膀胱憩室

監修医師：
前田 広太郎（医師）

膀胱憩室の概要

膀胱憩室とは、膀胱内の粘膜が膀胱壁の筋層を脱出し、膀胱壁の外へ一部拡張した病態を示します。膀胱憩室には先天性膀胱憩室と後天性膀胱憩室があります。先天性膀胱憩室はまれな先天性疾患に合併し男児に多いとされます。後天性膀胱憩室は前立腺肥大や神経因性膀胱など膀胱内に圧力が加わることにより多発的に発症することが多いとされます。頻尿、残尿感などの下部尿路症状を呈し、膀胱腫瘍の誘因にもなります。治療は、症状がない場合やリスクが低い場合などは経過観察となりますが、有症状時や高リスクの場合は内視鏡もしくは外科的切除といった治療が施行されます。

膀胱憩室の原因

膀胱憩室は、膀胱内宮粘膜が一部膀胱壁の筋層外に脱出している状態です。膀胱憩室は内腔から粘膜・粘膜下組織もしくは固有層・薄い平滑筋で構成されています。平滑筋は収縮機能が欠如しており、排尿効率が悪くなることにより残尿量が増大します。膀胱憩室の原因は先天性と後天性に分類されます。

先天性膀胱憩室は様々な先天性疾患に合併することがあり、男児に多いとされます。尿管口や膀胱頸部近くに憩室がある場合が多く、尿管膀胱接合部が90％を占めます。胎児期の発生異常により発症すると考えられています。尿管裂孔部の膀胱憩室はハッチ憩室と言われ、膀胱尿管逆流症を伴うことが多いとされます。憩室が大きくなり、尿管口が憩室内に巻き込まれると通過障害をきたすことがあります。大きな先天性膀胱憩室では、膀胱頸部や尿道を圧迫して、排尿困難や尿閉の原因となることがあります。

後天性膀胱憩室は、神経因性膀胱や下部尿路通過障害が原因による高圧排尿に由来し、高齢者に多く、憩室が多発することが多いです。尿路異常により膀胱内圧が高い状態が持続すると、膀胱筋層の欠損や脆弱部に膀胱憩室が発生します。

膀胱憩室の前兆や初期症状について

頻尿、残尿感、2段排尿、尿勢低下といった自覚症状が出現します。ほかに血尿や、排尿困難、尿路感染症を発症し発見される場合もあります。

膀胱憩室の検査・診断

超音波検査、排尿時膀胱尿道造影、膀胱鏡検査を行い、下部尿路閉塞や膀胱尿管逆流症の有無を確認します。CTやMRIで、隣接臓器との位置関係などを確かめることがあります。鑑別としては膀胱ヘルニア、尿管瘤などがあります。合併症として尿路感染症や膀胱結石、腫瘍形成、腎機能障害などがあり、病状に応じて検査を行います。

膀胱憩室の治療

先天性膀胱憩室で膀胱尿管逆流症や水腎症、反復性尿路感染、尿閉といった症状がある場合は手術となります。無症状でも、憩室の慢性炎症により憩室内腫瘍発生のリスクがあるため、大きい憩室（排尿後直径3cm以上）は手術が推奨されます。

後天性膀胱憩室の場合は、症状がなければ経過観察となります。手術療法の適応は、膀胱結石が大きい場合で、かつ尿路感染を繰り返す、結石を伴う、憩室内腫瘍を認めるといった場合となります。背景疾患として前立腺肥大や尿道狭窄といった下部尿路狭窄がある場合は、その疾患の加療も要します。

手術には低侵襲な内視鏡的手術と開腹手術があります。巨大な膀胱憩室や膀胱内腫瘍がある場合、憩室内に尿管口が開口している場合は内視鏡での治療が困難となり開腹手術が推奨されます。

年齢や合併症などで、耐術能がなく手術が困難な場合は、治療時に残尿が多い場合清潔での間歇的導尿を指導し対症療法を行うことがあります。

膀胱憩室になりやすい人・予防の方法

膀胱憩室はまれな疾患であり、多くは無症状か画像上で偶発的に発見されます。実際の罹患率は不明ですが、発生率は1.7%との報告もあり、10歳未満の小児で発見されることが多いとされます。先天性膀胱憩室の予防は困難です。後天性膀胱憩室は前立腺肥大などの疾患が背景にあることが多く、そういった疾患を予防することが発症の低下に繋がると考えられます。