

監修医師:
高藤 円香(医師)
疱疹状膿痂疹の概要
疱疹状膿痂疹(ほうしんじょうのうかしん)は、妊娠をきっかけとして発症する原因不明の皮膚疾患で、膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)の一種です。
妊娠中の20〜30代の女性に多く発生します。
出典:公益財団法人難病医学研究財団/難病情報センター「膿疱性乾癬」
疱疹状膿痂疹の症状は、全身の皮膚が潮紅(ちょうこう:赤みをおびること)して膿疱(膿がたまった水ぶくれ)が出現することです。この場合膿疱は無菌性で、接触しても他の人へ感染する可能性はありません。皮膚症状のみでなく、高熱や倦怠感、むくみなどの全身症状が出現することも多いです。
疱疹状膿痂疹の主な治療は薬物療法です。状態に応じて点滴によって水分バランスを調整し、全身的な管理をおこなう場合もあります。
疱疹状膿痂疹を含む膿疱性乾癬は難病に指定されているまれな病気で、場合によっては専門的な医療機関での治療を要します。
妊娠中に少しでも疑われる症状が出た場合は、できるだけ早期に医療機関を受診しましょう。

疱疹状膿痂疹の原因
疱疹状膿痂疹の正確な原因は未だ解明されていませんが、免疫機能の異常が関与していると考えられています。
膿疱性乾癬は、体内で炎症を発生させる物質と、炎症を抑える物質のアンバランスが起きていることから、体内の免疫機能が正常に作用せず発症している可能性があります。
疱疹状膿痂疹においては、妊娠をきっかけに皮膚細胞などが分泌する炎症物質が高熱を引き起こしたり、血液中の白血球が集まって膿疱を形成したりする可能性が示唆されています。
また、家族歴がある場合や免疫機能に関与する特定の遺伝子の異常を持つ場合においても、発症リスクが高まるとされています。
疱疹状膿痂疹の前兆や初期症状について
疱疹状膿痂疹の主な症状は、高熱とともに灼熱感(しゃくねつかん:ヒリヒリ・チクチク感)をともなう発赤が全身に現れ、発赤に沿って膿疱が形成されることです。膿疱は血液中の白血球が集まってできたものであり、無菌性で感染力がないことが多いです。
全身の皮膚に膿疱が多発すると皮膚のバリア機能が低下します。体内の水分バランスも崩れやすくなり、強い倦怠感が現れたり体力が著しく消耗したりして、心臓や腎臓、肺に負担がかかり全身状態に影響を及ぼすこともあります。
形成された膿疱は治療により乾燥して皮が剥けた後、新たな膿疱が現れて、古い膿疱が治癒するサイクルを繰り返すことが多く、症状が長期にわたって続くこともあります。
また、急性期を脱した後も、感染症や薬の影響などをきっかけに再発することがあります。
妊娠している女性の場合、全身への影響により母体や胎児にリスクを及ぼす可能性もあるため、症状が現れた場合は速やかに皮膚科や産婦人科を受診しましょう。
疱疹状膿痂疹の検査・診断
疱疹状膿痂疹は全身の皮膚所見の確認に加え、皮膚生検や血液検査によって診断します。
皮膚生検では膿疱の一部を採取し、顕微鏡で詳しく調べることにより疱疹状膿痂疹の特徴的な所見の有無を観察します。
細菌感染による膿疱症と鑑別するため、膿疱の内容物を採取して培養検査をおこない、無菌性であることも確認します。
血液検査では、炎症反応の指標となる白血球数やCRPの値を調べます。必要に応じて肝機能や腎機能の数値なども調べ、全身状態の評価に役立てます。
疱疹状膿痂疹の診断において、妊娠中の発症であるこも診断の重要な手がかりとなります。
疱疹状膿痂疹の治療
疱疹状膿痂疹は主に薬物療法によって治療します。急性期は全身の炎症反応が強く高熱をともなうことが多いため、入院によって解熱剤を投与したり水分・栄養補給をおこなったりして全身状態の管理をします。
全身状態の管理とともに、皮膚保護のための軟膏塗布などの基本的なケアもおこないます。
症状が重い場合は、必要に応じてステロイド薬の全身投与を検討します。ステロイド薬は炎症を抑える効果が期待できますが、使用量や期間については慎重な判断を求められます。
また、疱疹状膿痂疹の新しい治療として、特定の免疫抑制剤や生物学的製剤と呼ばれる新しいタイプの薬の投与が注目されています。ただし、これらの薬剤を使用するにあたっては母体や胎児への影響などを慎重に検討することが重要です。
疱疹状膿痂疹で形成される膿疱は繰り返し出現する特徴があるため、症状が安定した後も再発防止のための継続的な治療や定期的なフォローアップが欠かせません。
疱疹状膿痂疹になりやすい人・予防の方法
疱疹状膿痂疹になりやすい人は、妊娠中の女性で、かつ膿疱性乾癬の既往歴や家族歴がある人です。
現時点では疱疹状膿痂疹の予防法は確立されていませんが、妊娠中はストレスをできるだけ軽減し、規則正しい生活習慣を心がけ、健康的な生活を送ることが大切です。十分な休息を取り、バランスのとれた食事を摂ることで免疫機能をできるだけ落とさないようにします。
また、膿疱性乾癬の既往歴や家族歴がある場合は、妊娠前に主治医に相談し、妊娠中の計画を立てておくことが望ましいです。
さらに、妊娠中は定期的に皮膚の観察をおこない、異常を感じたらできるだけ早めに医療機関を受診するようにしましょう。
関連する病気
- 膿疱性乾癬
- 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
- 乾癬性関節炎
- 乾癬性紅皮症
参考文献




