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尿管腫瘍
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

尿管腫瘍の概要

尿管腫瘍は、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ管である「尿管」に発生する腫瘍で、問題となることが多いのは尿管癌です。多くは尿路上皮から発生する尿路上皮癌に分類され、腎臓にできる腎細胞癌とは性質や治療法が異なります。早期には症状がほとんどなく、健診の尿検査で血尿を指摘されて発見されることが多いです。典型的な初期症状は痛みを伴わない血尿で、腫瘍が大きくなると尿の流れが妨げられ水腎症を起こし、腰や背中の痛みにつながります。診断には尿検査や超音波検査のほか、膀胱鏡、尿管鏡、尿路造影検査やMRIが用いられます。治療の基本は外科的切除で、腎臓・尿管をまとめて摘出する腎尿管全摘術が標準です。低リスクの症例では尿管部分切除も検討されます。再発や転移例のほか、手術の前後には化学療法が行われ、近年では免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の使用も進んでいます。発症リスクとして最も重要なのは喫煙で、長期喫煙者では非喫煙者の7倍以上にリスクが上昇するとされます。薬剤や化学物質への曝露、尿路結石などによる慢性炎症も危険因子です。予防には禁煙が最も効果的であり、健診で血尿を指摘された場合には早期に受診することが重症化予防につながります。

尿管腫瘍の原因

尿管腫瘍は、腎臓から膀胱へと尿を運ぶ細い管である尿管に発生する腫瘍のことをいいます。問題となるのは主に尿管癌なので、今回の記事では尿管癌に注目していきます。尿管の内腔は「尿路上皮」という細胞で覆われており、多くの症例はこの尿路上皮から発生する「尿路上皮癌」に分類されます。腎臓にできる「腎細胞癌」とは性質が異なり、診断・治療のアプローチも大きく違います。
発症には、化学物質の長期的な曝露や慢性的な炎症などが関係していると考えられています。リスク因子となる物質が長期間尿中に排泄されることで、尿管の内側を覆う細胞にダメージが蓄積し、長い年月を経て腫瘍化するのではないかと推測されています。

尿管腫瘍の前兆や初期症状について

尿管腫瘍は早期には自覚症状が乏しく、健診の尿検査で血尿を指摘されて初めて気づかれることも少なくありません。
最も典型的な症状は血尿であり、特に痛みを伴わず尿が赤っぽくなる「無症候性血尿」が特徴的です (参考文献1,2)。腫瘍が進行して尿の通り道が狭くなっていくと尿が膀胱に流れなくなり、水腎症という状態になります。水腎症の症状としては腰や背中の痛みがあります。

腫瘍性疾患に共通することですが、早期発見・早期治療が重要です。健診で血尿を指摘された場合や、原因不明の血尿が続く場合は泌尿器科での精査が勧められます。

尿管腫瘍の検査・診断

最初に行われるのは尿検査や超音波検査です。尿検査では尿中にどのような細胞や物質が含まれているのかを短時間で確認でき、超音波検査は簡便に水腎症の有無を確かめることができます。似たような症状が出る疾患に膀胱癌があるので、尿道から管をいれて膀胱をカメラで観察することで鑑別をすることができます。この検査を膀胱鏡検査といいます。

これらの検査結果から、腎盂から尿管の癌が考えられる場合には、尿細胞診や尿管鏡検査、尿路造影検査、MRI検査を行います。尿細胞診では尿中に悪性腫瘍を示唆するような異常な細胞が排出されていないかを顕微鏡で確かめるものです。尿管鏡検査で腫瘍がみつかれば、組織を一部採取して、顕微鏡で腫瘍の性状を確かめます。

これらの検査結果を総合して、尿管腫瘍のタイプや進行度を判定します。

尿管腫瘍の治療

尿管癌であった場合、治療の基本は外科的切除です。標準的には腎臓・尿管・膀胱の一部をまとめて摘出する「腎尿管全摘術」が行われます (参考文献1, 2)。手術方法には開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術があり、症例に応じて選択されます。低リスクである場合には腎臓を温存して、切除範囲を癌の周りまでに留めることもあります。

化学療法は手術の効果を高める目的のほか、手術で治すことができない場合にも行います (参考文献2)。近年では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が用いられるようになってきています。

尿管腫瘍になりやすい人・予防の方法

尿管癌は高齢男性に多いとされますが、他にもいくつかのリスク因子が知られています。尿管癌発症リスクの代表的なものは以下の通りです (参考文献2, 3)。

  • 喫煙:最も重要なリスク因子であり、尿管がんを含む腎盂尿管癌の調査では、非喫煙者と比べて3倍、長期喫煙者では7倍以上の発症リスクがあるとされています (参考文献3)。

  • 薬剤・化学物質曝露:シクロホスファミドやフェナセチンといった薬剤、ベンジジン・ナフタレンといった化学物質への曝露が発症に関与します。

  • 慢性炎症:尿路結石や尿路閉塞による持続的な炎症もリスク因子です。

予防のために最も重要なのは禁煙です。さらに健診で血尿を指摘された際には必ず受診し、早期発見につなげることが重症化予防になります。



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