

監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
乾癬性紅皮症の概要
乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)は「乾癬」の一型で、赤い皮疹が全身に広がる状態です。
乾癬とは、はっきりとした原因なく全身にフケのような皮(鱗屑:りんせつ)を伴う赤い皮疹ができる疾患です。
患者によってさまざまな症状を呈することがあり、乾癬性紅皮症のほか大小さまざまな大きさの皮疹ができる「尋常性乾癬」や、米粒大の皮疹が見られる「滴状乾癬」、全身に膿をもった膿疱が多発する「膿疱性乾癬」、関節の変形を伴う「関節症性乾癬」などがあります。
乾癬性紅皮症では、赤い皮疹が全身を埋め尽くし、正常な皮膚がほとんど見えなくなります。また、皮膚症状のほか発熱などの全身症状を伴うケースも多く見られます。
治療は症状に応じて薬物療法や外用療法、光線療法などがおこなわれます。慢性的な疾患であるため、一般的に治療は長期間に及びます。
乾癬性紅皮症は生活習慣の乱れや感染症などによって症状が悪化することがあるため、生活習慣を改善して症状のコントロールに努めることも重要です。

乾癬性紅皮症の原因
乾癬性紅皮症を発症する明確な原因は解明されていません。しかし、遺伝的に乾癬を発症しやすい体質の人がいると考えられています。
乾癬性紅皮症は、乾癬になりやすい体質の人に、不規則な生活習慣や肥満、ストレス、感染症などの環境因子が加わることで発症するといわれています。
ただし、欧米では家族内での乾癬の発症率が20〜40%であるのに対し、日本では4〜5%とかなり低いことがわかっています。そのため、家族内に乾癬の人がいても必ずしも発症するわけではなく、あくまでも生活習慣などの環境因子が加わることで発症する可能性が高まると考えられています。
既に発症している場合には、生活習慣が不規則になったりストレスを抱えたりするほか、感染症に罹患した際などに症状が悪化しやすくなります。また、喫煙も症状の悪化因子であることが分かっています。
・出典:公益社団法人日本皮膚科学会「Q3 乾癬の原因は何ですか?」
乾癬性紅皮症の前兆や初期症状について
乾癬性紅皮症では、鱗屑を伴う赤い皮疹が全身に広がります。皮疹は全身を覆い、正常な皮膚がほとんど見えなくなります。
また、皮膚症状のほか発熱などの全身症状を伴うこともあります。
乾癬性紅皮症の検査・診断
乾癬性紅皮症の検査では、問診や視診、生検、血液検査などがおこなわれます。
乾癬性紅皮症の症状は特徴的であるため、問診や視診で診断がつく場合もあります。しかし、診断が困難なケースや、ほかの疾患と鑑別する必要がある場合には、生検によって患部の皮膚を一部採取し、顕微鏡で詳しく調べることもあります。
また、乾癬の発症者は「メタボリックシンドローム」を併発しやすい傾向があるため、必要に応じて血液検査をおこない、脂質の値や血糖値などを調べることもあります。
このほか、治療法によっては「結核」や「肝炎ウイルス」の抗体検査をおこなったり、胸部のX線検査をおこなったりするケースもあります。
乾癬性紅皮症の治療
症状に応じて薬物療法や外用療法、光線療法がおこなわれます。乾癬性紅皮症では発熱などの全身症状を伴うことが多いため、入院治療が必要となることもあります。
薬物療法
薬物療法では、症状に応じて内服薬や注射薬、外用薬が用いられます。
乾癬性紅皮症は皮疹が広い範囲に出現しているため、一般的に内服薬や注射薬による全身療法が考慮されます。
内服薬では、免疫抑制薬の「メトトレキサート」や「シクロスポリン」、免疫調整薬の「アプレミラスト」、ビタミンA 誘導体の「エトレチナート」などが用いられます。これらの薬剤には、乾癬性紅皮症の要因となる免疫の異常な働きに作用して皮疹を改善する効果が期待できます。
注射薬では、症状を悪化させる免疫物質の働きを抑える「アダリムマブ」や「インフリキシマブ」などの生物学的製剤を用いて、免疫の過剰な働きを抑えます。
外用薬を併用する場合には、炎症を抑える作用のある副腎皮質ステロイド薬や皮膚の細胞が過剰に増殖するのを抑えるビタミンD3製剤などが用いられます。
光線療法
皮疹が広範囲に出現している乾癬性紅皮症では、光線療法が考慮されることもあります。
乾癬の皮疹は従来から紫外線を当てることで軽快することが分かっています。そのため、医療機関でも古くから乾癬に対して紫外線を用いた光線療法がおこなわれています。
乾癬に対する光線療法には「ターゲット型エキシマライト療法」や「ナローバンドUVB療法」「PUVA(プバ)療法」などがあります。
ターゲット型エキシマライト療法では、紫外線に含まれるUVA波・UVB波・UVC波のうち、乾癬の治療に有効なUVB波を特定の波長で患部のみに照射します。
ナローバンドUVB療法では、UVB波を全身に照射します。
PUVA(プバ)療法では、「ソラレン」という物質を摂取した後、UVA波を照射します。UVA波を照射しただけでは症状に変化は起きないものの、ソラレンの摂取後に照射すると症状の改善に効果が期待できることが分かっています。
乾癬性紅皮症になりやすい人・予防の方法
乾癬性紅皮症は、発症しやすい体質の人がいることが分かっています。遺伝的な体質に加え、不規則な生活習慣やストレス、肥満、感染症などの要因が加わることで発症しやすくなります。
家族内に乾癬の発症者がいる場合には、生活習慣を整えることで発症予防につながるケースがあります。バランスの取れた食生活や適度な運動、十分な睡眠を心がけましょう。ストレスを過度に溜め込まないよう注意し、喫煙している場合には禁煙するようにすることも重要です。
また、風邪やインフルエンザなどの感染症だけでなく、「歯周病」などの歯科疾患もリスク要因になることがあります。マスクや手洗いなどの基本的な感染対策に加え、歯周病などがある場合には速やかに治療するようにしましょう。
関連する病気
- 尋常性乾癬
- 滴状乾癬
- 膿疱性乾癬
- 関節症性乾癬




