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皮膚非結核性抗酸菌症
松澤 宗範

監修医師
松澤 宗範(青山メディカルクリニック)

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2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業
2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医
2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局
2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科
2017年4月 横浜市立市民病院形成外科
2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科
2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職
2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長
2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
所属学会:日本形成外科学会・日本抗加齢医学会・日本アンチエイジング外科学会・日本医学脱毛学会

皮膚非結核性抗酸菌症の概要

皮膚非結核性抗酸菌症とは、皮膚抗酸菌感染症のひとつであり、結核菌や、らい菌以外の抗酸菌が原因で起こる皮膚の感染症です。
抗酸菌は、自然界に広く存在する細菌で、約200種類が発見されており、そのうちの95%は土や水の中などの自然環境で生息しています。

これらの菌が、皮膚の小さな傷口や毛穴から侵入し、感染を引き起こします。まれな病気ではありますが、近年、非結核性抗酸菌による感染症の患者数が増加傾向にあると報告されています。

特に、免疫力が低下している人やアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下している人は、感染しやすいと言われています。

皮膚非結核性抗酸菌症の症状があらわれると、皮膚が腫れたり、炎症によって穴が開いたりするため、医療機関を受診して早期に治療を受けることが重要です。

皮膚非結核性抗酸菌症の原因

皮膚非結核性抗酸菌症の原因菌は、主にM.marinumとM.avium complexの2種類です。

M.marinumは、魚や水槽に生息しており、熱帯魚の飼育や水仕事が原因で感染することがあります。M.avium complexは、環境中に広く存在し土や水、ホコリなどから感染することがあります。

これらの菌が、皮膚の小さな傷口や毛穴から侵入し、感染を引き起こします。具体的には、魚の飼育やガーデニングなどから感染することが考えられます。
また、外傷や手術創、カテーテルなどから感染することもあります。

皮膚非結核性抗酸菌症の前兆や初期症状について

皮膚非結核性抗酸菌症の初期症状は、赤いぶつぶつやかゆみ、痛み、膿などです。虫刺されのような赤いぶつぶつができ、かゆみを伴うことがあります。

また、痛みを伴ったり、ぶつぶつが化膿したりすることもあります。症状は、感染した菌の種類や部位によって異なります。

M. marinumの場合は、手足にできることが多く、M. avium complexの場合は、顔や首にできることが多いです。

症状が長引く場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。放置すると、症状が悪化し、治療が長期化する可能性があります。

皮膚非結核性抗酸菌症の検査・診断

皮膚非結核性抗酸菌症は、問診や視診をはじめさまざまな検査がおこなわれます。問診で症状や生活環境について詳しく確認し、視診で患部の状態を観察します。主な検査は、以下のとおりです。

スメア検査

スメア検査は、患部から採取した膿や組織を顕微鏡で直接観察する検査です。

抗酸菌の有無を確認するために、チール・ネールゼン染色という特殊な染色方法を用います。チール・ネールゼン染色では、抗酸菌は赤く染色され、他の細菌や細胞は青く染色されます。

スメア検査は、簡便かつ迅速におこなえますが、抗酸菌の数が少ない場合や他の細菌による皮膚疾患との区別が難しい場合には、検出できないことがあります。また、スメア検査だけでは、原因菌の種類の特定はできません。

病理検査

病理検査は、患部の組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査です。

皮膚非結核性抗酸菌症には、特徴的な病理組織像を確認できます。具体的には、肉芽腫と呼ばれる炎症細胞の塊の中に、抗酸菌が確認されることがあります。

また、他の皮膚疾患との鑑別にも役立ちます。例えば、結核性疾患や他の細菌感染症、真菌感染症などとの鑑別に有効です。病理検査は、診断の確定や治療法の選択に重要な情報となります。

抗酸菌培養・感受性検査

抗酸菌培養・感受性検査は、採取した検体(膿や組織)を特殊な方法で培養し、原因菌を特定する検査です。

培養された菌を用いて、薬剤感受性試験もおこない、効果があると考えられる抗菌薬を調べます。皮膚非結核性抗酸菌症の確定診断には、この検査が最も重要です。

ただし、培養には数週間から数ヶ月かかることがあります。また、薬剤感受性試験の結果は、治療薬の選択に役立ちます。近年では、PCR法などの分子生物学的な手法を用いて、迅速な診断法として活用されています。

インターフェロンーγ遊離検査

インターフェロン-γ遊離検査は、結核感染の有無を調べる検査です。

皮膚非結核性抗酸菌症の診断には必須ではありませんが、結核との鑑別に役立つことがあります。この検査は、ツベルクリン反応よりも、正確な結果がでやすいとされています。

しかし、IGRAが陽性であっても、皮膚非結核性抗酸菌症を否定することはできません。

結核菌・MAC核酸検出検査

結核菌・MAC核酸検出検査は、結核菌およびMAC(Mycobacterium avium complex)の遺伝子を検出する検査です。

PCR法などを用いて、迅速に結果が得られます。皮膚非結核性抗酸菌症の診断には有用ですが、MAC以外の抗酸菌による感染症を否定することはできません。

皮膚非結核性抗酸菌症の治療

皮膚非結核性抗酸菌症の治療は、抗菌薬による治療が中心となります。原因菌に有効な抗菌薬を内服または注射します。

治療期間は、感染した菌の種類や症状の程度によって異なりますが、数ヶ月から数年かかることもあります。

膿がたまっている場合や、病巣が大きい場合は、外科的治療が必要になることもあります。外科的治療では、切開して膿を排出したり、病巣を切除したりします。治療中は、医師の指示に従い、継続して治療を続けることが大切です。

皮膚非結核性抗酸菌症になりやすい人・予防の方法

皮膚非結核性抗酸菌症は、免疫力が低下している人やアトピー性皮膚炎で皮膚のバリア機能が低下している人、熱帯魚の飼育をしている人などがなりやすいとされています。

予防のためには、皮膚を清潔に保ち、傷口を消毒することが大切です。
また、熱帯魚の水槽を清潔に保ち、水仕事の後は、手をよく洗うようにしましょう。

皮膚に異常が現れた場合は、早めに皮膚科を受診することが大切です。

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参考文献

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