乳児寄生菌性紅斑

監修医師：
五藤 良将（医師）

乳児寄生菌性紅斑の概要

乳児寄生菌性紅斑（にゅうじきせいきんせいこうはん）は乳幼児に多く見られる皮膚の病気で、赤みを帯びた発疹が身体のさまざまな部分に現れます。

カンジダという真菌（カビの一種）が皮膚に感染することで発症し、一見おむつかぶれと似ていて区別がつきにくい場合があります。

適切な診断を受けて、抗真菌薬によって治療すれば改善する病気であり、重篤な合併症を引き起こすことは少ないとされています。

乳児寄生菌性紅斑は発症初期は軽い発疹から始まりますが、放置すると症状が広範囲に及ぶ可能性があるため、早めに皮膚科や小児科を受診することをおすすめします。

乳児寄生菌性紅斑の原因

乳児寄生菌性紅斑の主な原因は「カンジダ・アルビカンス（以下、カンジダ）」という真菌です。カンジダは健康な人の口の中や腸内などの消化管に存在する常在菌の一種で、糞便中にも存在しています。身の回りにも存在している菌ですが、普段は皮膚のバリア機能があるため体内に侵入してくることはありません。

しかし、おむつの装着による蒸れや外用薬の使いすぎなどが原因で皮膚のバリア機能が破壊されると、そこからカンジダが侵入し皮膚の炎症が起きることがあります。

とくに乳児は皮膚のバリア機能が未熟であることに加えて、おむつによる蒸れや摩擦、汗や尿による湿潤状態が起こりやすいため、カンジダが繁殖しやすいです。

乳児寄生菌性紅斑の前兆や初期症状について

乳児寄生菌性紅斑はおむつを当てている部分を中心に赤い発疹が出現し始めます。

初期はおむつが当たる部分のみに症状が出ますが、次第におむつが当たっていない太ももや腰、脇や背中、首など広範囲に広がります。

おむつかぶれは皮膚とおむつが接触する部分に限って症状が出るのに対して、乳児寄生菌性紅斑は皮膚のしわが深い部分に症状が出る点が特徴です。

発疹は赤く周囲の皮膚との境界は明瞭で、場合によっては発疹が湿っぽくなったり、小さい水疱（すいほう）や膿ができたりすることもあります。

症状が進行すると、赤みが強くなりかゆみをともなうようになります。赤ちゃんは症状を言葉で表現できないため、機嫌が悪くなったり、発疹の周りを掻いたりする様子が見られます。

この状態でおむつかぶれと誤解し、市販の外用薬を塗るとかえって症状が悪化することもあります。

乳児寄生菌性紅斑の検査・診断

乳児寄生菌性紅斑の診断では発疹の広がり方や境界部分の状態、症状が出始めた時期、おむつの使用状況、スキンケアの方法などを確認します。

より詳しく調べるために発疹部分から組織を採取して培養し、顕微鏡で観察する検査をおこなうことがあります。皮膚の表面をごくわずかにこするため、赤ちゃんへの負担はほとんどありません。

これらの検査結果を総合的に判断し、アトピー性皮膚炎やおむつかぶれ、その他の皮膚疾患と鑑別した上で診断します。

乳児寄生菌性紅斑の治療

乳児寄生菌性紅斑の治療は抗真菌薬の塗布によっておこないます。一般的なおむつかぶれに対する外用薬には抗真菌成分は含まれていないため、症状が改善しないことが多いです。

治療中は患部を清潔にし乾燥した状態を保つことが重要です。おむつ交換はこまめに行い、入浴後はしっかりと水分を拭き取り皮膚を乾燥させましょう。

蒸れを防ぐために通気性の良い素材の肌着を着用したり、きつすぎないサイズのおむつを付けたりすることも効果的です。

適切な治療を継続することで数週間程度で症状は改善に向かいます。症状が軽快したからといって自己判断で治療を中止すると再発する可能性があるため、医師から指示された期間に沿って治療することが大切です。

なお、市販の外用薬などは微量のステロイドが含まれていることがあります。ステロイドは免疫反応を抑える働きがあり、乳児寄生菌性紅斑に対してステロイドを塗布すると、カンジダが増殖して症状が悪化する場合があります。

そのため、自己判断せずに医療機関で処方された薬剤を使用することをおすすめします。

乳児寄生菌性紅斑になりやすい人・予防の方法

乳児寄生菌性紅斑は乳幼児や汗をかきやすい体質の赤ちゃん、おむつかぶれを繰り返している赤ちゃんなどです。

アトピー性皮膚炎がある場合も、皮膚のバリア機能が低下しているため発症しやすい傾向にあります。

予防のためには日常的なスキンケアや清潔保持が重要です。おむつ交換はこまめにおこなうようにし、おしりに付着した便は優しく丁寧に拭き取りましょう。

乳児寄生菌性紅斑はおむつが当たる部分だけでなく、首や太もも、腰や背中など広範囲に広がることが特徴です。

カンジダは湿潤部位で増殖しやすいため、入浴後や汗をかいた後は、皮膚が重なる場所はもちろんのこと、身体のすみずみまで水分を拭き取り十分に乾燥させることが大切です。

また、蒸れ防止のために綿素材などの通気性の良い肌着を選び、室内の温度や湿度にも気を配りましょう。とくに夏場は汗による蒸れに注意し、必要に応じてこまめに肌着を着替えたり、エアコンで室温を調整したりしましょう。

乳児寄生菌性紅斑による発疹とおむつかぶれによるただれの判別がつかず、誤った外用薬を塗布すると症状が悪化することもあります。

赤ちゃんの皮膚に少しでも発疹やかゆみなどの症状を確認した場合は、できるだけ早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。