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手足口病
本多 洋介

監修医師
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

手足口病の概要

手足口病は、主に乳幼児に多く見られるウイルス性疾患で、手、足、口の粘膜に特徴的な発疹や水疱が現れます。夏から秋にかけて流行することが多く、特に保育園や幼稚園などで集団感染が発生しやすいです。感染力が強く、特に3歳以下の乳幼児がかかりやすいですが、成人でも免疫がない場合には感染することがあります。

通常、軽症で済むことが多く、1週間から10日程度で自然治癒します。しかし、まれに重篤な合併症を引き起こすことがあり、特にエンテロウイルス71型による感染では、脳炎や髄膜炎などの中枢神経系の合併症が見られることがあります。

手足口病で現れる手足や口の粘膜の小さな水疱や発疹は、通常、痛みを伴うことが少なく、かゆみを感じることがあります。 しかし、口内の水疱は食事や飲み物を摂取する際に痛むことがあります。この水疱の痛みの影響で、特に幼児では食欲不振や脱水症状を引き起こすことがあります。 感染が広がりやすい環境では、手洗いやアルコール消毒の徹底、感染者との接触を避けることが手足口病の予防になります。

手足口病の原因

手足口病の主な原因は、エンテロウイルス属のウイルス、特にコクサッキーウイルスA16型とエンテロウイルス71型です。このウイルスは、感染者の唾液、鼻水、便、または水疱の中の液体を介して伝播します。特に、感染者がくしゃみや咳をする際に飛び散る飛沫や、感染者が触れた物に触れることで感染が広がります。

手足口病のウイルスは非常に耐久性があり、数日間生存します。そのため、感染を防ぐためには、手洗いやアルコール消毒などの衛生管理が非常に重要です。 また、保育園や幼稚園などの集団生活を送る場所では、感染が広がりやすいため、特に注意する必要があります。

感染が疑われる子供は、他の子供と接触しないように隔離しなければなりません。

また、保育士や親も感染を防ぐために、定期的に手を洗い、感染者と接触した後は手指の消毒を徹底しましょう。手足口病のウイルスは、感染者の便にも含まれるため、特にオムツ替えの際には感染しやすいです。オムツを替えた後は、必ず手を洗い、衛生状態を保つことで感染拡大を防止できます。

手足口病の前兆や初期症状について

手足口病の潜伏期間は通常3〜5日間です。初期症状としては、発熱、食欲不振、倦怠感などが見られます。これらの症状は風邪に似ており、初期段階で手足口病と判断するのは難しいことがほとんどです。

最初の発症から1〜2日以内に、手のひら、足の裏、口の中に小さな赤い斑点が現れ、次第に水疱に変わります。口内の水疱は痛みを伴うことが多く、特に幼児では食事や飲み物を摂取するのが難しくなることがあります。この痛みの影響で、脱水症状を引き起こす可能性があるため、十分に水分補給をする必要があります。

また、手足の水疱はかゆくなることがあるので、子供がかきむしることで二次感染を引き起こすリスクがあります。発疹や水疱は通常、1週間から10日間でかさぶたとなり、最終的には治癒します。

手足口病は、症状が比較的軽いことが多いですが、まれに重篤な合併症になることがあるため、症状が悪化した場合には医師の診察を受けなければなりません。特に高熱が続いたり、激しい頭痛や嘔吐、意識の低下などの症状が見られる場合は、直ちに医療機関を受診する必要があります。感染の拡大を防ぐためには、家庭内での衛生管理も欠かせません。

このような症状がみられたら、お子さんの場合は小児科、大人の場合は内科や皮膚科を受診して適切な検査・治療を受けることをおすすめします。

手足口病の検査・診断

手足口病の診断は主に症状に基づいて行われます。手足や口内に典型的な発疹や水疱が見られる場合、特に夏から秋にかけての流行時期には、診断が比較的容易です。しかし、症状が軽微であったり初期症状のみの場合、他のウイルス性疾患との区別が難しいことがあります。そのため、診断を確定させるには、追加の検査をします。

検査としては、主に咽頭ぬぐい液や便のウイルス培養、PCR法によるウイルス遺伝子の検出が行われます。この検査により、手足口病を引き起こすウイルスの種類を特定できます。また、血液検査により、体内の炎症反応や免疫反応の状況を確認することもあり、重症化のリスクや他の合併症の有無を判断する基準となります。

また、手足口病の症状が重篤である場合や、合併症の疑いがある場合には、さらに詳細な検査が行われることがあります。例えば、脳炎や髄膜炎の症状がある場合には、脳脊髄液の検査が必要となることがあります。

手足口病の治療

手足口病の治療は、主に対症療法が中心となります。現時点で、手足口病に対する特効薬は存在しないため、症状の緩和を重視した治療が行われます。発熱に対しては解熱剤が使用され、痛みを伴う口内炎や喉の痛みに対しては鎮痛剤や口内用ジェルが処方されることがあります。

また、脱水症状を防ぐために、十分な水分補給も意識しなければなりません。特に幼児では、飲み物や冷たい食べ物(例:アイスクリーム、ゼリーなど)を摂取しやすいように工夫することが必要です。痛みが強くて食事が摂りにくい場合には、医師に相談して適切な治療を受けましょう。

さらに、家庭内での衛生管理によって手足口病の感染拡大を防ぐことができます。感染者との接触を避け、使用した食器やタオルは他の家族とは別に扱いましょう。また、手洗いやアルコール消毒を徹底し、感染拡大のリスクを最小限に抑えることも求められます。

重症化するケースでは、入院治療が必要となることもあります。特に、脱水症状が著しい場合や、脳炎や髄膜炎の症状が現れた場合には、適切な医療機関での治療が不可欠です。医師の指導の下、適切なケアを受けることが回復への鍵となります。

手足口病になりやすい人・予防の方法

手足口病は、特に3歳以下の乳幼児がかかりやすい疾患です。これは、免疫力が十分に発達していないためであり、保育園や幼稚園などの集団生活を送る環境では、感染のリスクが高まります。また、免疫が低下している成人や高齢者も感染する可能性があります。

手足口病の予防には、日常生活での衛生管理が非常に重要です。特に、手洗いの徹底が効果的です。外出先から帰宅した後や食事の前後、トイレの後には、石鹸と流水でしっかりと手を洗いましょう。また、アルコール消毒液を利用することで、手指のウイルスを除去することができます。

さらに、感染者との接触を避けることも重要です。家庭内で感染者が出た場合には、感染者が触れた物品を定期的に消毒し、共有物の使用を避けるように注意します。また、保育園や幼稚園では、感染が疑われる子供を迅速に隔離し、他の子供たちへの感染拡大を防ぐ対策を取りましょう。

手足口病の予防接種は現時点で存在しないため、日常的な衛生管理と感染者との接触を避けることが最も効果的な予防策です。これらの対策によって、手足口病の感染リスクを大幅に減らすことができます。

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