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スティーブンス・ジョンソン症候群
柳 靖雄

監修医師
柳 靖雄(医師)

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東京大学医学部卒業。その後、東京大学大学院修了、東京大学医学部眼科学教室講師、デューク・シンガポール国立大学医学部准教授、旭川医科大学眼科学教室教授を務める。現在は横浜市立大学視覚再生外科学教室客員教授、東京都葛飾区に位置する「お花茶屋眼科」院長、「DeepEyeVision株式会社」取締役。医学博士、日本眼科学会専門医。

スティーブンス・ジョンソン症候群の概要

スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)は、高熱にともない全身の皮膚に紅斑や水疱、びらんが発生する疾患です。とくに口唇や口腔、眼や外陰部などの粘膜に病変が生じやすい点が特徴です。

スティーブンス・ジョンソン症候群は「中毒性表皮壊死症」とともに「重症多形滲出液紅斑(じゅうしょうたけいしんしゅつえきこうはん)」という疾患群に含まれています。

びらんの状態となっている皮膚面積が体表面積の10%未満のものをスティーブンス・ジョンソン症候群、10%以上に拡大したものを中毒性表皮壊死症として区別されます。

スティーブンス・ジョンソン症候群の発症頻度は人口100万人あたり約1〜10人とまれで、適切な治療が遅れると視力低下や失明などの重篤な後遺症を残したり、まれに重症化して命に関わったりすることがあります。

出典:公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター「スティーブンス・ジョンソン症候群」

発症のメカニズムは完全には解明されていませんが、薬剤やウイルス感染、マイコプラズマ感染などがきっかけとなり、免疫系に異常が生じて皮膚や粘膜に症状が現れると考えられています。

治療は原因薬剤の中止やステロイド薬の投与、各症状に対する対症療法を中心に治療します。早期発見や早期治療が重要であるため、異変を感じたらできるだけ早く医療機関に受診することが必要です。

スティーブンス・ジョンソン症候群の原因

スティーブンス・ジョンソン症候群の原因は完全には解明されていませんが、主に医薬品の副作用として発症することが多いとされています。

原因となる薬剤は、痛み止めや熱冷ましなどの消炎鎮痛薬、抗菌薬、抗けいれん薬、高尿酸血症の治療薬などが報告されています。市販薬の総合感冒薬(風邪薬のこと)も原因となることがあります。

薬剤以外の原因としては、マイコプラズマ感染症やウイルス感染症がきっかけとなることがあり、子どもの発症例で多く認められます。

スティーブンス・ジョンソン症候群の前兆や初期症状について

スティーブンス・ジョンソン症候群の初期症状として、高熱が現れ、同時に全身倦怠感や食欲低下などの全身的な症状が出現します。皮膚症状は左右対称的に関節の背面側などに赤い斑点が現れます。

とくに注意を要するのは眼の症状です。両眼の結膜充血やめやに、眼の痛みなどが現れ、程度によっては眼が開けられないほど痛みを感じることもあります。

また、口唇や口腔内、外陰部、肛門周囲などの粘膜に発赤やびらんが生じて出血をきたすこともあります。

薬剤が原因の場合は、原因薬剤の服用開始から数日から数週間以内に発症することが多いです。

スティーブンス・ジョンソン症候群の検査・診断

スティーブンス・ジョンソン症候群は症状の確認を中心に診断します。

日本皮膚科学会のガイドラインによると、主要所見として発熱をはじめ、眼や口唇、外陰部など粘膜における広範囲な出血やびらんが認められます。病理組織学的には表皮の壊死性変化が認められることなどが項目として挙げられています。

出典:日本皮膚科学会ガイドライン「重症多形滲出性紅斑スティーヴンス・ジョンソン症候群・中毒性表皮壊死症診療ガイドライン」

スティーブンス・ジョンソン症候群は早期発見と迅速な診断が重要です。疑わしい症状がある場合は速やかに医療機関を受診して医師の指示に従いましょう。

スティーブンス・ジョンソン症候群の治療

スティーブンス・ジョンソン症候群の治療は原因と考えられる薬剤を直ちに中止することです。しかし、急性期に原因を特定することは困難な場合もあるため、使用中の薬剤は可能な限りすべて中止するのが基本です。

ほかにも、ステロイド薬の全身投与が一般的です。重症例においては、短期間に大量のステロイド薬を投与するステロイドパルス療法を実施することもあります。場合によっては免疫グロブリン製剤の大量静注療法や血漿交換療法(けっしょうこうかんりょうほう:血漿を入れ替える方法のこと)を併用することもあります。

口唇や口腔内、外陰部のびらんに対しては二次感染に注意しながら洗浄し軟膏を塗布します。とくに眼は重症化すると失明する可能性があるため、眼科医による厳重な管理を要します。

スティーブンス・ジョンソン症候群になりやすい人・予防の方法

スティーブンス・ジョンソン症候群は子どもから高齢者まで幅広い年齢層に、男女問わず発症する可能性があります。遺伝はしませんが、近年の研究により特定の体質を持っている人が、特定の薬剤を使用した場合に発症する可能性があることが示唆されています。

現段階では発症メカニズムが解明されていないため、発症を完全に予防することは難しいですが、いくつかの予防策を知っておくことが重要です。

具体的には、過去に薬剤に対してアレルギー反応を示したことがある場合、医師や薬剤師にその旨を必ず伝えましょう。また、薬剤によってスティーブンス・ジョンソン症候群の症状を発症したことがある場合は、原因薬剤の名称を記録しておくことが大切です。

医療機関を受診する際には必ずお薬手帳を持参し、皮膚や粘膜に出現した症状を医師や薬剤師に伝えましょう。

また、市販薬を購入する際もお薬手帳を提示することが大切です。同じ薬剤の成分でも異なる名前で販売されている場合があるため注意しましょう。

何らかの薬剤を服用しているときに高熱や粘膜のびらん、眼の充血、広範囲にわたる皮膚の紅斑などの症状が現れた場合は、すみやかに医療機関を受診し、症状とともに服薬状況なども伝えることが重要です。

関連する病気

  • 重症多形滲出性紅斑
  • 皮膚粘膜眼症候群
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