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グロムス腫瘍
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

グロムス腫瘍の概要

グロムス腫瘍は体温調節や血流調整に関わるグロムス器官から発生する腫瘍です。グロムス器官は主に手足の指先に多く存在し、動脈と静脈がつながる部分で血流を調節することで皮膚の温度を維持する役割を担っています。

グロムス腫瘍は体のどこにでもできる可能性がありますが、なかでも爪の下に発生することが多く、この場合「爪下グロムス腫瘍」と呼ばれます。

特徴的な症状は強い痛みです。腫瘍が神経組織の近くにできることが多いため、わずかな刺激でも激しい痛みを生じることがあります。また寒冷刺激によって痛みが増強することも特徴的です。

ほかにも、爪を通して青紫色やピンク色の斑点として腫瘍を確認できる場合もありますが、小さかったり深い部分にあったりする場合は目視できないことも多いです。また、腫瘍の存在により爪が割れたり変形することがあります。

これらの症状の確認をはじめ、X線検査やCT検査、MRI検査、超音波検査、病理検査など複数の検査結果を総合的に判断して診断します。

良性腫瘍であるためほかの部位へ転移することはなく、適切な治療を受ければ予後は良好です。治療は主に外科的切除をおこない、完全に摘出すれば痛みは消えて再発も少ないとされています。

グロムス腫瘍の原因

グロムス腫瘍の正確な発生原因はまだ解明されていませんが、特定の遺伝子変異によって腫瘍が作られ、細胞の異常な増殖を促進する可能性が示唆されています。

ほかにも外傷後に組織が修復される過程における異常な細胞増殖も、グロムス腫瘍発生の一因と考えられています。

グロムス腫瘍が痛みを引き起こすメカニズムについては、腫瘍内に疼痛を発生させる物質(サブスタンスP)を含む神経線維の存在が関連していると考えられています。

このように、グロムス腫瘍の発生には複数の要因が関与して発症していると考察されており、現時点ではっきりと原因がわからないことが多いです。

グロムス腫瘍の前兆や初期症状について

グロムス腫瘍の特徴的な初期症状は局所的な強い痛みです。とくに爪の下に発生するグロムス腫瘍は、神経に近い場所にできることが多く、わずかな圧迫でも激しい痛みを引き起こす傾向があります。

痛みの性質は「指尖部の疼痛」「圧痛」「寒冷時の痛み」の3つが特徴的です。

視覚的な症状として、爪の下に発生したグロムス腫瘍の場合、爪を通して白色からピンク色、あるいは青紫色の小さな円形の斑点が透けて見えることがあります。ただし、腫瘍が小さい場合や指の深部にある場合、肉眼では確認できないこともあります。

また、腫瘍の存在により爪が変形することもあります。半数近いケースで爪が縦に盛り上がったり割れたりすることがあります。

グロムス腫瘍の検査・診断

グロムス腫瘍は症状の確認や臨床テストをはじめ、画像検査や病理検査によって診断します。

臨床テスト

テストではLove’s pin testやCold testなどをおこないます。

Love’s pin testはペンやピンの先で腫瘍がある部分を押さえたときの痛みの有無をみるテストです。また、Cold testは冷えた水に手を付けたり氷を当てた際に痛みが増強するかどうかをみるテストです。

グロムス腫瘍がある場合、これらのテストで痛みの反応がでます。

画像検査

画像検査はX線検査や超音波検査、CT検査やMRI検査などをおこないます。これらの画像検査によって腫瘍の大きさや位置、グロムス腫瘍に特異的な所見の有無を確認します。

病状の程度によっては、グロムス腫瘍が骨にまで浸潤している様子が確認されることもあります。

病理検査

病理検査では手術で摘出した腫瘍組織の一部を使用して、グロムス腫瘍に特徴的な細胞や組織構造を調べます。

グロムス腫瘍の治療

グロムス腫瘍は主に外科的切除によって治療します。良性腫瘍であるため適切に切除すれば再発のリスクは低く、症状も改善することがほとんどです。

爪の下に発生したグロムス腫瘍の手術では、すぐ上の爪を部分的に切開してアプローチする方法を用います。「爪のボンネットを開ける」ようなイメージで、爪の一部を一時的にめくり上げ腫瘍を摘出した後、再び爪で蓋をするように縫合します。

外見的な観点から爪の変形を防ぐ必要がある場合や、腫瘍が指の腹側にある場合においては、爪をはがさずに横から切除する方法でおこなうこともあります。どのような手術方法を選択するかは、腫瘍の位置や大きさ、患者の希望などを考慮して決定します。

爪の下のグロムス腫瘍の場合、通常は日帰りの手術としておこないます。手術後によって腫瘍による痛みは改善しますが、切開した傷の痛みがしばらくの間続くことがあります。

また、爪を切開した場合は爪の変形が一時的に生じることがありますが、爪が伸びて再生すると多くの場合は元の状態に戻ります。

再発の可能性はわずかにありますが、再発した場合はもう一度外科的切除をします。適切な治療を受ければ完治することが多いです。

グロムス腫瘍になりやすい人・予防の方法

グロムス腫瘍の原因は現時点では解明されていないため、発生のリスクを高める要因も特定されてません。

残念ながら予防法は確立されていないのが現状ですが、一般的な手指の保護として過度な圧迫や刺激、極端な温度変化を避けることで、グロムス器官への負担を軽減できる可能性があります。

とくに寒冷刺激がグロムス腫瘍の症状を悪化させることから、極端な寒さから手指を保護することは症状の管理につながるといえます。

また、グロムス腫瘍の早期発見のためには手指の痛みや爪の変形など、特徴的な症状に注意し異常を感じたらできるだけ早く医療機関を受診することが大切です。

押すと強い痛みがある、寒くなると痛みが増す、爪に変形や変色があるといった症状がある場合は、グロムス腫瘍の可能性を考慮して専門医に相談することをおすすめします。

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