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続発性アルドステロン症
前田 広太郎

監修医師
前田 広太郎(医師)

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2017年大阪医科大学医学部を卒業後、神戸市立医療センター中央市民病院で初期研修を行い、兵庫県立尼崎総合医療センターに内科専攻医として勤務し、その後複数の市中急性期病院で内科医として従事。日本内科学会内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本医師会認定産業医。

続発性アルドステロン症の概要

続発性(二次性)アルドステロン症は、副腎以外の臓器からのシグナルにより副腎でのアルドステロン産生が過剰になる病態です。高血圧を呈し、診断には血漿アルドステロン値やレニン活性を確認します。原因により治療は異なります。

続発性アルドステロン症の原因

アルドステロンは、副腎皮質で産生されるステロイドホルモンです。アルドステロンは腎臓の皮質集合管主細胞に作用し、尿中のナトリウムを血管内に再吸収し、カリウムを尿中に排泄する働きがあります。ナトリウムが体内に貯留することにより水分も貯留するため、血圧の上昇をきたします。また、アルドステロンは血管平滑筋に作用することで血圧のコントロールにも関連しています。交感神経による刺激や、腎臓の血流量が減少したり、尿細管ナトリウム濃度の低下が起こると、腎臓からレニンというホルモンが分泌されます。レニンは肝臓などで産生されたアンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンⅠというホルモンに変換する働きがあります。アンジオテンシンⅠはそのあとアンジオテンシンⅡに変換されます。アンジオテンシンⅡが血管収縮作用があることから血圧を上昇させ、更に副腎でのアルドステロンの産生を促します。

続発性アルドステロン症は、何らかの原因によりレニンが上昇するため、アンジオテンシンⅡによる血管収縮作用が過剰になり高血圧を呈し、アルドステロンも過剰となる病態を示します。原因としては、腎動脈の狭窄や閉塞・収縮、心不全や腹水を伴う肝硬変やネフローゼ症候群といった疾患により発症します。その機序としては、血管内脱水によりレニンが増加するためと考えられています。

続発性アルドステロン症の前兆や初期症状について

多くの場合、唯一の症状は高血圧です。低カリウム性アルカローシスがある場合には発作性の筋力低下や、一過性の麻痺、筋肉のけいれんなどが出現します。原疾患によっては浮腫や腹水がみられることもあります。

続発性アルドステロン症の検査・診断

原因不明の高血圧を認め、アルドステロン過剰を疑った場合、血液検査でナトリウムやカリウムなどの電解質、血液ガス検査で代謝性アルカローシスの有無、血漿アルドステロン値と血漿レニン活性を確認します。

原発性アルドステロン症と続発性アルドステロン症では、両方とも電解質は低ナトリウム血症、低カリウム血症となる傾向があり、代謝性アルカローシスを呈します。原発性アルドステロン症ではアルドステロンが副腎で過剰産生されることから、ネガティブフィードバックにより血漿レニン活性は低下します。一方、続発性アルドステロン症は血漿レニン活性が上昇する病態が本態であり、血漿アルドステロンと血漿レニン活性はいずれも上昇する点が鑑別の方法となります。正確な診断のためには、レニンーアンジオテンシン系に影響を与える可能性のある薬剤(アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシン拮抗薬、β遮断薬、サイアザイド系利尿薬など)を数週間中止してから検査することが望ましいとされます。腹部超音波検査では、腎動脈血流を確認し、狭窄や形態異常がないか確認します。必要に応じて造影CTやMRAで腎血管形態や血流を評価します。また、補助検査としてカプトプリル腎シンチグラフィ、選択的腎静脈レニン測定、カプトプリル負荷後の血漿レニン活性の検査を行う場合もあります。

続発性アルドステロン症の治療

続発性アルドステロン症の治療は原疾患の治療を行います。腎動脈狭窄症の場合は血行再建術を検討します。ネフローゼ症候群によるものであれば、ネフローゼをきたしている原疾患の治療を行います。原疾患の治療が困難な場合、特に肝硬変による腹水貯留などでは、スピロノラクトンやエプレレノンといったアルドステロン受容体拮抗薬や、カリウム保持性利尿薬の投与を検討します。また、高血圧に対してはアンジオテンシン変換酵素阻害薬をはじめとした降圧薬の内服を行いますが、腎動脈狭窄症がある場合は腎機能低下を誘発する可能性があるため、降圧薬の選択は慎重に行う必要があります。

続発性アルドステロン症になりやすい人・予防の方法

続発性アルドステロン症を引き起こす腎血管性高血圧は、軽度高血圧の患者では1%未満の頻度とされていますが、中等度や重度の高血圧症性網膜症などを伴う場合などでは、高い頻度で認められるとされます。腎血管性高血圧発症の予防方法は確立されていません。肝硬変や心不全、ネフローゼ症候群により続発性アルドステロン症を発症する場合は、原疾患の予防が有用です。

参考文献

  • 1)Montori VM, Young WF Jr. Use of plasma aldosterone concentration-to-plasma renin activity ratio as a screening test for primary aldosteronism. A systematic review of the literature. Endocrinol Metab Clin North Am . 2002 Sep;31(3):619-32
  • 2)西川 哲男. アルドステロン. 臨床検査 52巻 11号 pp. 1243-1247. 2008
  • 3)Up to date:Treatment of unilateral atherosclerotic renal artery stenosis
  • 4)Bhalla V, et al. Revascularization for Renovascular Disease: A Scientific Statement From the American Heart Association. Hypertension. 2022;79(8):e128. Epub 2022 Jun 16.
  • 5)Up to date:Evaluation of secondary hypertension

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