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日光角化症
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

日光角化症の概要

日光角化症は、日光に含まれる紫外線を浴びつづけることで皮膚表面がダメージを受け、皮膚にさまざまな症状をきたす状態です。

日本人の罹患率は、人口10万人あたり約100~120人とされ、白色人種に比べて少ない傾向があります。

(出典:皮膚悪性腫瘍ガイドライン第3版 有棘細胞癌ガイドライン2020 日本皮膚科学会ガイドライン)

日光角化症は皮膚がんの前がん病変(皮膚がんになるリスクが高い状態)の一つです。
治療をせずに放置すると有棘(ゆうきょく)細胞がんという皮膚がんを発症しやすくなることがわかっており、日光角化症は有棘細胞がんのもっとも多い発生原因とされています。

海外のデータでは、日光角化症が有棘細胞がんになる確率は5年で2.5%という報告もあり、日光角化症を患っている期間が長いほど、有棘細胞がんを発症するリスクが高まります。

日光角化症の代表的な原因は、慢性的な紫外線への暴露と言われています。
職業上、長期にわたって日光を浴びつづける人や、高齢者などは、発症リスクが高まります。なお、近年急速な高齢化にともない、患者数は増加傾向にあります。

日光角化症の代表的な症状には、約1~3cmの白い角質が付着した赤い発疹、皮膚表面のしこり、皮膚の炎症や出血などがあります。
顔面や手の甲、前腕などの日光が当たる部位に皮膚症状が起こりやすく、複数の部位に同時に発生したり、時間差で現れたりすることもあります。

日光角化症の治療には、外科的治療や凍結療法、薬物療法、光線力学的療法などがあり、病変の大きさや数などを考慮して適切な治療法が選択されます。

また日光角化症を予防し、将来的な有棘細胞がんの発症リスクを下げるためにも、過度に紫外線を浴びないことが重要です。

日光角化症の原因

日光角化症の代表的な原因は、慢性的な紫外線への暴露と言われています。
長期的に日光を浴びつづけると、紫外線によりダメージを受け、日光角化症を発症すると考えられています。

日光角化症では、p53遺伝子に変異がみられるケースも少なくありません。
p53遺伝子はがんに関わる遺伝子の一つであり、p53遺伝子の変異はがんを発症するリスクを高めることがわかっています。

紫外線を浴びつづけることで遺伝子が変異し、日光角化症や有棘細胞がんにつながる可能性が指摘されています。

日光角化症の前兆や初期症状について

日光角化症を発症すると、通常、皮膚表面に変化がみられます。
初期の日光角化症では、湿疹のような赤い発疹に約1~3cmの白い角質が付着する場合があります。

とくに顔面や手の甲、前腕など、慢性的に紫外線を浴びつづける部位は皮膚症状が起こりやすく、同時に複数の病変がみられたり、時間が経ってから症状がみられたりするケースも珍しくありません。

進行すると、皮膚表面にしこりを触れたり、皮膚の炎症や出血、びらん(皮膚の表面がただれた状態)などの変化がみられたりするケースもあります。

さらに日光角化症が悪化して有棘細胞がんを発症すると、患部から膿が出たり、悪臭を生じたりするケースもあります。

日光角化症の検査・診断

日光角化症の診断では、問診や視診、触診、皮膚生検などがおこなわれます。
問診では、慢性的な紫外線への暴露歴を確認するために年齢や職業、生活習慣などを確認します。

視診や触診では、皮膚表面の状態を詳細に観察します。
日光角化症では病変部で毛細血管の増加が起こりやすく「ダーモスコープ」という特殊な拡大鏡を用いて観察する場合があります。
複数の部位に同時に病変が発生することもあるため、自覚している部位の他にも皮膚症状がないかの確認も重要です。

日光角化症や湿疹、脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)などとの鑑別が難しいケースでは、皮膚生検(病変の組織を採取し、組織の成分を調べる検査)がおこなわれることもあります。

日光角化症の進行により有棘細胞がんが疑われる場合には、患部の状態を調べる目的で画像検査(エコー検査、CT検査、MRI検査など)が選択されるケースもあります。

日光角化症の治療

日光角化症の治療では、外科的治療や凍結療法、薬物療法、光線力学的療法などが選択されます。

一般的に、外科的治療が第一選択とされています。
病変が切除した部位よりも広がっていないか確認するために、切除した組織の病理検査をおこなう場合もあります。

凍結療法は、液体窒素を病変部に押し当て凍結、壊死させる治療法です。
外科的治療よりも簡便に治療が受けられる治療法とされ、単独病変と多発病変のいずれでも選択されます。

薬物療法では、イミキモドや5-FU軟膏などの治療薬が選択されます。
多発病変や広範囲にまたがっているケースで選択されることが多いです。

光線力学的療法は、患部に集まった光感受性物質に光を当てて、病変の細胞を破壊させる治療法であり、広範囲にわたる日光角化症の治療でとくに有効だと言われています。

有棘細胞がんへ進行した場合では、外科的治療や放射線治療、化学療法などを、進行度や患者の状態にあわせて選択されます。

日光角化症になりやすい人・予防の方法

日光角化症の主な要因は、紫外線への暴露です。
長期にわたって日光を浴びつづける農業や漁業などの職業従事者、高齢者などは、発症のリスクが高いと言われています。

日光角化症の予防では、過度に紫外線を浴びないことが重要です。
屋外で長時間活動するときは、肌を露出しない洋服の着用や帽子、サングラス、サンスクリーン剤(日焼け止め)などを使用しましょう。

紫外線の強い時間帯に屋外での活動を控えることも予防に効果的です。

日光角化症は皮膚がん前駆症の一つであり、皮膚がんへの進行リスクがあるため、早期の発見と治療が重要です。

早期発見には、肌の異変がないか定期的に確認することが効果的です。
とくに、長年日光を浴びつづけてきた人や、日光角化症の既往歴がある人は、日光が当たる顔面や手の甲、前腕などの部位に赤い発疹などがないか注意して観察しましょう。
症状がみられた場合は、できる限り早めにかかりつけの病院を受診してください。

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