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硬化性萎縮性苔癬
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

硬化性萎縮性苔癬の概要

硬化性萎縮性苔癬は、皮膚の炎症によって、皮膚が白く硬くなる病気です。硬化性苔癬(lichen sclerosus)とも呼ばれています。主に女性の外陰部に起こりやすく、子どもで発症した場合は自然と治ることもあります。

ほかの部位の皮膚や粘膜にも発症する可能性がありますが、原因は明らかになっていません。症状は、かゆみや痛み、皮膚のひび割れなどです。病状が進行すると、性器の変形や排尿困難などを引き起こすこともあります。

硬化性萎縮性苔癬は、慢性的な経過をたどる病気であり、一般的には自然に治ることは少ないため、早期発見と早期治療が大切です。

硬化性萎縮性苔癬の原因

硬化性萎縮性苔癬の原因は、まだ解明されていません。

しかし、自己免疫疾患や遺伝的要因、ホルモンバランスの乱れなどが影響していると考えられています。外陰部の硬化性萎縮性苔癬は、閉経後の女性に多くみられるため、女性ホルモンの低下が関与している可能性も指摘されています。

また、下着の摩擦や細菌感染などがきっかけで発症することもあります。そのため、外陰部を清潔に保ち、皮膚への刺激の少ない下着をつけることが予防につながります。

硬化性萎縮性苔癬の前兆や初期症状について

硬化性萎縮性苔癬の初期症状は、かゆみやヒリヒリとした痛み、皮膚の赤みなどです。皮下出血や水疱ができることもあり、症状が徐々に進行し、皮膚が白く硬くなります。

特に外陰部では、皮膚が薄くなり、ひび割れやただれを起こしやすくなります。

また、自己判断で市販薬を使用すると、症状が悪化する恐れもあるため、症状に気づいたら、早めに専門医の診察を受けて、治療することが大切です。早期に治療を開始することで、症状の進行を抑え、合併症のリスクを減らせます。

硬化性萎縮性苔癬の検査・診断

硬化性萎縮性苔癬の診断は、主に医師による視診および検査を行った上での評価でおこなわれます。

視診では、皮膚の状態を観察し、硬化性萎縮性苔癬の特徴的な症状がないかを確認します。「境界がはっきりしている萎縮を伴う白色硬化性局面がある」と「過角化や表皮の萎縮、液状変性、真皮内の浮腫などの所見がみられる」がみられると、硬化性萎縮性苔癬の診断につながります。

悪性腫瘍やそのほかの合併症が疑われるとき、もしくはほかの病気と区別ができないときは、皮膚生検をおこなう場合があります。皮膚生検では、皮膚の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。組織検査によって、ほかの皮膚疾患との鑑別や、病気の進行度を判断します。

硬化性萎縮性苔癬は、まれに悪性腫瘍を合併することがあるため、定期的な検査が必要です。

硬化性萎縮性苔癬の治療

硬化性萎縮性苔癬の治療は、症状の緩和と進行抑制を目的としておこなわれます。治療法は、症状の程度や発症部位によって異なりますが、主に薬物療法や外科的治療があります。

治療の選択肢は多岐にわたるため、専門医と相談し、一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた治療計画を立てることが重要です。

ステロイド外用治療

ステロイド外用薬は、炎症を抑え、かゆみや痛みの改善を目的に使用します。

症状が軽い場合は、ステロイド外用薬のみで改善することもあります。ステロイド外用薬は、効果が高い一方で、長期使用による副作用のリスクもあります。

また、ステロイド外用薬は、症状が改善しても、再発予防のために継続することがあります。症状の程度や発症部位によって、適切な強さや剤形を選択する必要があるため、医師の指示に従い、正しい方法で使用してください。

タクロリムス外用治療

タクロリムス外用薬は、ステロイド外用薬と同様に、炎症を抑える効果があります。

ステロイド外用薬で副作用が出る場合や、効果が不十分な場合に用いられます。タクロリムス外用薬は、ステロイド外用薬よりも副作用のリスクが低いとされていますが、使用中に皮膚の刺激感やかゆみを感じることがあります。

またタクロリムス外用薬は、免疫抑制作用を持つため、感染症のリスクを高める可能性があります。使用中に副作用と思われる症状や、発熱や皮膚の赤みなどの症状が現れた場合は、医師に相談してください。

光線療法

光線療法は、紫外線を照射することで、炎症を抑える治療法です。

ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬と併用されることがあります。光線療法は、副作用のリスクが比較的低い治療法ですが、効果が出るまでに時間がかかることがあります。

PUVA療法やナローバンドUVB療法など、さまざまな種類がありますが、実施できる医療機関は限られています。
光線療法は、定期的に通院する必要があり、治療期間も長くなることがあります。

外科的治療

外科的治療は、症状が進行し、薬物療法では改善しない場合や悪性腫瘍・尿道口の狭窄といった合併症がある場合におこなわれます。

手術によって、硬くなった皮膚を切除したり、形成手術によって性器の変形を改善したりします。外科的治療は、症状の改善が期待できますが、手術の方法は病変の範囲や状態によって異なり、手術による合併症のリスクもあるため、慎重に検討する必要があります。

硬化性萎縮性苔癬になりやすい人・予防の方法

硬化性萎縮性苔癬になりやすい人は、自己免疫疾患を持つ人、遺伝的要因を持つ人、閉経後の女性などです。予防法としては、外陰部を清潔に保つ、皮膚への刺激の少ない下着をつける、バランスの取れた食生活を送るなどが挙げられます。

硬化性萎縮性苔癬は、早期発見・早期治療が大切です。症状に気づいたら、早めに皮膚科を受診してください。また、硬化性萎縮性苔癬は、再発しやすい病気であるため、治療後も定期的な診察を受けることが重要です。

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