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五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

膀胱がんの概要

膀胱がんは、膀胱内の細胞が異常増殖し腫瘍を形成する病気です。膀胱は尿を一時的に蓄える役割を果たす臓器で、腎臓から尿が送られ、尿道を通じて体外に排出されます。膀胱がんの主な種類は、膀胱の内側を覆う移行上皮(尿路上皮)から発生する尿路上皮がん(移行細胞がん)で、全膀胱がんの90%以上を占めます。その他、扁平上皮がんや腺がんなどの稀なタイプもあります。 膀胱がんは、特に男性に多く見られますが、女性も罹患する可能性があります。年齢が上がるにつれてリスクが高まり、特に60歳以上の方に発症しやすいとされています。初期段階から見られる症状としては血尿が最も多い傾向です。 膀胱がんが疑われると膀胱の中に細いカメラを入れて見た目や広さを確認し、組織を取る検査を行います。この検査自体が治療も兼ねていますが、最終的には膀胱の壁にどれくらいの深さまで達しているかに応じて、手術や抗癌剤治療、放射線治療などの追加治療を行います。治療後はほかの多くのがんと同様に再発をしていないかを確認する検査を行い、再発時に早めに対応できるように経過を見ていく必要があります。

膀胱がんの原因

膀胱がんの正確な原因は完全には解明されていませんが、いくつかのリスク要因が知られています。主なリスク要因には以下のものがあります。

喫煙

タバコの煙に含まれる発がん性物質が血液に吸収され、腎臓を通じて尿に排出される際に膀胱を傷つける可能性があります。喫煙者は非喫煙者に比べて3倍以上膀胱がんのリスクが高いとされています。

化学物質への曝露

特定の職業(例えばゴム、染料、皮革、テキスタイル、塗料などの製造業)に従事する人は、アニリン色素やベンジジンなどの有害化学物質に長期間曝露されることが多く、膀胱がんのリスクが高まるとされています。

膀胱がんの前兆や初期症状について

膀胱がんの初期段階では以下のような症状が現れることがあります。

血尿

膀胱がんの初期症状では最も多く、尿に血が混じる(肉眼的血尿)か、顕微鏡でしか確認できない(顕微鏡的血尿)場合があります。膀胱炎といったがん以外の病気では痛みを伴うことが多いのに対して、膀胱がんでは血尿に痛みを伴わないことが多いことが特徴です。痛くないからと放置せず、早めに受診して、検査や治療を受けることが重要です。

頻尿、排尿時の痛み

膀胱の腫瘍が膀胱壁を刺激することで、頻繁にトイレに行く必要があったり、排尿時に痛みを感じることがあります。これらの症状は膀胱炎と似ていますが、なかなか良くならない場合はより詳しい検査を追加することがあります。

尿流の異常

腫瘍が尿道を圧迫することで尿の出が悪くなったり、途切れたりすることがあります。 膀胱がんの前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、泌尿器科です。膀胱がんは膀胱に発生する悪性腫瘍であり、泌尿器科で診断と治療が行われています。

膀胱がんの検査・診断

これらの症状が見られた場合、以下のような検査を行います。

尿検査

尿中に血液やがん細胞が存在するかどうかを確認します。尿細胞診と呼ばれる検査では、尿中の異常細胞を顕微鏡で観察し、がんの可能性を調べます。排尿のみで検査自体の負担が少ないことが特徴ですが、がんがあっても陰性になる偽陰性のこともあり、この検査だけでは判断できません。

膀胱鏡検査

確実性の高い方法として、膀胱内を直接観察するために、膀胱鏡と呼ばれる細い管を尿道から挿入します。異常が見つかった場合は組織の一部を採取して病理検査を行います。場合によっては粘膜面を切除し、検査と治療を兼ねて行います。この内視鏡下で切除することを経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBTと言います。詳細は後述)と呼びます。病理検査の結果が出るまで数日〜2週間程度かかる場合があります。

画像検査

CT、MRI、超音波検査などを使用して、腫瘍の位置や大きさ、他の部位への転移の有無を確認します。これにより、がんの進み具合であるステージを正確に評価し、適切な治療計画を立てることができます。

膀胱がんの治療

膀胱がんの治療法は、がんの進行度や患者さんの体力や持病の状態などによって異なります。主な治療法には以下のものがあります。

手術

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT) 初期段階の膀胱がんに対して行われる手術の一つで、尿道から膀胱鏡という細い管にカメラがついたものを挿入し、膀胱の中から腫瘍を切除します。この手術は低侵襲であり、術後の回復も早いです。 膀胱全摘出術 膀胱の粘膜から少し深い筋層まで達しているような少し進行したがんに対して行われ、膀胱全体と周辺組織(前立腺、精嚢、リンパ節など)を摘出します。尿路を再建するための手術も必要となり、尿路変換術(尿道を新たに形成する手術)を行います。

放射線治療

放射線を用いてがん細胞を殺す治療法で、手術が難しい場合や膀胱を切除せず、温存したい場合、手術後の補助療法として行われます。抗がん剤を併用することでより高い効果を得られる場合があります。

化学療法・免疫療法

抗がん剤を用いてがん細胞を攻撃する治療法です。静脈から抗がん剤を全身に投与したり、膀胱鏡を使って膀胱内に直接抗がん剤などを投与する方法があり、術前・術後の補助療法や、進行がんに対する主な治療法として使用されます。免疫療法は保険適用になっている特定の薬剤を使います。

膀胱がんになりやすい人・予防の方法

膀胱がんのリスクを高める要因として、以下が挙げられます。

喫煙者 タバコを吸う人は吸わない人に比べて3倍以上リスクが高いとされています。 化学物質に職業的に曝露される人 工場労働者など、特定の化学物質を扱う仕事に従事している人。 年齢が高い人 60歳以上の人に多く見られます。 男性 女性よりも男性の方がリスクが高いとされています。

予防策としては、以下の方法が有効です。

禁煙 タバコをやめることで、リスクを大幅に減らすことができます。 職場での安全対策 化学物質を扱う場合は、適切な保護具を使用し、曝露を最小限に抑える。 健康的な生活習慣 バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけることで、免疫力を高め、がんのリスクを下げることができます。これは仮に膀胱がんになった後もとても重要なことです。

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