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前田 広太郎

監修医師
前田 広太郎(医師)

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2017年大阪医科大学医学部を卒業後、神戸市立医療センター中央市民病院で初期研修を行い、兵庫県立尼崎総合医療センターに内科専攻医として勤務し、その後複数の市中急性期病院で内科医として従事。日本内科学会内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本医師会認定産業医。

尿道狭窄の概要

尿道狭窄とは、尿道壁の伸び縮みする機能が低下することにより、尿道内腔が狭くなり、下部尿路症状を呈する病態です。先天性と後天性があり、後天性の半数は医原性です。尿勢の低下や残尿感といった下部尿路症状を呈します。尿流量測定や尿路造影、超音波検査などで診断します。治療は尿道ブジー(細長い管を尿道に入れること)などで拡張したり尿道を切開したりしますが、難治性の場合は尿道再建術を行います。

尿道狭窄の原因

尿道狭窄は大きく分けると先天性と後天性に分類されます。先天性尿道狭窄は胎生期の発生異常により発症します。小児の尿道狭窄はまれな疾患とされます。尿道狭窄は部位によって分類され、外尿道口狭窄(尿の出口が狭くなる)、前部尿道狭窄(尿の出口から陰茎の根本あたりまで)、それより体の中にある後部尿道狭窄(前立腺の手前から膀胱にかけて)に大別されます。小児の外尿道口狭窄はおむつかぶれによるものが多いとされ、亀頭の包皮の手術で環状切除をされている児に多く、本邦ではまれです。小児における前尿道狭窄の多くは医原性、外傷性です。医原性に関しては尿道下裂といった先天性疾患に対する術後の合併症としての尿道狭窄が多いとされます。小児の後部尿道狭窄は成人同様に骨盤外傷によるものが多いとされます。重篤な骨盤外傷において尿道が損傷してしまうリスクは成人よりも高く、より体の内部に近い部位の尿道が損傷してしまうことが多いとされます。

後天性尿道狭窄は炎症性、医原性、外傷性、その他に分類されます。炎症性尿道狭窄は以前は淋菌感染や結核菌感染に続発して発症しましたが、現在では疾患に対する早期治療が行われることが多くまれとされます。医原性尿道狭窄は尿道カテーテル留置(尿量を測る目的等でに尿道に管を入れること)や膀胱鏡などの内視鏡操作に伴う尿道粘膜の損傷・線維化・感染の合併により起こり、尿道海綿体尿道下裂術後の手術部位や、放射線治療後にも尿道狭窄は起こりえます。

外傷性尿道狭窄は骨盤骨折や騎乗型外傷(股ぐらを強く打ってしまうケガ)による尿道損傷の治癒過程で発症します。骨盤骨折では後部尿道(膜腰部・前立腺部)、騎乗型外傷では球部尿道に狭窄をきたします。その他には、硬化性萎縮性苔癬、閉塞性乾燥性亀頭炎といった疾患で起こります。

女性での尿道狭窄は比較的まれであり、正確な病因は不明であり、厳密な診断基準もありません。女性の尿道狭窄では遠位尿道狭窄(尿の出口に近い部分)の狭窄が最も多いとされ、尿道ブジーによる拡張を行っても再狭窄を繰り返すことも少なくないです。

尿道狭窄の前兆や初期症状について

尿道狭窄の程度に応じて様々な下部尿路症状を呈します。尿線が細くなったり尿勢の低下(49%)、残尿感(27%)、尿線散乱(13%)、乏尿(10%)、遷延性排尿(尿が出始めるまで時間ががかかること)、血尿、頻尿、排尿時痛などがあります。排尿症状が高度になり残尿量が増大すれば、溢流性尿失禁(尿が膀胱にたまっているが外に漏れ出してしまうこと)や尿閉(尿がでないこと)をきたすこともあります。慢性尿閉が持続すると、膀胱尿管逆流現象や水腎症といって尿が外に出ずに尿管や腎臓に圧力が加わってしまい、腎後性腎不全となることもあります。残尿量が多いと尿路感染症のリスクが増大し、膀胱炎や腎盂腎炎による背部痛、男性では精巣上体炎や前立腺炎による会陰部・睾丸の痛み、膿ができたり尿道皮膚瘻(皮膚と尿道が繋がって皮膚から尿が出てしまうこと)となることもあります。

尿道狭窄の検査・診断

病歴の聴取、陰部周辺の診察の後、尿流量測定と残尿測定、尿道造影や尿道内視鏡検査、腎膀胱超音波検査を行います。外傷性尿道狭窄を呈している場合で周囲臓器の評価が必要な時はCTやMRIを撮像します。

尿道狭窄の治療

狭窄部位、程度、長さ、最大尿流率、尿路感染の有無の評価で治療適応が決まります。治療適応は最大尿流量10ml/秒以下の場合で、下部尿路症状や反復性尿路感染を伴うものが治療対象となります。

狭窄部位が1か所で1㎝未満の場合、ブジーやバルーンで尿道拡張を行ったり、尿道内視鏡で狭窄部を切開する内尿道切開術を施行します。尿道ステント(尿道に入れるプラスチックや金属製の管)を留置することもありますが、再狭窄率が高いため、再狭窄予防に定期的尿道ブジーを必要とすることがあります。

術後再狭窄するリスク因子は、2か所以上の狭窄、2cm以上の狭窄、狭窄部位の伸展性不良、狭窄部位(振子部・膜腰部)、再手術といったものがあります。治療抵抗性の場合は尿道再建術を行います。

骨盤骨折に伴う後部尿道狭窄に対しては受傷後3~6ヶ月して損傷部位の瘢痕化が落ち着いた段階で手術を行います。小児の後部尿道狭窄で骨盤外傷直後は全身状態が不良であることが多いため、膀胱瘻(膀胱から直接体外へ尿の通り道をつくること)を造設し、状態が落ち着いてから手術を行います。

尿道狭窄になりやすい人・予防の方法

尿道狭窄は男性に多く、女性ではまれです。若年者で10000人に1人、55歳で2人、65歳で4人、65歳以上で10人程度と報告されています。医原性のものが少なくなく、45%が尿道カテーテル留置によるものという報告もあります。内視鏡検査や尿道カテーテル留置の際に潤滑ゼリーを十分に使用することが予防となります。

参考文献

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  • 守屋 仁彦:小児の尿道狭窄に対する尿道形成術. 臨床泌尿器科 76巻 1号 pp. 46-49. 2022.
  • 嘉村 康邦:女性の尿道狭窄に対する尿道形成術. 臨床泌尿器科 76巻 1号 pp. 50-54. 2022.
  • 日本泌尿器科学会:尿道狭窄症診療ガイドライン 2024年版. 医学図書出版. 東京. 2024

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