いです。

別ウイルス感染症との鑑別

突発性発疹の診断は、他のウイルス感染症との鑑別が重要です。例えば、麻疹や風疹、水痘なども発疹を伴う感染症のため、これらとの区別が大切です。麻疹や風疹は、発疹が出る前に特有の症状が見られることが多く、発疹の分布や形状も異なります。水痘は、水疱を伴う発疹が特徴であり、突発性発疹とは異なる症状です。

突発性発疹(小児バラ疹)の治療

薬物療法

突発性発疹の治療は、主に対症療法が中心です。特別な治療法や抗ウイルス薬は存在せず、症状に応じたケアを必要とします。高熱が続く間は、解熱剤を使用して体温を下げるよう、アセトアミノフェン(カロナール)などが用いられますが、医師によって対応は変わります。

水分摂取

発熱中は、子どもが十分に水分を摂取できるように心がけてください。高熱によって体内の水分が失われやすいため、こまめな水分補給で脱水症状を防ぐことが大切です。

十分な休息や栄養補給

突発性発疹の治療には、十分な休息や栄養を摂ることが大切です。特に発熱中は、子どもが快適に過ごせるように室温を調整し、適度な湿度を保つことが推奨されます。子供の症状が落ち着いて、食欲が出てきた場合は、通常の生活に戻ることができます。

突発性発疹(小児バラ疹)になりやすい人・予防の方法

突発性発疹は、生後6か月から18ヶ月の間に感染することが多く、ほとんどの子どもが3歳までに一度は感染すると言われています。

予防方法は、感染経路を遮断することです。ウイルスは唾液中に存在し、飛沫感染や接触感染を通じて広がるため、手洗いやうがいを徹底し、感染者との接触を避けましょう。家庭内での感染も多いため、親がウイルスを保有している場合は、子どもとの接触に注意を払う必要があります。

親が使用した食器やスプーンの共有、キスなどの行為を通じてウイルスが子どもに伝播することがあります。そのため、不用意な接触を避け、感染を広げない対策を講じることが大切です。

関連する病気

  • 熱性けいれん
  • 脳炎
  • 脳症
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