若年性黒色腫
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

若年性黒色腫の概要

若年性黒色腫は「スピッツ母斑」とも呼ばれる、主に小児や若年層でみられる良性の皮膚腫瘍です。

若年性黒色腫は、一見すると黒子(ほくろ)のような小さな色素斑ですが、ほくろよりも急速に拡大する傾向がみられます。顔面や手足にできやすいとされるものの、全身の他の部位にもできる可能性があります。

腫瘍は一定以上の大きさに拡大したり、深部へ浸潤したりすることはなく、離れた部位へ転移もしません。痛みなどの自覚症状も通常は見られません。また、未治療でも時間の経過とともに自然に消退するケースもあることが知られています。

若年性黒色腫の原因は今のところよくわかっておらず、予防法などはありません。治療をする場合は外科的切除などの方法があります。ただし、若年性黒色腫は良性の腫瘍であることからも、治療が急がれることはあまりありません。

審美上の理由から早めの治療を選択するケースや、見た目が似ている悪性黒色腫(メラノーマ)との鑑別検査と同時に治療されるケースがあります。

若年性黒色腫の原因

若年性黒色腫の正確な原因は、現在も解明されていません。皮膚の色素を作り出すメラノサイトの前段階の細胞である「母斑細胞」が、異常に増えることで発生すると考えられています。

発症のリスク要因として、遺伝的要素や紫外線への曝露、皮膚に対する外傷や摩擦などが挙げられます。

若年性黒色腫の前兆や初期症状について

若年性黒色腫は発症原因がわかっていないため、前兆も不明です。発症部位としては顔などの露出が多い部位に好発する傾向がありますが、身体のどの部分にも生じる可能性があります。

はじめは皮膚に数ミリ程度の半球状の小さなできものとして現れます。色調は淡いピンク色から赤みがかった茶色までさまざまで、時間の経過とともに色素沈着が進んでより濃い色に変化することもあります。

若年性黒色腫は通常のほくろと異なり、出現してから短期間で大きさが拡大する傾向が強いとされています。ただし、一定の大きさになるとそれ以上の成長や他の部位への広がり、浸潤などは通常みられません。

痛みなどの自覚症状も通常はみられませんが、腫瘍が発生した場所により、審美上の問題が生じることはあります。

なお、若年性黒色腫を成人で発症した場合などは特に、悪性腫瘍に転じる可能性が指摘されています。そのため、若年性黒色腫においては他の皮膚疾患との正確な鑑別や経過観察が重要です。

若年性黒色腫の検査・診断

若年性黒色腫は問診や視診をはじめ、特殊な拡大鏡による皮膚の観察や、腫瘍細胞の一部を採取して分析する組織検査によって診断します。

若年性黒色腫自体は良性の腫瘍ですが、特徴的な見た目や成長スピードから、悪性度の高い皮膚疾患と疑われることが多いため正確な鑑別が求められます。

問診と視診では皮膚病変の特徴や出現時期、成長スピードなどを確認します。

皮膚表面の特徴を観察するために、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡が付いた検査機器により若年性黒色腫に特異的な像の有無を観察します。

より詳細に鑑別するために病理検査をおこないます。これは皮膚の病変部を一部切除し、細胞を顕微鏡で詳しく調べる検査です。

若年性黒色腫に特異的な組織を確認することで、悪性度の高い皮膚疾患との鑑別をします。若年性黒色種は病理学的に悪性黒色腫との区別が難しい傾向があるため、専門医による慎重な判断が求められます。

若年性黒色腫と診断された場合でも、一定期間は経過観察をおこなうことが推奨されます。

若年性黒色腫の治療

若年性黒色腫は良性腫瘍で、一部のケースでは自然退縮することもあり基本的には無治療でも問題ないとされています。しかし、外見的な特徴などが悪性黒色腫と似ているため、鑑別の必要性に基づいて外科的に切除するケースもあります。

切除手術では、病変部と周囲の皮膚を含めて取り除きます。手術部位の傷跡は時間の経過とともに目立たなくなることが多いです。ただし、小さな子どもの場合は手術によるストレスや創傷部位の管理などの問題も生じやすく、主治医と十分に話し合いを重ねて治療方針を決定することが重要です。

顔面など目立つ部位の手術をおこなう場合は、美容的な配慮も求められます。

なお、手術後は抗生物質や鎮痛剤を使用して傷口の感染予防や疼痛緩和をおこない、定期的に経過観察をします。

若年性黒色腫になりやすい人・予防の方法

若年性黒色腫は主に小児に発症します。ただし、成人でも発症することがあり、成人で発症するほうが悪性腫瘍へ転じるリスクがあるとされています。

若年性黒色腫は基本的には良性の腫瘍であり、原因等も詳しくは解明されていません。したがって、若年性黒色腫の確実な予防法は現在のところ存在しません。

紫外線への過度な曝露を避けることは、若年性黒色腫のみならずさまざまな皮膚疾患の予防に対して有効です。帽子や長袖の着用、日焼け止めの使用など、基本的な紫外線対策をおこなうことは、若年性黒色腫の発症リスクを下げる可能性があります。

若年性黒色腫は他の疾患、特に悪性黒色腫(メラノーマ)との鑑別が難しいとされます。したがって、日常的に皮膚の変化に気を配り、異変の早期発見に努めることは重要です。自分自身や子どもの皮膚に気になる症状がみられた場合は、念のため早めに皮膚科を受診することをおすすめします。


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