

監修医師:
高藤 円香(医師)
紫外線障害の概要
紫外線障害とは、太陽光や人工光源から放射される紫外線(UV)が皮膚や目に悪影響を及ぼすことを指します。紫外線は波長の長さの違いによってUVA、UVB、UVCの3種類がありますが、地表に届くのは主にUVAとUVBです。とくにUVBは皮膚や目に有害であり、長時間浴びることでさまざまな健康被害を引き起こします。
紫外線障害には、日焼け(サンバーン)や紫外線角膜炎(雪目)などがあり、皮膚の炎症や痛み、目の充血、異物感、涙が止まらないといった症状があらわれます。さらに、長期間にわたり紫外線を浴び続けると、皮膚の老化が進み、シミやしわが増えるほか、白内障や皮膚がんなどのリスクも高まります。
紫外線障害の原因は、紫外線への曝露です。紫外線の強さは季節や時間帯、天候などによって異なりますが、夏季の正午ごろが最も強くなります。また、標高が高い場所では紫外線量が増加し、雪や砂浜のように光を反射しやすい環境では、紫外線の影響がより大きくなります。さらに、溶接作業や日焼けサロンのような人工光源による紫外線も障害の原因となります。
紫外線障害の治療は、症状に応じて行われます。日焼けによるかゆみや痛みには、消炎鎮痛薬などが用いられ、紫外線角膜炎の場合は点眼薬が使用されます。慢性的な紫外線曝露によって生じる皮膚がんや白内障では、外科的治療が必要になる場合があります。
気象庁の観測によると、日本の紫外線量は年々増加傾向にあり、今後も紫外線による健康被害が懸念されます。紫外線障害を防ぐためには、日頃から紫外線対策を徹底することが重要です。

紫外線障害の原因
紫外線障害の原因は、紫外線を長時間浴びることです。紫外線にはUVA、UVB、UVCの3種類がありますが、地表に届くのは主にUVAとUVBです。とくにUVBは、皮膚の細胞に直接影響を与え、DNAを損傷することが知られています。
皮膚には紫外線から体を守る仕組みが備わっており、その中心的な役割を果たすのがメラニンです。メラニンは紫外線を吸収し、DNAの損傷を軽減する働きをもちます。日焼けをすると肌が黒くなるのは、メラニンが増えて紫外線の影響を抑えようとする防御反応によるものです。しかし、長期間にわたって紫外線を浴び続けると、DNAの修復が追いつかず、突然変異が発生しやすくなり、皮膚がんのリスクが高まると考えられています。
また、人工光源からの紫外線も原因となります。アーク溶接作業、紫外線ランプ、日焼けサロンのマシンなども紫外線障害を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
紫外線障害の前兆や初期症状について
紫外線障害の症状は、皮膚と目の両方にあらわれることが一般的です。
皮膚では、紫外線を浴びた数時間後に赤くなり、ヒリヒリとした痛みをともなう日焼け(サンバーン)が起こります。炎症は8〜24時間後にピークに達し、通常2〜3日後に赤みが引いていきます。ただし、重症の場合は水ぶくれができ、皮がむけることもあります。紫外線を浴びた数日後には色素沈着によって肌が黒くなり、この状態は数週間から数ヶ月間続くことがあります。
長年にわたって紫外線を浴び続けると、皮膚のハリが失われ、シミやしわが増える「光老化」の症状があらわれます。さらに、良性または悪性の皮膚腫瘍が発生することもあります。
良性腫瘍には、一般的に「老人性イボ」ともよばれる脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)があり、悪性腫瘍には皮膚がんがあります。皮膚がんになる前段階として、日光角化症が生じることがあり、その後、有棘細胞がんへと進行することがあります。
目への影響としては、強い紫外線を浴びた数時間後に目の充血、異物感、涙が止まらない、強い痛みなどの症状があらわれる紫外線角膜炎(雪目)があります。とくに、雪山や砂浜などの紫外線の反射が強い場所で発症しやすく、夜間に強い目の痛みを感じることがあります。
また、長期間にわたる紫外線の影響で、視力の低下を引き起こす白内障や翼状片(よくじょうへん)といった慢性的な疾患が発症することもあります。
紫外線障害の検査・診断
紫外線障害の診断は、症状と紫外線への曝露状況をもとに行われます。
皮膚の診断では、ほくろやシミ、脂漏性角化症、皮膚がんなどを区別するために、ダーモスコピーという拡大鏡を用いて皮膚表面の状態をくわしく確認します。皮膚がんの疑いがある場合には、皮膚の一部を採取し、組織を顕微鏡でくわしく調べる皮膚生検が行われることもあります。
目の診断では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡という拡大鏡を使用して、角膜や水晶体の状態を確認します。また、白内障の進行状況を調べるために、視力検査や眼底検査、屈折検査などが行われることもあります。
紫外線障害の治療
紫外線障害の治療は、症状に応じた対処療法が中心となります。
急性の日焼け(サンバーン)の場合、まずは患部を冷やして炎症を抑え、保湿を行うことが基本です。かゆみや痛みが強い場合や水ぶくれがある場合には、消炎鎮痛薬やステロイド外用薬が使用されることがあります。皮膚がんが疑われる場合には、がんの種類に応じて外科的切除や放射線治療、化学療法などが検討されます。
紫外線角膜炎(雪目)の治療では、抗炎症薬や抗菌薬の点眼薬を使用し、炎症を抑えます。角膜保護や感染予防のため、眼帯をつけることもあります。ほとんどの場合は24~48時間で自然に回復します。
翼状片や白内障による視力低下が生じている場合は、外科的手術が検討されることもあります。
紫外線障害になりやすい人・予防の方法
肌の色が明るい人、標高の高い場所に住んでいる人、屋外活動が多い人などは紫外線の影響を受けやすく、紫外線障害になりやすい可能性があります。
また、アーク溶接作業や紫外線殺菌灯を使用する業務に従事している人なども、紫外線への曝露が多いためリスクが高くなります。
紫外線障害を予防するためには、日常的に適切な紫外線対策を実施することが重要です。とくに紫外線が強い午前10時〜午後2時ごろの時間帯は外出を避けるようにしましょう。外出をする際には、帽子や長袖の衣類、サングラスなどを着用し、日傘や日焼け止めなどを活用することも効果的です。
溶接作業や屋外作業など、紫外線を浴びる環境で働く場合は、職業ごとに適切な対策を講じる必要があります。防護服や遮光眼鏡、保護マスクなどを適切に使用し、皮膚や目を保護するようにしましょう。また、必要に応じて医療機関での定期的な健康診断を受けることも予防のひとつとなります。




