監修医師:
大坂 貴史(医師)
水腎症の概要
水腎症は、尿が正常に排出されず、腎臓に尿がたまる状態を指します。
主な原因は尿路の閉塞や狭窄で、腎結石、腫瘍、尿管結石などが関与します。これにより腎臓が腫れ、腎機能が低下する可能性があります。
治療は閉塞の解消が基本で、尿管カテーテルの留置や腎瘻を造設することがあります (参考文献 1) 。
水腎症の原因
何らかの原因で尿路の閉塞や狭窄が生じることで腎盂 (腎臓の中央部) の内圧が上昇し拡張することで水腎症が起こります。
尿路閉塞の具体的な原因としては先天性疾患と後天性疾患が挙げられます。
先天性疾患
先天性疾患としては腎盂尿管移行部狭窄や尿管異所開口、膀胱尿管移行部狭窄などが上部尿路 (腎盂・尿管) の閉塞の原因となります。
また、二分脊椎による神経因性膀胱や外尿道口狭窄などが下部尿路 (膀胱、尿道) の閉塞の原因となります。
後天性疾患
一方、後天性疾患としては腎腫瘍、腎盂結石、尿管腫瘍、尿管結石、尿管結核などが上部尿路閉塞の原因となります。
そして、膀胱腫瘍、前立腺肥大症、前立腺がんなどが下部尿路閉塞の原因となります。
このように、先天的な尿路の異常や外傷による尿路の損傷が尿路の狭窄や閉塞の原因となり、水腎症を引き起こすことがあります。
また、結石のように直接的に尿路に詰まり閉塞を起こす原因だけでなく、腫瘍や肥大した前立腺も尿路を圧迫し、狭窄を引き起こす原因となることもあります (参考文献 1) 。
水腎症の前兆や初期症状について
水腎症の症状は原因によって異なります。
尿管結石が嵌頓 (詰まること) による閉塞の場合では側腹部から下腹部にかけて疝痛と呼ばれる激痛を生じます。この痛みは尿管の走行に沿って放散し、血尿や悪心、嘔吐といった症状を伴うこともあります。肋骨脊柱角と呼ばれる腰背部に圧痛と叩打痛を認める場合もあります。
一方で、閉塞が不完全でゆっくりと水腎症が生じる場合は疝痛がなく、漫然とした背部不快感があるだけということもあります。
下部尿路の閉塞の場合、頻尿、残尿感が生じたり、排尿の際に腹圧をかける必要が出たりすることがあります。
最終的に、尿路が完全に閉塞すると無尿 (まったく尿が出ない状態) になります。
水腎症の検査・診断
水腎症の診断には超音波検査が用いられます。腎盂・腎杯が拡張している様子が観察される場合は水腎症と診断されます (参考文献 2) 。
水腎症の原因疾患を調べる際には様々な検査が行われます。
例えば、尿路閉塞が疑われる場合はまず腎臓の超音波検査が行われます。
一方で、腎結石が疑われる場合は非造影CTを行います。
また、尿閉が疑われる場合には膀胱の超音波検査または排尿後膀胱カテーテルが実施されます。
最初の画像検査では診断がつかない場合には逆行性腎盂造影法を伴う膀胱鏡検査が実施されることもあります (参考文献 2) 。
これは、膀胱鏡という膀胱内部を見る機器を用いながら尿管にカテーテルを挿入し、造影剤を尿管へ注入し、そして尿管および腎盂・腎杯の形態の変化を評価するという検査です (参考文献 1) 。
水腎症の治療
症状がなく腎機能の低下も見られない場合は経過観察するのが一般的です。尿検査と超音波検査を定期的に受け、悪化がないか確認しましょう。もし腎機能の低下や痛みなどの症状が出現した場合や、お腹から腫れた腎臓が触れるほど巨大な水腎症の場合は手術が必要になります (参考文献 2) 。
手術は水腎症の原因となっている閉塞の位置によって異なります。
上部尿路閉塞が起きている場合では尿管ダブルJカテーテルの留置や経皮的腎瘻造設術を行い、尿路閉塞を解除します。下部尿路閉塞により尿閉が起きている場合には、尿道からカテーテルを挿入したり、膀胱瘻を造設したりすることで排尿経路を確保することがまず行われます。
急性閉塞の場合はこれらのような治療を行うことで腎機能障害が残らずに回復する場合も多いです (参考文献 1) 。
水腎症になりやすい人・予防の方法
水腎症になりやすい人
各年代ごとに水腎症の原因となりやすい疾患は異なります。
そうした水腎症の原因となりやすい疾患を罹患している人が水腎症になりやすいと考えられるかもしれません。
小児では先天的に尿路が狭窄していることが主な水腎症の原因です。対照的に、若年成人では結石が最も多く、高齢者では前立腺肥大症または癌、結石などが主な原因として挙げられます (参考文献 3) 。
予防の方法
水腎症の予防も、原因となる疾患を予防することが必要となります。ここでは尿路結石の再発予防方法として一般的なものを3つ紹介します。
1つは、1日に食事とは別に約2Lの水分を摂ることです。
2つ目は、バランスのとれた食事をとることです。カルシウム摂取量を1日当たり600~800mgに収め、動物性たんぱく質や塩分の摂りすぎを避けましょう。
そして3つ目は、適度な運動をすることです (参考文献 4) 。
こうした生活習慣によりどれほど予防できるかはわかっていませんが、尿路結石が形成されるリスクを下げることができるかもしれません。
参考文献