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前田 広太郎

監修医師
前田 広太郎(医師)

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2017年大阪医科大学医学部を卒業後、神戸市立医療センター中央市民病院で初期研修を行い、兵庫県立尼崎総合医療センターに内科専攻医として勤務し、その後複数の市中急性期病院で内科医として従事。日本内科学会内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本医師会認定産業医。

尿管瘤の概要

尿管瘤とは、尿管出口部の狭窄により尿管の末端が瘤(こぶ)のように膨らんだ状態で、重複腎盂尿管のみならず単一腎尿管に発生することもあります。女児に多く、新生児期から乳児期に瘤が尿道内に嵌頓する場合があります。尿路感染は下部尿路症状を契機に発見されることもあります。診断は超音波検査を行い、膀胱内の嚢胞性腫瘤を確認します。治療は自然軽快は期待できないことから、外科的治療を要します。

尿管瘤の原因

尿管瘤と診断された症例のうち80%が重複腎盂尿管に伴うものです。瘤が膀胱内に限局する単純性尿管瘤と、瘤先端部が尿道内まで広がる異所性尿管瘤に分類されます。60~80%が膀胱頸部までおよぶ、もしくは膀胱頸部を超えて瘤が存在する異所性尿管瘤とされます。異所性尿管瘤開口部は膀胱三角部の正面から離れているため、尿管出口部狭窄や膀胱尿管逆流が同時にみられる場合もあります。両側に発症する例は5~22%程度とされます。

尿管瘤の前兆や初期症状について

尿管瘤による症状は大きく2つに分けられます。1つは尿路感染症で、尿管瘤による尿路閉塞、もしくは尿逆流によるものです。比較的早期に症状を呈し、最も一般的なのは出生後数か月以内に発熱性尿路感染症を契機に診断されるケースです。尿路感染の場合、発熱や下腹部痛、腰背部痛、頻尿や尿意切迫感などの下部尿路症状が症状としてあります。2つ目は尿管瘤が膀胱出口部を閉塞することによる尿排出障害です。胎児期や新生児期に瘤が尿道内に嵌頓し、尿閉となる場合や外尿道口から脱出する場合があります。さらに、膀胱出口部閉塞による膀胱内圧上昇がおこり、尿管瘤がない尿管での尿逆流とそれに伴う症状が出現したりします。また、瘤内に結石が形成されて血尿を伴うこともあります。

近年では、胎児超音波検査の普及とともに、胎児水腎症として無症候性に発見されることが多いです。胎児期に尿管瘤が指摘されますが、多くの場合は羊水量は保たれており、胎児治療の適応となることはまれです。尿管瘤による下部尿路通過障害をきたし、羊水減少を認める場合には胎児治療を考慮します。

尿管瘤の検査・診断

腎膀胱超音波検査を行います。超音波検査で、膀胱内に嚢胞性腫瘤として確認されます。CT、MRI、膀胱ファイバースコープでも局在を確認できます。尿管瘤では重複腎盂、尿管であることが多く、腎盂の拡張や形成不全がないか、上部尿路も評価します。尿管瘤では膀胱尿管逆流を合併することがあり、排尿時膀胱造影を行い逆流の有無を確認します。

尿管瘤の治療

尿管瘤は解剖学的・形態学的な疾患であるため、自然軽快は期待できません。治療の目的は、尿路感染をコントロールし、かつ将来の尿失禁を予防することです。手術の適応や方法に関しては施設によって異なる点に注意が必要です。

新生児期に瘤の尿道内嵌頓により尿閉となった場合には、直ちに経尿道的尿管瘤切開術を行います。予防的抗菌薬の投与も行われますが、基本的には有症状であれば手術療法が選択されます。この場合、患側の腎機能により術式が変わります。腎機能が保たれていれば下部尿路再建・修復が行われます。一方、患側の腎臓の萎縮や水腎・水尿管が強く、腎実質がほとんどなく腎機能が不良な場合、患側の腎摘出術が行われます。尿管瘤では経尿道的に尿管瘤にレーザーで径1~2mm程度の穴を開ける開窓術が行われます。膀胱尿管逆流が起こった場合は、尿管瘤摘出と尿管膀胱新吻合術や膀胱三角部・膀胱頸部形成術などが行われることになります。異所性尿管瘤では経尿道的尿管瘤切開術のみで追加手術が必要になることは少ないとされますが、全体としては、60~80%で追加の手術が必要となるとされます。

予後については一般的には良好とされます。非常に大きな異所性尿管瘤や両側性の異所性尿管瘤では先天的に膀胱三角部から尿道にかけて筋層が脆弱な場合があり、尿失禁がトイレトレーニング終了後にも持続することがあり、排尿状態に関して長期の経過観察が必要となることもあります。

尿管瘤になりやすい人・予防の方法

女児に多いです。正確な有病率は不明ですが、病理解剖では500人に1人が尿管瘤があったとの報告もあります。約80%が重複尿管に合併します。胎児期の治療として、重度の尿路閉塞と羊水過少を伴う重症例において、妊娠21週前後で超音波ガイド下で尿管瘤減圧術を試みた報告もあるものの、予防の方法は確立されていません。

参考文献

  • 野口 満:膀胱尿管逆流・異所性尿管・尿管瘤. 腎と透析 97巻 7号 pp. 515-520. 2024
  • 西 盛宏, 末永 信太:乳幼児によくみる泌尿器疾患 乳児の重複腎盂尿管・尿管瘤(1). 小児科診療 85巻 3号 pp. 285-289. 2022
  • 松井 太, 他:乳幼児によくみる泌尿器疾患 乳児の重複腎盂尿管・尿管瘤(2). 小児科診療 85巻 3号 pp. 291-295. 2022
  • Up to date:Ureterocele
  • Chalouhi GE, et al. Prenatal incision of ureterocele causing bladder outlet obstruction: a multicenter case series. Prenat Diagn. 2017;37(10):968. Epub 2017 Aug 24.

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