

監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
脱色素性母斑の概要
脱色素性母斑とは、生まれつき皮膚に色の抜けた斑(脱色素斑)を認める疾患です。患部には他の部位と境目のはっきりとした白いしみのようなものが見られます。
脱色素性母斑は、遺伝子の異常によって発症することが分かっています。遺伝子異常によって皮膚の色を調整する「メラニン色素」が正常に生成されず、部分的に皮膚の色が薄くなります。
一般的に、脱色素母斑の経過は良好で、他に自覚症状を認めることも少ない傾向にあります。しかし、ごくまれに全身性の疾患を合併していることがあります。また、「尋常性白斑」や「色素性母斑」など、症状が似ている疾患と区別することが困難なケースもあります。
生まれてすぐ皮膚に色の薄いしみのようなものを認めたら、確定診断や適切な治療を受けるために医師の診察を受けることが重要です。
現在のところ脱色素性母斑に有効な治療法は確立されていませんが、患者の希望や患部の状態によって薬物療法や光線療法、外科的治療がおこなわれることがあります。

脱色素性母斑の原因
脱色素性母斑は、遺伝子の異常によって「メラノサイト」の機能が部分的に低下することで発症します。
メラノサイトは、皮膚や毛髪の色を形成する「メラニン色素」を生成する細胞です。メラニン色素は一般的に「しみ」の原因になることで知られていますが、十分に生成されないと皮膚の一部が白くなり、毛細血管の色が透けて見えます。すなわち、健康な肌色はメラニン色素が正常に生成されている結果といえます。
脱色素性母斑では、遺伝子の異常によってメラノサイトが正常に機能せず、メラニン色素が部分的に生成されずに皮膚の色が抜けて「脱色素斑」を生じます。
脱色素性母斑の前兆や初期症状について
脱色素性母斑では、生まれつき他の部位よりも色の薄いしみのような斑を認めます。患部の大きさや形は患者によってさまざまで、顔や胸、背中、腹部、手足など全身に認めます。
通常のしみと異なり、紫外線や時間の影響をほとんど受けず、大きさや色が変化しないことが特徴です。しかし、身体の成長に合わせて範囲が多少大きくなることがあります。
一般的に自覚症状を伴うことは少ないものの、ごくまれに白斑の部位の毛髪(体毛)が白くなったり、発達障害や神経系の障害を合併したりするケースもあります。
脱色素性母斑の検査・診断
脱色素性母斑では、診断や他の疾患と区別するために視診や「ウッド灯検査」「皮膚生検」などがおこなわれます。
視診では、患部の色調や大きさ、形状、他の部位との境界線などを確認します。この際、ウッド灯と呼ばれる特殊な光線を照射して患部を観察することもあります。ウッド灯は紫外線に近い波長の特殊な光で、照射した患部は正常な皮膚よりも明るく観察できます。
皮膚生検は、患部の皮膚を部分的に採取して細胞の状態を顕微鏡で詳しく調べる検査です。メラノサイトやメラニン色素の状態を確認することができ、脱色素性母斑の診断につながるほか「尋常性白斑」や「色素性母斑」など症状が似ている疾患との鑑別にも役立ちます。
このほか、脱色素性母斑が全身性の疾患に関連している可能性がある場合には、CT検査やMRI検査などの画像検査がおこなわれることもあります。
脱色素性母斑の治療
脱色素性母斑は生まれつき生じる疾患で、現在のところ有効な治療法は確立されていません。
発症を認める場合には、患者の希望や患部の状態に合わせて適切な治療が選択されます。治療法には、外用薬を用いた薬物療法のほか光線療法、外科的治療があります。
薬物療法
メラニンの生成を促すための外用薬が用いられることがあります。外用薬としては、副腎皮質ステロイド薬のほか、ビタミンD3誘導体、タクロリムス軟膏などが用いられます。
光線療法
患部に特殊な光線を照射してメラニンの生成を刺激する治療法です。
治療法には「エキシマライト療法」や「ナローバンドUVB療法」「PUVA(プバ)療法」などがあります。
エキシマライト療法は、紫外線のうちUVB波を308nmの波長に合わせ患部に照射する治療法です。ナローバンドUVB療法でも、311〜313nmのUVB波を患部に照射します。PUVA療法では、紫外線を照射すると作用を発揮する薬剤を使用した後に患部にUVA波を照射します。
外科的治療
患部が小さい場合や、顔などの目立つ部位にある場合には、外科的治療が考慮されるケースもあります。
治療法には皮膚移植やレーザー治療などがあり、患者の希望や患部の状態に応じて選択します。
脱色素性母斑になりやすい人・予防の方法
脱色素性母斑は生まれつき生じる疾患で、なりやすい人や予防の方法については分かっていません。
生まれつき身体のいずれかに色が抜けたしみのようなものを認める場合には、脱色素性母斑の可能性があります。医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。
関連する病気
- 尋常性白斑
- 色素性母斑




