

監修医師:
五藤 良将(医師)
母斑症の概要
母斑症(ぼはんしょう)は生まれつきあるいは幼少期から、皮膚や皮膚以外の場所に母斑が生じる病気の総称です。母斑は一般的には「あざ」と呼ばれることが多く、その形や大きさ、色は症状によってさまざまです。
代表的なものには「神経線維腫症」や「結節性硬化症」、「色素失調症」や「巨大色素性母斑」など、さまざまな種類があります。
母斑症の多くは生まれつきですが、一部は成長とともに新たに現れたり、目立つようになったりすることもあります。痛みやかゆみなどの症状を伴うことは少ないものの、目立つ場所にあると心理的な負担となることも少なくありません。
近年はレーザー治療や手術など、さまざまな治療法が確立されています。また、早期発見や早期治療により、より良い治療結果が期待できる場合も多いです。
母斑症の原因
母斑症の原因は母斑症の種類によってさまざまです。
たとえば、神経線維腫症や結節性硬化症、色素失調症は遺伝子の異常により発生し、巨大色素性母斑は皮膚の中にある母斑細胞がメラニン色素を産生することで生じます。
両親から受け継いで発生する場合もありますが、多くは胎児期における発育過程で突然起こります。
母斑症の種類によっては、皮膚以外の他の臓器にも影響を及ぼし、脳や心臓に腫瘍を形成することがあります。これは、胎児期の細胞の発育異常が皮膚だけでなく複数の組織に影響を与えるためです。
症状に応じて、皮膚科だけでなく他の診療科と連携した総合的なアプローチが求められます。
母斑症の前兆や初期症状について
母斑症の多くは出生時から症状が見られ、特別な前兆はありません。一般的な症状は皮膚の色調変化の出現です。
症状は母斑症の種類によって大きく異なり、茶色や赤色、青色などさまざまな色調を示します。また、皮膚病変が隆起していたり、毛が生える場合もあります。
母斑症の種類によっては、心臓や脳、腎臓や肺、目などに腫瘍を形成するものもあり、腫瘍ができる場所によってはてんかん発作や知能低下、運動麻痺や視力の低下などの症状を招きます。
母斑症の種類はじつに多く、皮膚症状以外の症状が出現することも多いため、初期は母斑症とは分からないこともあるかもしれません。
普段と違う様子などが見られた場合、できるだけ早く医療機関を受診し、適切な治療を受けることをおすすめします。
母斑症の検査・診断
母斑症では皮膚病変の大きさや色、形状などを観察し、発生時期や症状の変化などを本人または家族に確認し、複数の検査を組み合わせて診断します。
より詳しく調べるために母斑の一部を局所麻酔した上で採取し、細胞を顕微鏡で調べる検査をおこなう場合があります。
採取した組織を詳しく調べることで、良性のものか悪性のものかの判別に役立ちます。
また、母斑症の種類によっては、皮膚以外の臓器への影響を調べるため、MRI検査やCT検査などの画像検査を実施することがあります。
母斑症の中には一見症状が似ているものの、治療方針が異なるものがあるため、適切な治療へつなげるために正確に診断することが求められます。
とくに乳幼児の場合は、検査をおこなうこと自体が難しい場合もあるため、家族が不安を抱くことがないように慎重に検査や診断を進めることが重要です。
母斑症の治療
母斑症の主な治療法にはレーザー治療や外科的切除、薬物療法などがあり、母斑症の種類によって異なります。
レーザー治療は、母斑症の種類や症状に応じてレーザーの種類や照射方法を選択します。複数回の治療を要することが一般的です。
巨大色素性母斑などの大きな母斑に対しては、外科的切除を選択することがあります。
この場合、皮膚の状態や母斑の大きさによって、一度に切除するか数回に分けて治療をおこなうかを決定します。
複数回に分けて切除する場合は、半年〜1年ほどの期間をあけて手術をするケースが多いです。
母斑症の治療は症状の改善だけでなく、治療後の傷跡や再発の可能性についても考慮が必要です。
治療開始前に医師は本人や家族と十分に話し合いをおこない、期待する効果やリスクなどについて理解を深めることが重要です。
また、治療中や治療後も定期的な経過観察を行い、必要に応じて治療計画を見直していきます。
母斑症になりやすい人・予防の方法
母斑症は主に胎児期の発育過程で突然発生するため、特定の人がなりやすいという明確な要因はありません。また、現時点では母斑症の発生を完全に予防することは困難とされています。
一部の母斑症では、家族歴がある場合に発症リスクが高まることが知られており、両親のどちらかが母斑症である場合は、子どもも同様の症状が現れる可能性があります。
母斑症そのものの予防は難しいものの、症状の悪化や合併症の予防は可能です。
とくに重要なのは皮膚病変が形成されている部分の紫外線対策です。母斑症の種類によっては日光の影響を受けやすいため、日焼け止めの使用や帽子・長袖の着用などで遮光を心がけましょう。
母斑症は早期発見や早期治療が重要です。母斑の大きさや色調に変化が見られた場合や、痛みやかゆみなどの症状が出現した場合は、できるだけ早く皮膚科医に相談することをおすすめします。
治療開始後は医師による定期的な経過観察を受けることで、症状の変化を早期に発見し、適切な治療へつなげることができます。
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参考文献