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クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の概要

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は、手足の一肢またはそれ以上の範囲に「混合型脈管奇形」が広がり、片側肥大もともなう疾患です。

日本では約1,500人が患っていると推測されており、小児慢性特定疾病および指定難病に指定されています。

出典:公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター「クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群とは」

「脈管奇形」とは、血管やリンパ管に生じる構造異常や機能障害のことです。毛細血管奇形や静脈奇形、動脈奇形やリンパ管奇形などがあり、これらが複数組み合わさった状態を「混合型脈管奇形」と呼びます。

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の特徴的な症状は、ポートワイン母斑(地図上の赤いあざ)や拡張して蛇行した静脈、リンパ管機能不全による手足の腫れ、手足の形や左右差などが挙げられます。

これらの症状は出生時から幼児期にかけて気づくことが多く、成長や加齢とともに徐々に悪化する傾向があります。

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は男女差なく発症し、症状が現れる半数以上は幼い子どもとされています。現時点で治療法はなく、症状に応じた対症療法や継続的な管理が必要となります。

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の原因

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は、赤ちゃんが母親のおなかの中で成長する際に血管やリンパ管の発生や分化に問題が生じ、先天性の脈管奇形が生じることが原因と考えられています。

これには「PIK3CA」という遺伝子異常が関連している可能性が示唆されていますが、完全には解明されていません。

また、成長や加齢にともなって症状が悪化するメカニズムについても現段階で解明されておらず、研究が進められています。

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の前兆や初期症状について

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の症状は生まれたときから出現しているケースが多く、成長とともに徐々に明確になってきます。

一般的な初期症状は、手や足に現れる赤いあざ(ポートワイン母斑)です。このあざは通常、皮膚の毛細血管の異常によって生じ、地図状の見た目を示します。

もう1つの特徴的な初期症状は、手や足の片側肥大です。乳幼児の段階で、片側の手や足が反対側よりも大きく見えたり、成長とともにその差が顕著になったりします。

その影響で脚の長さに大きな差が出てくると、足を引きずるような歩き方になったり、側弯症(そくわんしょう:背骨が左右に湾曲すること)になる場合があります。

ときには指の形成異常として、指どうしがくっついた状態(合指症)や一部の指が極端に大きい(巨指症)といった症状が認められることもあります。

さらに、年齢を重ねるにつれて静脈の異常による症状が現れることがあります。皮膚表面に見える静脈が拡張したり蛇行したりして、ボコボコと浮き出たように見えるようになります。

痛みや腫れが出現することもあり、その結果、皮膚の潰瘍や感染、リンパ液の漏れ、出血、皮膚の色調の変化などの症状が出ることもあります。

症状の半数以上は5歳未満で発症し、成長や加齢にともなって増悪する傾向があるため、早期発見と継続的な観察や管理が重要です。

出典:公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター「クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群とは」

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の検査・診断

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は、身体所見の観察や画像検査、病理検査などによって診断されます。

身体所見では、視診や触診によって赤いあざや四肢の片側肥大、静脈の異常などの特徴的な所見の有無を確認します。痛みや腫れの有無や程度についても一緒に確認します。

画像検査ではCT検査やMRI検査をおこないます。血管の異常をより詳細に調べる必要がある場合は、血管造影検査をおこなうこともあります。これらの画像検査によって、異常な血管やリンパ管の構造、分布や血流の状態などを確認します。

また、必要に応じて病理検査をおこなうことで、異常な血管やリンパ管の組織の特徴を確認します。さらに適切な治療へつなげるため、診断の際はほかの血管やリンパ管の疾患との鑑別もおこないます。たとえば「イチゴ状血管腫」や「血管肉腫」など、後天的な病変との区別が必要になります。

これらの検査結果と臨床所見を総合的に判断して診断を確定します。

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の治療

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の根治的な治療法は現在のところ確立されていないため、症状や状態に合わせた対症療法が中心になります。

四肢や軟部組織の肥大の治療

四肢の片側肥大などによる脚長差が歩行に影響する場合は、短い側に高さをつける補高装具を使用して補正します。

外科的な矯正手術として、骨端線成長抑制術や骨延長術などを実施することもあります。

また、軟部組織の過剰な肥大に対して病変部を切除するケースもありますが、病変はびまん性(広範囲に及んでいる状態)であるため完全な切除は難しいケースが多いです。

脈管奇形の治療

血管やリンパ管の奇形に対しては、それぞれの体格や患部の形状に合わせ、弾性ストッキングによる圧迫をおこないます。赤いあざに対してはレーザー照射が効果的なことがあります。

ほかには、痛みや出血、感染症などの合併症に対しても適切な対症療法を実施します。

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群になりやすい人・予防の方法

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群の明確なリスク因子は現在のところ特定されていません。

一部ではPIK3CAなどの遺伝子変異が認められていたり、家族内における発生報告があったりしますが、症例数が少ないためリスクとして断定されていないのが現状です。

発症の明確なメカニズムが解明されていないため、予防法も確立されていませんが、日常生活の注意点に気を付けることで、重症化を予防できます。

日常生活の注意点として、特に体重管理が重要です。体重が増えすぎると体内の血液量も増加し、血管の異常がある部分に負担がかかって症状が悪化する可能性があります。バランスの良い食事と無理のない程度で運動し、適正な体重を維持しましょう。

また、脈管奇形がある部分は血液の流れが滞りやすく感染も起こりやすいため、十分な水分摂取も大切です。とくに異常のある部分の皮膚を清潔に保ち、乾燥を防ぐための保湿ケアもおこないましょう。

症状や生活様式は個々によって大きく異なるため、主治医と相談しながら個々に合った予防策を立てることが大切です。

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